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第1部 特集 ICTが導く震災復興・日本再生の道筋
第4節 東日本大震災の教訓を踏まえたICT災害対策の強化

(2)放送における耐災害性の強化


 東日本大震災における放送設備の被災状況についてみると、テレビの中継局においては、津波による被災に加えて、地震発生の翌日3月12日には大多数が蓄電池切れ等による停電のため、最大で120局が停波する状況になっ
た。ラジオの中継局においても、蓄電池切れや回線障害の影響による停波が確認されているところである(図表3-4-2-5)。

図表3-4-2-5 発災後の中継局(ラジオ・テレビ)の被災状況
図表3-4-2-5 発災後の中継局(ラジオ・テレビ)の被災状況のグラフ
 このような状況に鑑み、情報通信審議会において当時検討中であった「放送に係る安全・信頼性に関する技術的条件」について、東日本大震災による放送設備の被災状況に関する分析・評価を踏まえた追加検討がなされた結果、停電対策等の措置について強化すべきとされた。
 それに関する同審議会からの一部答申(平成23年5月17日)を踏まえ、放送に係る安全・信頼性に関する技術基準については、平成23年6月30日に施行されたところである(第5章第2節参照)。
 具体的に強化された事項の例として、東日本大震災前は、①地上デジタルテレビ放送の番組送出設備や②親局等の送信設備など、広範囲に放送の停止等の影響を及ぼす設備に対して、「予備機器等の確保」や「故障等を直ちに検出する機能」、「停電対策」等、事故を未然に防ぐ、又は即座に復旧させるための措置を適用する一方、③地上デジタルテレビ放送の小規模な中継局の送信設備など、放送の停止等の影響を及ぼす範囲が限定的な設備については、経済合理性も勘案し、「故障等の速やかな検出」、「応急復旧用機材の配備」等、主に事故の長時間化を防ぐための措置を適用することとして、検討が進められていた。しかし、東日本大震災時に多くの中継局が蓄電池切れ等による停電のため停波するなど、停電が停波の主な要因であったことを踏まえ、大規模災害による広域・長時間の停電発生に備えた緊急の対応として、電源の継続的な供給手段の確保が明示されるとともに、小規模な中継局にまで「停電対策」の適用対象が拡大された。また、小規模な中継局であっても、プラン局へ放送波により中継する中継局など、放送ネットワーク全体の安全・信頼性確保の観点から重要性が高い局(重要局)に対しては、プラン局と同等の措置を適用するなどの見直しがなされたところである(図表3-4-2-6)。
 また、有線放送においても、技術的条件への「燃料の備蓄又は補給手段の確保」等条件の追加を行うなど、放送における技術的条件の見直しを通して、放送インフラに関する耐災害性の強化の取組みを進めたところである。

図表3-4-2-6 地上デジタルテレビ放送の設備の分類と技術基準の概要
図表3-4-2-6 地上デジタルテレビ放送の設備の分類と技術基準の概要の図


コラム 帰宅困難者の対応に向けたSNS等の活用

 東日本大震災においては、首都圏では約515万人の帰宅困難者が発生し、対策を一層強化する必要性が顕在化した。その状況を踏まえ、平成24年2月に東京都、埼玉県、千代田区、新宿区及び豊島区などが合同で実施した大規模な帰宅困難者訓練に際しては、TwitterやFacebook、緊急速報メール、エリアワンセグ、デジタルサイネージなど複数のメディアを活用した帰宅困難者への情報提供がテストされるなど、帰宅困難者対策へのICT活用の検討が進められているところである。

図表1 デジタルサイネージでの情報提供
図表1 デジタルサイネージでの情報提供の写真

図表2 Facebookでの情報提供
図表2 Facebookでの情報提供の写真
(出典)東京都提供

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