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第1部 特集 ICTが導く震災復興・日本再生の道筋
第2節 「スマートフォン・エコノミー」〜スマートフォン等の普及がもたらすICT産業構造・利用者行動の変化〜

(4)ICT産業のレイヤーごとの市場規模と成長性


 以上、スマートフォン等の普及を背景として、ICT産業を構成する各事業分野がどのように変化しているかを概観した。最後に、ICT産業について、特にインターネットに関連する産業に着目しつつ、レイヤーごとの市場の規模と成長性を分析したのが、図表2-2-1-22(グローバル市場)及び図表2-2-1-23(日米比較)である。
 情報通信白書では、平成21年より情報通信産業を、「コンテンツ・アプリケーションレイヤー」、「プラットフォームレイヤー」、「ネットワークレイヤー」、「端末レイヤー」20の4つのレイヤーに分類し、レイヤー毎の主要市場の規模を算出してきたが、ここではインターネットに関連する産業として対象市場を絞り込み21、各レイヤーにおける主要な市場を定義した上で、規模の実績と予測等に関する国内外の民間調査等の公表データを収集し、推計を行った。一部プラットフォームレイヤーの市場(広告等)を除き、基本的にはB2C市場を集計範囲としている。各レイヤー内の市場規模を積み上げることでレイヤー全体並びに総額の規模を算出した22
 グローバル市場でみると、対象市場の市場規模(横軸)は、総額が9,163億ドル(2010年(平成22年)時点)であるのに対し、端末レイヤーが5,022億ドル(総額の54.8%)、ネットワークレイヤーが2,699億ドル(総額の29.5%)と、規模の面では下位レイヤーの占める比率が高いが、上位レイヤー(プラットフォームレイヤーとコンテンツ・アプリケーションレイヤーの合計(以下同じ))も1,442億ドル(総額の15.7%)と、ネットワークレイヤーの5割以上の数値となっている。他方、2010年(平成22年)から2014年(平成26年)の成長性予測(縦軸)をみると、上位レイヤーの成長性が13.4%と最も高く、端末レイヤーとネットワークレイヤーはそれぞれ9.0%、8.9%とほぼ同水準となっている。なお、上位レイヤーのコンテンツ・アプリケーションレイヤーとプラットフォームレイヤーを比較すると、前者が市場規模451億ドル(総額の4.3%)・成長性9.3%、後者が991億ドル(総額の9.6%)、成長性15.2%となっており、特にプラットフォームレイヤーの今後の伸びが期待される。グローバル市場で、成長性と規模を考えれば、端末市場と上位レイヤーの重要性が高いとみることができよう。

図表2-2-1-22 ICT産業(インターネット関連)を構成する各レイヤーの市場規模・成長性(グローバル)
図表2-2-1-22 ICT産業(インターネット関連)を構成する各レイヤーの市場規模・成長性(グローバル)の図
(出典)総務省「情報通信産業・サービスの動向・国際比較に関する調査研究」(平成24年)

 他方、日米の市場について同様に比較すると、日本のICT産業については、対象市場の市場規模総額が1,078億ドル、米国については1,917億ドル(いずれも2010年(平成22年)時点)となっており、米国が日本の約2倍の規模を有する。レイヤー別にみると、日本の場合、上位レイヤーが168億ドル(総額の15.6%)、ネットワークレイヤーが585億ドル(総額の54.3%)、端末レイヤーが325億ドル(総額の30.2%)となっており、ネットワークレイヤーが産業規模の半分以上を占めている。他方、米国については、総額に対する構成比はそれぞれ25.5%、22.6%、51.9%と端末レイヤーが産業規模の半分以上を占め、上位レイヤーがネットワークレイヤーを上回る。成長性では、上位レイヤーが両国とも高い傾向(日本:12.8%、米国:13.6%)にある一方、ネットワークレイヤー、端末レイヤーでは米国が高い。このように、ICT産業の構造は両国で大きく異なっている。また、米国は各種端末、モバイルインターネット、アプリ・マーケットや電子書籍など幅広いレイヤーで高い成長性が見込まれるのに対し、我が国では、モバイルインターネットが既に大きな市場を形成しており、アプリ・マーケットを除き比較的成長率が低めであることがみて取れる。

図表2-2-1-23 ICT産業(インターネット関連)を構成する各レイヤーの市場規模・成長性(日米比較)
図表2-2-1-23 ICT産業(インターネット関連)を構成する各レイヤーの市場規模・成長性(日米比較)のグラフ
(出典)総務省「情報通信産業・サービスの動向・国際比較に関する調査研究」(平成24年)

 上記の世界、日米におけるICT産業(インターネット関連)の市場規模・レイヤー別構成比と、レイヤー別の成長性予測を一覧にしたのが図表2-2-1-24である。市場規模については、日本のネットワークレイヤーの比率の高さが特徴的である。また、成長性予測では、上位レイヤーはいずれの市場でも高く、その他のレイヤーでは日本が全体的に低い数値となっている。

図表2-2-1-24 ICT産業(インターネット関連)の世界・日米比較(一覧表)
図表2-2-1-24 ICT産業(インターネット関連)の世界・日米比較(一覧表)のグラフ
(出典)総務省「情報通信産業・サービスの動向・国際比較に関する調査研究」(平成24年)


20 本項(第2節1(4))では、これまでの情報通信白書の定義に従い、コンテンツ・アプリケーションレイヤーを「情報通信に関わるサービスやコンテンツの制作及び供給に関わる事業、情報通信システムに関するアプリケーションやソフトウェアの開発・運用等に関わる事業に該当するレイヤー」、プラットフォームレイヤーを「ユーザー認証、機器(端末)認証、コンテンツ認証などの各種認証機能、ユーザー認証機能、課金機能、著作権管理機能、サービス品質管理機能などを提供するレイヤー」、ネットワークレイヤーを「通信と放送を含むネットワークを経由した伝送事業に該当するレイヤー」、端末レイヤーを「ユーザーが利用する情報通信端末や機器・装置等の製造事業に関するレイヤー」としている。なお、プラットフォームレイヤーについては、下記「2. ICTビジネスエコシステム間競争の到来とその展望」で言及しているOS機能も含むサービス等提供のための共有機能・能力を意味する「プラットフォーム」とは必ずしも同一ではない点留意を要する。また、コンテンツ・アプリケーション関連の事業者がプラットフォームに係る機能を提供している例や、コンテンツ・アプリケーション提供事業者が大規模化してプラットフォーム機能を第三者に提供する例もあり、コンテンツ・アプリケーションレイヤーとプラットフォームレイヤーの切り分けは相対的である点留意を要する。

21 対象市場は、インターネット関連市場のうち、グローバルレベルで今後の有望市場として期待される市場区分を中心に、当該市場データの参照可否を踏まえ抽出した。

22 プラットフォームレイヤーの市場規模には、当該プラットフォームを通じて流通するコンテンツ等の売上は原則含まない(電子商取引市場についても取扱高は除外している。)。算出方法の詳細については付注6参照。

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