総務省トップ > 政策 > 白書 > 24年版 > ビッグデータの活用イメージ
第1部 特集 ICTが導く震災復興・日本再生の道筋
第1節 「スマート革命」 ―ICTのパラダイム転換―

(2)ビッグデータの活用イメージ


 ビッグデータの活用については、現在、検索、電子商取引、ソーシャルメディア等のウェブサービス分野において多量に生成・収集等されるデータを各種サービスの提供のために活用することを中心に進展してきている。その代表例が、グローバルに展開するAmazon、Apple、Facebook、Googleなど米国のネット系プラットフォーム事業者である。各社は、利用者の商品・デジタルコンテンツ等の購買履歴や決済情報、コミュニケーションの発信履歴など膨大なデータを蓄積しており、それらのデータを活用しつつサービス革新等を進めることが、各社の競争力につながっている側面があると考えられる。

 しかし、ビッグデータ活用はそれにとどまるものではなく、データの収集・蓄積・分析に至る技術の高度化や商用サービス・機器の登場(図表2-1-4-2参照)により、多様な付加価値が創造されると考えられる。海外の民間調査会社が発表したレポート18では、ビッグデータによる付加価値創造について、①透明性の創造(Creating transparency)、②需要の発掘、柔軟性の顕在化、パフォーマンスの増大の実験の可能化(Enabling experimentation to discover needs, expose variability, and improve performance)、③人々のセグメント化による動作のカスタマイズ(Segmenting populations to customize actions)、④自動化されたアルゴリズムによる人間の決断の代替・支援(Replacing/supporting human decision making with automated algorithms)、⑤新たなビジネスモデル、製品、サービス革新(Innovating new business models, products, and services)の5類型を提示している。

図表2-1-4-2 ビッグデータ活用のイメージ
図表2-1-4-2 ビッグデータ活用のイメージの図
(出典)情報通信審議会ICT基本戦略ボード「ビッグデータの活用に関するアドホックグループ」資料

 ビッグデータとして活用されるデータについては、今後は、ウェブサービス分野のデータ・技術のみならず、M2M等のセンサーネットワーク等から収集されるデータも含め、多様なデータが想定されている。このような多種多量のデータを実社会分野において分野横断的に、かつリアルタイムに活用し、交通渋滞、医療の充実や犯罪抑止といった社会的課題の解決や、電力網など業務基盤・社会インフラの効率的運用といった効果をもたらすことが期待されている。第1章第5節に示したICTを活用した街づくりに係る地方公共団体アンケート結果でも示されているように、地方公共団体においても、地域経営戦略におけるデータ・ICTの活用やいわゆる「スマートシティ」「スマートタウン」構想に対しては、具体的な取組はこれからの状況にあるもののおおむね必要性は感じており、財政面の対応や実証実験による具体的効果の提示により飛躍的に進む可能性がある。今や、ビッグデータは、公的部門を含むあらゆる事業分野において重要性を増大させつつあり、個々の企業レベルにおいても競争力向上や成長の鍵となると同時に、各部門の生産性向上やサービス革新、消費者価値の増大等を通じて、国全体の成長を担う存在となりつつあると考えられる。
 また、ビッグデータは、新たなICTサービスの創造を通じてICT産業の成長にもつながることが見込まれる。情報通信審議会ICT基本戦略ボード・ビッグデータの活用に関するアドホックグループでは、ビッグデータの社会経済効果について、「ビッグデータの活用に関する市場規模等の計測手法については、国際的に確立されていない状況であるが、諸外国に関する民間調査機関による試算等を前提とした場合の日本における効果として、データの利用事業者及びその支援事業者からなるビッグデータの活用に関する市場においては、今後、少なくとも10兆円規模の付加価値創出及び12〜15兆円規模の社会的コスト削減の効果があると考えられる。」としている。

図表2-1-4-3 ビッグデータの活用による発現効果
図表2-1-4-3 ビッグデータの活用による発現効果の図

(出典)情報通信審議会ICT基本戦略ボード「ビッグデータの活用に関するアドホックグループ」資料


18 McKinsey Global Institute “Big data: The next frontier for innovation, competition, and productivity”(平成23年5月)
テキスト形式のファイルはこちら

ページトップへ戻る