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第1部 特集 ICTが導く震災復興・日本再生の道筋
第4節 ICTイノベーションによる「課題解決力」の実証

4 成長会計からみたICTの成長に対する寄与


(1)国際比較でみた成長経済分析

 TFP(全要素生産性)は、一般に技術革新、経営ノウハウ等の知識ストック、企業組織改革、産業構造変化等の要因による生産性向上が含まれると理解されており、情報通信のイノベーションによる生産性向上も、主としてこの全要素生産性の上昇として計測されると考えられている。ついては、先行研究8を基に、TFPの寄与をICTセクターと非ICTセクターに分け、ICTの効果がTFPの寄与度に与える影響について分析を行った。
 まず、成長会計の手法に基づき、GDP成長率に対するTFPと情報資本の寄与度をみると、今回分析した各国ともにTFPと情報資本が経済成長に寄与していることが確認できる。また、TFP成長率に対するICT要因の寄与度をみても、ほとんどの期間でプラスの寄与となっており、生産性(TFP)の向上に対してもICTが貢献している(図表1-4-4-1)。

図表1-4-4-1 経済成長率・TFP成長率の寄与度分解
図表1-4-4-1 経済成長率・TFP成長率の寄与度分解のグラフ
※EU-KLEMSのデータ制約のため、日本は2006年までの数値となっている。また、ドイツは統一後の数値である。
(出典)総務省「ICTが成長に与える効果に関する調査研究」(平成24年)

 次に、成長会計の日米比較を行う。まず、2005年(平成17年)〜2007年(平成19年)における米国経済成長率は2.6%であるが、寄与度をみると労働要因(労働時間要因と労働の質要因)が1.1%、一般資本要因が0.7%、情報資本要因が0.4%、TFP要因が0.4%とそれぞれの要因がバランス良く成長に寄与していることに加え、一般資本要因と情報資本要因のポイント差は0.3%と小さい。それに対して、我が国の経済成長率は1.9%で、その内、労働要因(労働時間要因と労働の質要因)が0.2%、一般資本要因が0.9%、情報資本要因が0.2%、TFP要因が0.7%の寄与となっており、一般資本要因と情報資本要因のポイント差も0.7%と米国と比較して情報資本要因の寄与度が小さい。
 情報資本の蓄積や、ICT活用による生産性(TFP)が成長に貢献していることを踏まえれば、本格的な少子高齢化社会を迎える我が国において、さらなるICT投資の促進やICT利活用の推進が今後の成長を加速する上で課題となるだろう。
 このように、ICT資本の蓄積が成長に与える経路には、その蓄積そのものが直接成長をもたらす「直接効果」を通じた経路と、ICT資本の蓄積によるTFPの向上を通じた成長の実現という「間接効果」を通じた経路の2つが存在し、我が国及び諸外国においても成長に寄与してきていることがわかる。では、我が国及び諸外国において、情報資本ストック及びTFP成長率は産業別にみるとどのようになっているのであろうか。


8 Oliner and Sichel (2000), Jorgenson and Stiroh (2000), CEA (2000)等の先行研究を参考に、下記式より全産業のTFP上昇率に対するICT要因を、全産業のTFP上昇率=[ICT産業の名目GDPシェア×ICT産業のTFP上昇率]+ [非ICT産業の名目GDPシェア×非ICT産業のTFP上昇率]にて算出。
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