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第1部 特集 ICTが導く震災復興・日本再生の道筋
第3節 デジタルネットワーク完成が導くメディア新展開

(3)インターネットによるラジオ再送信の本格化


 放送とインターネットの連携は、テレビ放送にとどまらない。ネットワーク伝送容量の制約の少ないラジオについては、各国でインターネットでの同時再送信が進みつつあり、ラジオの配信手段として定着している。iPlayerが成功を収めている英国の状況をみると、iPlayer経由でのラジオ聴取は2011年(平成23年)第一四半期で1億回を超え、そのうち7割を超える約7,700万回が同時再送信聴取となっている。18%の世帯がラジオ聴取にインターネットを利用しており、インターネット上の無料音声サービス(音楽ストリーミングサービスなど)の比率(7%)を上回っている。
 我が国においても、ラジオ放送の難聴取解消の手段として、インターネットでの同時再送信が開始されており、スマートフォン等の普及とスマートフォン向けアプリの配信により、その利用が拡大しつつある。本項では、NHK及び地上ラジオ放送のインターネット再送信を中心に、インターネットラジオの動向について紹介する。

図表2-3-2-15 主要国におけるインターネットラジオ(ラジオ放送のインターネット同時配信)の展開例
図表2-3-2-15 主要国におけるインターネットラジオ(ラジオ放送のインターネット同時配信)の展開例の表
(出典)総務省「情報通信産業・サービスの動向・国際比較に関する調査研究」(平成24年)

図表2-3-2-16 英国におけるインターネットラジオの聴取状況
図表2-3-2-16 英国におけるインターネットラジオの聴取状況のグラフ
(出典)Ofcom Communication Market Report:UK 2011年8月

 ラジオは、高層ビル増加や家庭内の電子機器類の増加により、受信環境が悪化するとともに、若年層を中心とするラジオ聴取機会の減少、ラジオ受信機の減少などの課題に直面している。このような課題、とりわけ難聴取の解消に対応するため、地上ラジオ民放が中心となり(株)radikoが平成22年12月に設立され、関東圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、群馬県、栃木県、茨城県)及び関西圏(大阪府、京都府、奈良県、兵庫県、滋賀県、和歌山県)において、放送エリア内に限定した再送信が開始された。その後、放送局は、平成24年4月現在、民放ラジオ65局の参加に放送大学が加わり実施されているところである。
 また、NHKにおいても、放送法第20条第2項第8項の業務の認可を受けて、インターネットによるラジオの再送信を平成25年末まで試行的に提供し効果を確認する目的で、平成23年9月1日に、radikoとほぼ同様のシステムにより、NHK第一放送、第二放送及びFM放送についてパソコンによる再送信(らじる★らじる)を開始し、翌月にはスマートフォン等への再送信も開始している。
 両者はいずれも、 ストリーミング方式、音声ビットレート48kbps、国内(ないし放送エリア)限定配信(IPによる判定)の方式をとり、技術的には共通のシステムを構築している。
 らじる★らじる及びradikoの利用状況をみると、以下のとおりである。

●らじる★らじる
 NHKの「らじる★らじる」においては、平成23年9月から12月の「同時ストリーム数」(何台のパソコン等が同時に接続されているかを示す。)は、ラジオ3波合計で平均3,000、最大で12,700に達している。また、「ユニークIP数」(1日で総計何台のパソコンが接続されていたかを示す。)では、ラジオ3波合計で平均52,000、最大100,000に達している。また、平成23年10月から平成24年1月4日までのスマートフォン向けアプリのダウンロード数は、総計約63万件に達している。

図表2-3-2-17 らじる★らじるのユニークIP数の推移
図表2-3-2-17 らじる★らじるのユニークIP数の推移のグラフ
(出典)NHK資料

●radiko
 radikoでは、平成24年1月30日現在、パソコン用アプリケーションのダウンロード数が約290万件に達しており、スマートフォン向けアプリのダウンロード数も総計約390万件に達している。また、スマートフォンの普及や参加局の増加等を背景に、平成24年4月には月間ユニークユーザーが初めて1,000万人を超え、1,046万人に達したところである3。利用機器は、パソコンからの聴取とスマートフォンからの聴取がいずれも45%と拮抗している。なお、同社では、テレビやデジタルフォトフレームなど、聴取可能な機器の増加に向けた取組を進めている。

図表2-3-2-18 radikoのサービス形態
図表2-3-2-18 radikoのサービス形態の図
(出典)radiko提供資料(画面イメージのみ)

 また、聴取者の状況を放送による聴取者と比較すると、radikoの聴取者の平均年齢が38.8歳であるのに対し、放送による聴取者は49.6歳、聴取時間帯をみても、平日の聴取者を100としたときの数値が、放送による聴取者は深夜帯は大きく低下し24時には5近くまで落ちるのに対して、radikoの聴取者では、24時でも20以上を維持し、放送による聴取と比較して夕方・深夜帯に多く利用されているなど、若年層の利用が見て取れる状況にある。

図表2-3-2-19 ラジオ放送、radikoの聴取者年齢層の比較
図表2-3-2-19 ラジオ放送、radikoの聴取者年齢層の比較のグラフ
(出典)IPサイマルラジオ協議会資料

図表2-3-2-20 ラジオ放送、radikoの聴取時間帯比較
図表2-3-2-20 ラジオ放送、radikoの聴取時間帯比較のグラフ

(出典)IPサイマルラジオ協議会資料

 サービス面では、radikoは、ネットの特性を生かし、番組・楽曲・CMなどとシンクロした情報を表示する機能を備えており、一部サービスを開始している。この機能を生かして、放送されている楽曲に同期して、アーティスト情報や楽曲情報を表示する機能(アーティストシンクロ)や、音声CMに同期して関連情報を表示する機能(シンクロアド)を提供し、聴取者サービスの向上や、ラジオの新たな広告ビジネス開拓を図っている。また、この機能は、教育番組でのテキストとのシンクロやSNSとの連携に活用することも可能であり、同社では放送とネットサービスを組み合わせることによる付加価値向上を目指しているところである。
 その一方で、東日本大震災時には、被災地域のラジオを全国で聴取可能にする(復興特別支援サイト)など、災害時対応を含め、社会に貢献できるプラットフォーム作りを目指している。
 以上のように、インターネットによるラジオの再送信は、ラジオ放送の難聴取解消のみならず、聴取層の拡大などラジオが抱えている課題を解決する手段としての可能性がみて取れる。インターネットによるラジオの再送信には、著作権関係の権利処理など課題があるが、利用者利便の向上等の観点も含め、今後の拡大が期待される。

図表2-3-2-21 radikoの利用機器
図表2-3-2-21 radikoの利用機器のグラフ
(出典)IPサイマルラジオ協議会資料


3 (株)radikoでは、ユニークユーザー数はパソコン、ガジェット、スマートフォン(iPhone、Android)それぞれで回数に関わらず、利用した人数の合計(1人の方が複数のデバイスを利用した際は、それぞれのデバイスで1ユニークユーザーとカウント)としている。

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