総務省トップ > 政策 > 白書 > 令和5年版 > フィルターバブル、エコーチェンバー
第1部 特集 新時代に求められる強靱・健全なデータ流通社会の実現に向けて
第3節 インターネット上での偽・誤情報の拡散等

(2) フィルターバブル、エコーチェンバー

人は「自らの見たいもの、信じたいものを信じる」という心理的特性を有しており、これは「確証バイアス(Confirmation bias)」と呼ばれる。プラットフォーム事業者は、利用者個人のクリック履歴など収集したデータを組み合わせて分析(プロファイリング)し、コンテンツのレコメンデーションやターゲティング広告等利用者が関心を持ちそうな情報を優先的に配信している。このようなプラットフォーム事業者のアルゴリズム機能によって、ユーザーは、インターネット上の膨大な情報・データの中から自身が求める情報を得ることができる。

一方、アルゴリズム機能で配信された情報を受け取り続けることにより、ユーザーは、自身の興味のある情報だけにしか触れなくなり、あたかも情報の膜につつまれたかのような「フィルターバブル」と呼ばれる状態となる傾向にある。このバブルの内側では、自身と似た考え・意見が多く集まり、反対のものは排除(フィルタリング)されるため、その存在そのものに気付きづらい。

また、SNS等で、自分と似た興味関心を持つユーザーが集まる場でコミュニケーションする結果、自分が発信した意見に似た意見が返ってきて、特定の意見や思想が増幅していく状態は「エコーチェンバー」と呼ばれ、何度も同じような意見を聞くことで、それが正しく、間違いのないものであると、より強く信じ込んでしまう傾向にある。

フィルターバブルやエコーチェンバーにより、インターネット上で集団分極化が発生しているとの指摘がある3。意見や思想を極端化させた人々は考えが異なる他者を受け入れられず、話し合うことを拒否する傾向にある。フィルターバブルやエコーチェンバーによるインターネット上の意見・思想の偏りが社会の分断を誘引し、民主主義を危険にさらす可能性もありうる4



3 Cass R. Sunstein(2001)『インターネットは民主主義の敵か』。Sunsteinは、集団分極化はインターネット上で発生しており、インターネットには個人や集団が様々な選択をする際に、多くの人々を自作のエコーチェンバーに閉じ込めてしまうシステムが存在するとしたうえで、過激な意見に繰り返し触れる一方で、多数の人が同じ意見を支持していると聞かされれば、信じ込む人が出てくると指摘している。

4 鳥海不二夫 山本龍彦 共同提言「健全な言論プラットフォームに向けて―デジタル・ダイエット宣言ver.1.0」

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