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第2部 情報通信分野の現状と課題
第9節 郵政行政の推進

(2) 郵便局の地域貢献

ア デジタル社会における郵便局の地域貢献の在り方

我が国では、少子高齢化と人口減少が進み、さらに、新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、地域社会の疲弊が一層進行しており、全国津々浦々に存在する郵便局が果たす地域貢献への期待がますます高まっている。こうした中、郵便局が、地理的・時間的な制約の克服を可能とするデジタル化のメリットと、地域拠点としての有用性を活かして果たすべき地域貢献の在り方を見極めていくことが重要である。このことから、総務省では2022年(令和4年)10月、情報通信審議会に対して、デジタル社会における郵便局の地域貢献の在り方について諮問を行い、同審議会郵政政策部会において審議が開始された。同部会では、①地方自治体をはじめとする地域の公的基盤と郵便局の連携の在り方、②郵便局のDX・データ活用を通じた地域貢献の在り方などについて審議を行っており、「郵便局を通じたマイナンバーカードの普及・活用」に関しての中間報告を同年12月に取りまとめた。

また、総務省では、2022年(令和4年)10月に関係部局からなる郵便局を活用した地方活性化方策検討プロジェクトチームを設置し、郵便局を活用した地方活性化方策について検討を進め、前述の「郵便局を通じたマイナンバーカードの普及・活用」の推進に加え、郵便局での地方自治体窓口事務等の取扱いの推進をはじめ、消防、防災、行政相談等の様々な方策について取りまとめ、2023年(令和5年)3月に公表した。本取りまとめにおいて、全国津々浦々に窓口があるなどの強みを持つ郵便局と地方自治体の連携が進むよう、各地域の取組推進に向け、全国の地方自治体、郵便局に対し方策を広く周知していくこととしている。

イ 郵便局を通じたマイナンバーカードの普及・活用の推進

住民にとって、マイナンバーカードはデジタル社会を新しく作っていくためのいわばパスポートのような役割を果たすものであり、社会全体でデジタル化が進む中、必要不可欠なものとなりつつある。

全国津々浦々に存在する郵便局は、ユニバーサルサービスの維持が法律により義務付けられており、過疎地においても郵便局のネットワークが維持されつづけている。こうしたことから、郵便局は高齢者等の地域住民の生活インフラとなっており、特に過疎地においては、人口減少の中、最後の「常勤の社員がいる事業拠点」となりつつある。

住民のマイナンバーカード普及・活用に際しては、こうした郵便局の拠点性を活かすことが有用であるとの考えの下、情報通信審議会郵政政策部会において、2022年(令和4年)12月に「デジタル社会における郵便局の地域貢献の在り方」の中間報告として、郵便局におけるマイナンバーカードの普及・活用策が取りまとめられた。

中間報告には、①郵便局における申請サポートの拡大の要請、②市町村によるマイナンバーカード出張申請受付に対する郵便局スペースの積極的提供の要請、③マイナンバーカード申請勧奨ポスターの郵便局掲示等マイナンバーカードの申請勧奨、④郵便局におけるマイナンバーカード交付に必要な法律改正の検討、⑤電子証明書の発行・更新、暗証番号の変更・初期化に係る事務の委託推進、⑥コンビニがない市町村を中心とした郵便局への証明書自動交付サービス端末の導入支援、⑦郵便局などにおける証明書の自動交付サービスの導入に係る地方財政措置など、国において早急に実施すべき取組が盛り込まれた。これを受けて、848地方自治体、3,511局の郵便局(3月31日時点)においてマイナンバーカードの申請サポートが行われるなど、具体的な取組が実施された。総務省は引き続き、郵便局におけるマイナンバーカード交付に必要な法律改正の手続を進め、普及に向けて地方自治体と郵便局を伴走支援するほか、郵便局におけるマイナンバーカードの取得推進や郵便局におけるマイナンバーカード関連事務の受託に向けた地方自治体・郵便局への働きかけなどに取り組んでいる。

ウ 行政サービスの窓口としての活用推進

総務省では、令和3年度補正予算により、低コストで導入可能な「郵便局型マイナンバーカード利用端末」(郵便局型キオスク端末)を開発実証した。この端末により、住民票など証明書発行手続がデジタル化され、地方自治体を介さず、郵便局だけで完結して証明書を発行することが可能となる(図表5-9-2-1)。現在、令和4年度第2次補正予算により、コンビニがない市町村を中心として、郵便局等へ「郵便局型マイナンバーカード利用端末」の導入を支援するとともに、マイナンバーカードを利活用した住民サービス向上のための取組として、地方自治体が郵便局などにおける証明書の自動交付サービスを導入する経費について、令和5年度より特別交付税措置(措置率0.7)を講じている。

図表5-9-2-1 郵便局型キオスク端末
エ 郵便局と地域の公的基盤との連携

総務省では、2019年度(令和元年度)から2021年度(令和3年度)まで「郵便局活性化推進事業(郵便局×地方自治体等×ICT)」として、郵便局の強みを生かしつつ、地域の諸課題解決や利用者利便の向上を推進するための実証を行い、モデル事業として全国に普及展開してきた。2022年(令和4年)1月には、実証を通じて開発された「スマートスピーカーを活用した郵便局のみまもりサービス」が日本郵便による地方自治体向けのサービスとして開始された。日本郵便は、同年12月末までに29の地方自治体から郵便局のみまもりを受託している。

また、総務省は、2022年度(令和4年度)から、「郵便局等の公的地域基盤連携推進事業」(図表5-9-2-2)として、あまねく全国に拠点が存在する郵便局と地方自治体等の地域の公的基盤とが連携し、デジタルの力を活かし地域課題の解決を推進するための実証を行っている。2022年度(令和4年度)は、郵便局でのマイナンバーカードと交通系ICカードの紐付け支援による地域MaaSの支援(群馬県前橋市)、中山間地域における郵便局のドローンの公的活用(三重県熊野市)、郵便局で商品を注文できる買い物サービス支援(熊本県八代市)に関する実証事業を実施した(図表5-9-2-3)。2023年度(令和5年度)は、これらの事業の成果を全国へ普及展開するとともに、郵便局におけるオンライン診療等の実証事業を実施する予定であり、引き続き、郵便局と地域の公的基盤との連携による地域の課題解決のモデルケースを創出していく予定である。

図表5-9-2-2 郵便局等の公的地域基盤連携推進事業
図表5-9-2-3 地域実証の様子
(出典)中央下画像:GoogleEarthにより株式会社ACSLにて作成(Map data © 2022 Google)
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