第1部 特集 新時代に求められる強靱・健全なデータ流通社会の実現に向けて
第1節 加速するデータ流通とデータ利活用

(1) 教育

1人1台端末と高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備することで、多様な子供たちが誰一人取り残されることなく公正に個別最適化され、資質・能力を一層確実に育成できる教育環境の実現を目指す「GIGAスクール構想」が、2019年12月にスタートした。その後、2020年の新型コロナウイルス感染症の拡大によって、1人1台端末の整備が前倒しされ、2020年度末までに全自治体等のうち1,769自治体等(97.6%)に納品を完了する見込という早さで導入が進んだ6。また、教育データの利活用による個人の学び、教師の指導・支援の充実等の観点から、教育データの利活用に向けた検討が進められ、2022年1月に「教育データ利活用ロードマップ」が公表された。

このような中、事業者からも教育現場でのデータの効率的な活用に向けた様々なサービスが提供されている。例えば、Googleが提供するGoogle Workspace for Educationは、世界で1.7億人を超える生徒と教育者に利用されている7。また、Googleは、2022年11月に小中学校や高等学校など学校現場のDXを支援する「Google for Education教育DXパッケージ」の提供を開始した。学習ログ等をクラウドで一元管理し、学びの軌跡を振り返る、学びの指導をサポートするなどの活用を支援している。

また、Microsoftも学びのプラットフォームMicrosoft 365 Educationを提供しており、データを活用した教育分野の可視化を訴求している。Microsoft 365 Educationから得られるデータだけでなく、教育データ利活用の目的に応じて、その他の学習系システムや校務系システムのデータを組み合わせて蓄積・分析し可視化することができる8図表2-1-4-1)。

図表2-1-4-1 校務・学習データの可視化(Microsoft)
(出典)Microsoft

地方自治体での教育データの活用事例として、渋谷区教育委員会は、「子供一人ひとりの幸せ(Well-Being)の実現」を目指して、教員の児童・生徒の理解に基づいた指導による学校満足度の向上を目指した「教育ダッシュボード」を構築している。「学校全体」、「クラス」、「児童・生徒個人」といった単位に分けることで、多面的に把握することができるようにしている。

また、民間の学習塾や予備校では、蓄積したデータをAIで分析し、一人ひとりにカスタマイズした最短ルートの学びを提供する取組が進んでいる。例えば、AI「atama+」は全国の塾・予備校3,100教室以上(2022年5月末時点)に提供されており、累積解答数は3億件を突破した9。蓄積した大量の学習データを分析することによって、日々教材コンテンツの改善やレコメンドの精度向上が行われており、個別最適な学習を実現している。

このようにプラットフォーム上にデータを蓄積することによって、児童・生徒1人1人の理解状況に応じた教育が実現しつつある。



6 文部科学省https://www.mext.go.jp/a_menu/other/index_00001.htm別ウィンドウで開きます

7 https://edu.google.com/intl/ALL_jp/workspace-for-education/editions/overview/別ウィンドウで開きます

8 https://news.microsoft.com/ja-jp/2022/12/21/221231-introducing-case-studies-and-technologies-for-utilizing-educational-data-to-advance-the-giga-school-initiative/別ウィンドウで開きます

9 https://corp.atama.plus/news/2416/別ウィンドウで開きます

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