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第2部 情報通信分野の現状と課題
政策フォーカス Beyond 5G(6G)の実現に向けて

政策フォーカス
Beyond 5G(6G)の実現に向けて

1 Beyond 5G(6G)への期待と実現する社会像

(1)Beyond 5G(6G)とは

我が国における移動通信システムは、第1世代(1G)から第5世代(5G)まで約10年周期で世代交代が行われてきた。現在は、商用サービスとして4Gが幅広く使用されているとともに、2020年(令和2年)より5Gの商用サービスが開始され、サービスの普及が進みつつある段階にある。Beyond 5G(6G)は、5Gの次の世代の情報通信インフラとして、2030年代のあらゆる産業・社会活動の基盤となることが見込まれており、これまでの無線通信の延長上として捉えるのではなく、有線・無線や陸・海・空・宇宙等を包含したネットワーク全体と考えられている。

【関連データ】Beyond 5G(6G)の特徴

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(2)2030年代の社会像

Beyond 5G(6G)の実現が期待される2030年代の社会像として、国民生活や経済活動が円滑に維持される「強靱で活力のある社会」の実現を目指し、具体的には、①誰もが活躍できる社会(Inclusive)、②持続的に成長する社会(Sustainable)、③安心して活動できる社会(Dependable)の3つを掲げている。これらの社会像については、政府の国家戦略や我が国の社会課題に照らして、図表1のとおり整理・具体化している。

また、この社会像の実現を目指して、情報通信分野に限らず幅広い業界における2030年代に向けた課題や将来像を把握し、多くの産業や利用にかかわる広範囲な情報通信の利用シーンを洗い出し、図表2のとおり整理している。

図表1 Beyond 5G(6G)が実現する2030年代の社会ビジョン
図表2 Beyond 5G(6G)ユースケース

これらのユースケースを実現し、様々な社会課題の解決や活力ある社会の実現を図るためには、今後あらゆる産業や社会の基盤になると見込まれるBeyond 5G(6G)の技術開発が必須である。具体的には、5Gの特長である「高速・大容量」、「低遅延」、「多数同時接続」の機能を更に高度化することに加え、新たに「超低消費電力」、「通信カバレッジの拡張性」、「自律性」、「超安全・信頼性」などの機能が期待されている(図表3)。

図表3 Beyond 5G(6G)が実現する機能・利用シーン(イメージ)

2 Beyond 5G(6G)に向けた課題意識

現状、5G基地局の国際的な市場シェアにおいて、海外の主要企業が高い割合を占めており、日本企業の国際競争力は低い状況にある。そうした中で、諸外国では、Beyond 5G(6G)における技術優位性を確保するため、大規模な政府研究開発投資や研究開発計画の具体化について公表しているなど、世界的な開発競争が激化している状況にある。

また、我が国の通信トラヒックは増加傾向にあり、このまま技術革新がなければ、情報通信ネットワークの消費電力は将来的に激増していく見込みであることが大きな懸念となっている。

さらに国家戦略として、誰もが活躍でき、誰一人取り残さないデジタル化の実現に向け、Beyond 5G(6G)の恩恵を国民に届けることが重要である(図表4)。

図表4 Beyond 5G(6G)の主な課題認識

3 目指すべきBeyond 5G(6G)ネットワークの姿

Beyond 5G(6G)は、現行の移動通信(無線通信)の技術やシステムの延長上として捉えるのではなく、有線・無線、光・電波、陸・海・空・宇宙などを包含し、データセンター、デバイス、端末なども含めたネットワーク全体として統合的に捉えることが重要である。

具体的には、光電融合技術を広く活用しつつ、オール光ネットワーク(固定網)と移動網を密に結合させることで革新的な高速大容量・低遅延・高信頼・低消費電力の次世代通信インフラを実現する。また、衛星やHAPSなどの非地上系ネットワークともシームレスに結合させ、通信カバレッジを大幅に拡張する。さらに、仮想化技術等も活用して、これらをセキュアに最適制御できる統合的なネットワークを実現する。

こうしたBeyond 5G(6G)ネットワークの姿を目指すことにより、我が国が世界市場をリードし、通信ネットワーク全体の省電力化によりカーボンニュートラルに貢献し、陸海空を含め国土を広くカバーできるデジタル田園都市国家インフラの実現を達成していく。そのためにも、我が国がグローバルな通信インフラ市場でゲームチェンジャーとなり、勝ち残るための戦略的な取組が必要である。

【関連データ】目指すべきBeyond 5G(6G)ネットワークの姿

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4 Beyond 5G(6G)実現のための取組

(1)Beyond 5G(6G)の研究開発の重点化と社会実装・海外展開に向けた技術戦略

Beyond 5G(6G)の実現に向けた取組の推進にあたり、総務省は、2021年(令和3年)9月に「Beyond 5Gに向けた情報通信技術戦略の在り方」について情報通信審議会に諮問を行い、2022年(令和4年)6月に中間答申が取りまとめられた。同答申では、「研究開発戦略」、「社会実装戦略」、「知財・標準化戦略」、「海外展開戦略」の4つの戦略が示されている。

ア 研究開発戦略

同答申では、目指すべきBeyond 5G(6G)ネットワークの姿や日本の強み等を踏まえ、図表5のとおり産学官で取り組むべきBeyond 5G(6G)研究開発の10課題を整理した上で、「日本の強み」「技術的難易度」「自律性確保」「国家戦略上の位置付け」「先行投資を踏まえた加速化の必要性」の観点から、オール光ネットワーク関連技術、非地上系ネットワーク関連技術、セキュアな仮想化・統合ネットワーク関連技術を重点技術分野と位置付けている。これらの重点技術分野を中心に国費を集中投下し、予算の多年度化を可能とする枠組みの創設に一体で取り組むことにより、研究開発を戦略的に推進していく。

図表5 産学官で取り組むべきBeyond 5G(6G)研究開発10課題

イ 社会実装戦略

社会実装戦略として、上記の重点技術分野の成果を2025年(令和7年)以降順次、国内ネットワークに実装し市場投入していく。Beyond 5G(6G)のマイグレーションシナリオを具現化し、大阪・関西万博なども含め成果を産学官一体でグローバルに発信していく。

ウ 知財・標準化戦略

重点技術分野を中心に、オープン&クローズ戦略により国際標準化と知財取得を推進していく。オープン(協調)領域については、多様なビジネス創出につながるオープンアーキテクチャの促進を基本として、ネットワークアーキテクチャとキーテクノロジーの国際標準化を有志国とも連携して推進する一方、クローズ(競争)領域については、コア技術の権利化・秘匿化等を図り、我が国の競争力の源泉としていく。

エ 海外展開戦略

重点技術分野の成果を「世界的なBeyond 5Gキーテクノロジー」とし、早期に国内社会実装を進め、技術の有用性をいち早く世界に発信してグローバルデファクト化を推進する。主要なグローバルベンダとも戦略的に連携していくことにより、世界の通信キャリアへの導入も促していく。


この4つの戦略を一体で進めることで、Beyond 5G(6G)に向けた研究開発や社会実装を強力に加速化していく。

【関連データ】Beyond 5G(6G)に向けた研究開発・社会実装の加速化戦略

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(2)産学官による推進体制の構築

産学官による「Beyond 5G推進コンソーシアム」が2020年(令和2年)12月に設立され、活動が進展している。同コンソーシアムでは、Beyond 5G(6G)のユースケース、ビジョン、技術課題等を検討してホワイトペーパーを作成する取組や、国際カンファレンスを通じて国際的な連携や発信を強化する取組が行われている。

また、産学官による知財・標準化戦略を推進する枠組みとして、「Beyond 5G新経営戦略センター」が2020年(令和2年)12月に設立された。上記の情報通信審議会答申においては、同センターにおける検討結果の報告を踏まえて、Beyond 5Gに関する国際標準化ロードマップ及びIPランドスケープが盛り込まれた。また、同センターは、セミナーを通じた情報発信、知財・標準化をリードする人材育成のためのワークショップ等を実施している。

(3)国際的なビジョンの共有(G7デジタル・技術大臣会合)

Beyond 5G(6G)の技術開発に当たっては、社会実装や海外展開を目指した研究開発を重点的に支援することとしているが、特に、海外展開を見据えた場合、我が国が開発する技術が広く国際的に受け入れられる環境整備を図ることが重要である。

このため、我が国が目指すBeyond 5G(6G)のビジョンについて、広く国際社会の理解・賛同を得られるよう、米国、EU、ドイツ、シンガポールといった国々との政府間対話を通じて、発信に努めてきている。特に、DXに加えて、GXの実現にも資する、極めてエネルギー効率の高い光電融合技術や、オープンで相互運用可能なネットワーク構成の推進といった分野で、我が国が世界で主導的な立場を確保することを目指し対話を進めてきている。

2023年(令和5年)4月に開催された「G7群馬高崎デジタル・技術大臣会合」においては、議長国として「安全で強靱なネットワークインフラ構築」等について議論を行い、各国の理解・賛同を得て、「G7デジタル・技術閣僚宣言」が採択された。本宣言において、我が国が目指すBeyond 5G(6G)のビジョンを踏まえた形で無線のみならず有線も含めた次世代ネットワークの将来ビジョンを策定し、安全で強靭なデジタルインフラの構築に向けたG7アクションプランの合意を得た。


総務省としては、Beyond 5G(6G)の開発及びその成果の社会実装・海外展開に向けて、官民が一丸となって必要な取組を着実に講じていく。

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