総務省トップ > 政策 > 白書 > 令和5年版 > 多様な通信インフラ・手段の確保
第1部 特集 新時代に求められる強靱・健全なデータ流通社会の実現に向けて
第2節 豊かなデータ流通社会の実現に向けて

(2) 多様な通信インフラ・手段の確保

携帯電話利用者が臨時的に他の事業者のネットワークを利用する「事業者間ローミング」も、自然災害や通信障害等の非常時においても継続的にデジタルサービスを利用するための方策の一つとなる。実際、ウクライナでは、ロシアが侵攻を続ける中、通信事業者4が、通信の継続を確保するために、それぞれのネットワーク間で無料ローミングを可能にした。また、米国では、2022年7月にFCC(連邦通信委員会)が、ハリケーンや山火事、長時間停電等の災害時に携帯電話事業者間でローミングを義務的に実施するMandatory Disaster Response Initiative(MDRI)を制度化した5

我が国でも、総務省が2022年9月から「非常時における事業者間ローミング等に関する検討会」を開催し、非常時における通信手段の確保に向けて、携帯電話の事業者間ローミングをはじめ、幅広い方策について検討を行った。同年12月には、一般の通話や緊急通報機関からの呼び返しだけでなくデータ通信も可能なフルローミング方式による事業者間ローミングをできる限り早期に導入すること等を基本方針として位置づけた「非常時における事業者間ローミング等に関する検討会 第1次報告書6」が取りまとめられた。これを受け、電気通信事業者各社は、事業者間ローミングの実現に向け、技術使用や運用方針等の検討を進めている。

通信障害の内容によっては、事業者間ローミングが実施できない場合があることから、ローミング以外の通信手段の利用を含め総合的に対応を進めていくことが必要である。2023年3月以降、携帯電話事業者は、異なる事業者の回線に切り替えて通信サービスを利用できる副回線サービスの提供を開始した7。このサービスは、例えば、通信障害や災害等で、利用者が普段使っている事業者の回線が使えなくなった場合の備えとして有効である。また、一般社団法人無線LANビジネス推進連絡会は、一般社団法人電気通信事業者協会の会員である携帯電話事業者から、災害用統一SSID「00000JAPAN」を通信障害の発生時においても活用したい旨の要望を受け、2023年5月、「大規模災害発生時における公衆無線LANの無料開放に関するガイドライン」の改定を行い、通信障害時に「00000JAPAN」を開放できるものとした。今後、同連絡会において、自然災害時と異なる運用面の検討が必要な点について、検討が進められる。

さらに、衛星など地上系以外の通信ネットワークの活用も有効である。現在、戦時下のウクライナでは、米・SpaceXの衛星コンステレーションを用いたブロードバンド・インターネットサービス「Starlink(スターリンク)」が活用されている。我が国でも、電気通信事業者等により非常時における衛星等の活用や導入に向けた取組を進めている(図表3-2-1-2)。また、東京都は、通信障害発生時や災害発生時にもインターネット通信の手段を確保するため、衛星通信を活用することを検討している8

図表3-2-1-2 我が国の電気通信事業者の衛星等の活用・導入に向けた取組
(出典)各社公表資料等を基に総務省作成
「図表3-2-1-2 我が国の電気通信事業者の衛星等の活用・導入に向けた取組」のExcelはこちらEXCEL


4 ウクライナの3大通信事業者であるKyivstar、Lifecell、Vodafone Ukraine

5 https://www.soumu.go.jp/main_content/000838215.pdfPDF

6 https://www.soumu.go.jp/main_content/000852036.pdfPDF

7 https://news.kddi.com/kddi/corporate/newsrelease/2023/03/27/6618.html別ウィンドウで開きます
https://www.softbank.jp/corp/news/press/sbkk/2023/20230327_02/別ウィンドウで開きます

8 https://note.com/smart_tokyo/n/n51c567aefe31別ウィンドウで開きます

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