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第1部 特集 新時代に求められる強靱・健全なデータ流通社会の実現に向けて
第2節 プラットフォーマーへのデータの集中

2 課題①:プラットフォーマーのデータ寡占による公正な競争環境の阻害

(1) 現状・背景

近年、GAFAMをはじめとするプラットフォーマーは、収集した膨大なデータをビジネス等に活用することにより、デジタル関連市場で強大な経済的地位を築き、その市場支配力は一層高まりを見せている。

2023年3月末時点での世界のデジタル関連市場における時価総額上位15社をみるとGAFAMが上位を占めており、Tencent(7位)やAlibaba(13位)も上位に入っている2。また、これら企業の売上高の推移をみると、いずれの企業も高い成長率で売上高を拡大してきた(図表2-2-2-1)。

図表2-2-2-1 大手プラットフォーマーの売上高の推移
(出典)総務省(2023)「国内外のICT市場の動向等に関する調査研究」

プラットフォーマーが提供するサービスには、あるネットワークへの参加者が多ければ多いほどそのネットワークの価値が高まり更に参加者を呼び込むというネットワーク効果3が働く。その結果、多くのユーザーを抱えるサービスは、更に利用者を獲得することが可能となり、規模を拡大していく傾向にある。このように、ネットワーク効果、規模の経済等を通じてプラットフォーマーへデータが集中することで利用者の効用が増加していくとともに、プラットフォーマーにデータが集積・利活用され、データを基本とするビジネスモデルが構築されると、それによって更にプラットフォーマーへのデータの集積・利活用が進展するといった競争優位を維持・強化する循環が生じるとされている4

また、プラットフォーマーが提供しているサービスは、スイッチング・コスト5が高いとされている6。スイッチング・コストが高い場合、利用者はたとえ他に安くて質の高い代替的なサービスがあったとしても、乗り換えをためらうことになる。特に、プラットフォーマーが様々なサービスを提供しており、これらが連動している場合、スイッチング・コストによる乗換え抑制効果は一層高いものとなる。この結果、利用者はサービス提供者にロックインされた状態となるため、サービス間の競争の効果を弱めることになる(図表2-2-2-2)。

図表2-2-2-2 モバイル・エコシステムの特性
(出典)内閣官房デジタル市場競争本部事務局「デジタル市場競争会議(第6回)」資料2より

プラットフォーマーの市場支配力強化やデータ寡占への懸念は諸外国においても指摘されている。例えば、米下院司法委員会は、「Investigation of competition in digital markets」と題してデジタル市場の競争状況について調査を行い、以下をプラットフォーマーによる寡占の背景にある主な課題として挙げている。

①ネットワーク効果によりユーザーが増えるほど、他のユーザーを呼び込む力が強くなるため、勝者総取りの市場構造である

②プラットフォーマーが他の事業者の市場参入に対してゲートキーパーとして振る舞う可能性がある

③利用者が他のサービスへ切り替える際のスイッチング・コストが高い

④オンラインサービスとして提供しており、データを取得しやすく、データが集中しやすい構造にある

プラットフォーマーの市場支配力が強まると他の企業のビジネスへの参入を妨げるおそれや、企業間の競争が滞る可能性がある。また、プラットフォーマーはプラットフォームを運営・管理する立場であり、プラットフォームを利用する事業者が不利になるような取引を行うことが可能な立場にいる。現状では、ウェブ上の行動履歴、通信履歴、位置情報など既に相当程度のデータが一部のプラットフォーム事業者に蓄積されており、このようなデータの利活用によりユーザーに対して利便性が高いサービスを提供できる。一方で、これらの高いサービス品質によるロックイン効果が生じる結果、データを利活用した多様な競争が確保されず、中長期的にはユーザーにとって質の高いサービスが提供されないという可能性も生じうる。

データの適切な流通・利活用を促進しデータを活用した多様な事業やサービスを創出するためには、一部の事業者によるデータの過度な囲い込みを防止し、透明・健全な競争環境を確保することが重要である。



2 第2部第4章第6節「プラットフォームの動向」参照。

3 ある人がネットワークに加入することによって、その人の効用を増加させるだけでなく他の加入者の効用も増加させる効果を「ネットワーク効果」と呼ぶ。ネットワーク効果は、直接的な効果と間接的な効果に分けられる。直接的な効果とは、同じネットワークに属する加入者が多ければ多いほど、それだけ加入者の効用が高まる効果である。間接的な効果とは、ある財(例:ハード機器)とその補完財(例:ソフトウェア)が密接に関係している場合に、ある財の利用が進展すればするほどそれに対応した多様な補完財が多く供給され、それにより効用が高まる効果である。

4 https://www.jftc.go.jp/dk/guideline/unyoukijun/dpfgl.html別ウィンドウで開きます

5 現在利用している製品・サービスから、代替的な他の製品・サービスに乗り換える際に発生する金銭的・手続的・心理的な負担のことを、スイッチング・コストという。

6 経済産業省・公正取引委員会・総務省(2018)「デジタル・プラットフォーマーを巡る取引環境整備に関する中間論点整理」

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