総務省トップ > 政策 > 白書 > 令和5年版 > 適正・公正な市場環境の確保に向けた各国の取組
第1部 特集 新時代に求められる強靱・健全なデータ流通社会の実現に向けて
第2節 プラットフォーマーへのデータの集中

(2) 適正・公正な市場環境の確保に向けた各国の取組

市場の競争環境を確保するため、各国では市場支配力を拡大するプラットフォーマー等に対して規制の強化や透明化を促進するための対策が行われている。

ア 日本

日本では、公正取引委員会が、独占禁止法の規定等に基づき調査を実施している。例えば、AppleがiPhone向けのアプリケーションを掲載するApp Storeの運営に当たり、デジタルコンテンツの販売等についてアプリを提供する事業者の事業活動を制限している疑い等があった7ため、2016年から、Appleに対し調査を実施した8。2023年2月には「モバイルOS等に関する実態調査報告書」を公表し、AppleとGoogleがシェアを二分するスマートフォンのOSやアプリストアについて、十分な競争が働いておらず健全な競争環境の整備が必要だと評価した。

また、デジタルプラットフォームにおける取引の透明性と公正性の向上を図るために、2021年2月に「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律」(令和2年法律第38号)が施行された。同法では、デジタルプラットフォームのうち、特に取引の透明性・公正性を高める必要性の高いプラットフォームを提供する事業者を「特定デジタルプラットフォーム提供者9」として指定し、利用者に対する取引条件の開示や変更等の事前通知、運営における公正性確保、苦情処理や情報開示の状況などの運営状況の報告を義務づけている。

イ 米国

米国では、これまで民間企業であるプラットフォーマー等を規制する動きは少なかったものの、近年は競争政策の観点からプラットフォーマーに対する規制を強化しようとする動きがみられ始めている。2019年7月、司法省(Department of Justice;DoJ)は、GAFAに対する独占禁止法の大規模な調査を発表し、2020年7月には下院司法委員会でGAFAの反トラスト法に関する公聴会が開催された。

また、2020年10月、司法省は、Googleの検索サービスが市場独占状態にあるのは反トラスト法違反にあたるとして同社を提訴した。また、2023年1月には、司法省及び8州とでGoogleのインターネット広告事業を反トラスト法に一部抵触した疑いがあるとして提訴し、広告事業の一部分離を求めた。

ウ EU

欧州では、オンライン上での「プラットフォームサービスの大幅な進化」、「集中の進展と力の不均衡の増大」、「偽情報など新たな課題」等の諸課題の解決に向けて、「デジタルサービス法パッケージ」として「デジタル市場法(DMA:Digital Market Act)」及び「デジタルサービス法(DSA:Digital Service Act)」が整備された。

開かれたデジタル市場を実現することを目的とするDMA10では、欧州委員会によりゲートキーパーと認定11された大規模なコアプラットフォームサービスを提供している事業者に対し、不公正なサービスの提供やデータの取扱を禁止する義務を課している。具体的には、ゲートキーパーが実施すべき事項として、①一定の条件の場合は、サードパーティのサービスとゲートキーパーのサービスを相互運用できるようにする、②ビジネスユーザーがゲートキーパーのプラットフォームを使用して生成したデータにアクセスできるようにする、③ビジネスユーザーがゲートキーパーのプラットフォーム外で顧客と契約できるようにすることなどを規定している。また、ゲートキーパーが実施してはならない事項としては、①ゲートキーパー自身のサービスや製品をプラットフォーム上の他のサービスよりも優遇して表示する、②ユーザーがプラットフォーム外の企業にリンクするのを防ぐ、③有効な同意を得ずに、ターゲティング広告を目的として、ゲートキーパーのプラットフォームサービス以外のサービスでユーザーを追跡することなどを規定している。なお、ゲートキーパーがこれらの義務や禁止事項に違反した場合には、欧州委員会は前年度の全世界売上高の10%を上限に制裁金を課すことができる。

エ 中国

2022年8月、独占禁止法が改正され、市場支配的地位を有する事業者による、データやアルゴリズム、技術やプラットフォーム規則などを利用した市場支配的地位の乱用を禁止するといったプラットフォーム事業者を対象とする内容が追加された。



7 独占禁止法第3条(私的独占)又は第19条(不公正な取引方法第12項〔拘束条件付取引〕等)の規定に違反する疑い

8 Appleから関連するガイドラインの規定を改訂する等の改善措置の申出がなされ公正取引委員会でその内容を検討したところ,上記の疑いを解消するものと認められたことから,今後Appleが改善措置を実施することを確認した上で審査を終了することとした。
https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2021/sep/210902.html別ウィンドウで開きます

9 2022年10月時点で、「総合物販オンラインモール」ではアマゾン、楽天、ヤフーの3社、「アプリストア」ではApple及びiTunes、Google LLCの2社、「ネット広告」ではGoogle、Meta Platforms、ヤフーの3社が規制対象となっている。

10 DMAの適用開始日は、2023年5月2日であるが、施行ルールやガイドラインの採択などの準備作業に関しては、2022年11月1日から適用が開始されている。

11 欧州委員会がゲートキーパーに指定する基準は、過去3年間の域内の年間売上高が75億ユーロ以上あるいは前年度の株式時価総額の平均が750億ユーロ以上であることに加え、プラットフォームサービスの域内の月間利用者数が4,500万人以上かつ年間のビジネスユーザーが1万者以上であることなどとなっている。

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