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第2部 情報通信分野の現状と課題
第8節 ICT国際戦略の推進

(3) 分野ごとの海外展開に向けた取組

ア 基幹通信インフラ

モバイル通信網については、2021年(令和3年)、エチオピア政府から、同国の携帯電話事業について我が国企業を含む国際コンソーシアムへライセンスの付与が承認され、2022年(令和4年)10月に商用通信サービスを開始した。これを契機として、同国及びアフリカ地域へのデジタルソリューションの展開を推進する予定である(図表5-8-2-3)。

光海底ケーブルについては、JICTを通じて東南アジアを中心とした地域における光海底ケーブル事業(総事業費約400百万米ドルのうち最大78百万米ドルの出資等を支援決定)を支援しているほか、2020年(令和2年)8月にインドのモディ首相から発表されたインド洋における光海底ケーブル敷設計画について、2021年(令和3年)9月から同地域のプロジェクトに我が国企業が参画している。さらに、通信環境が比較的整っていない太平洋島嶼国の通信環境の改善についても、有志国や関係省庁・機関とも連携し取り組んでいる。

5G/ローカル5Gについては、国際場裡で安心・安全な5Gネットワークの重要性が議論される中で、オープンでセキュアなネットワークを実現する技術として注目される「Open RAN」やそれを活用したシステムの海外展開に取り組んでいる。例えば、2021年度(令和3年度)から、タイ及びチリで、現地通信キャリアと共働でOpen RAN準拠の5G無線設備を活用したローカル5Gネットワークの構築及びローカル5Gアプリケーションの実証実験を通じて海外展開可能性の検証を行っている。2022年度(令和4年度)からは、英国においてOpen RANに関する試験環境整備や、RAN機器におけるO-RANアライアンスが定めるインターフェース仕様への適合性の確認試験等を実施し、またベトナム・フィリピンにおいてはOpen RAN展開可能性について調査を行っている。

データセンターについては、2021年(令和3年)3月から、ウズベキスタンにおいて、同国の通信環境の改善に向け、データセンターなどの通信インフラ整備に係るプロジェクトに我が国企業が参画しているほか、JICTを通じてインドにおけるデータセンターの整備・運営事業(2022年(令和4年)10月に最大86百万米ドルの出資等を支援決定)を支援している。

地上デジタル放送日本方式については、中南米を中心に、日本を含む20か国が同方式を採用しており、2022年(令和4年)10月にはボツワナにおいて、海外での採用国として初めて全土でアナログ放送停波が完了し、2023年(令和5年)1月にはコスタリカにおいても全土でアナログ放送停波が完了した。今後も引き続きデジタル放送への円滑な移行にかかる支援を実施していく。

イ デジタル技術の利活用モデル

医療分野における利活用については、中南米地域を中心にスマートフォンによる遠隔医療システムを受注するとともに、2020年度(令和2年度)からは東南・南西アジア諸国への高精細映像技術を活用した内視鏡及び医療AIによる診断支援システムの普及展開に向け、現地病院における実証も通じて検討を進めており、2022年度(令和4年度)にはベトナムにおいて調査実証を実施した。

電波システムについては、GPSなどの測位衛星を利用した航空機の進入着陸システムである地上型衛星航法補強システム(GBAS)について、タイで実証実験を行う準備を進めている。このような取組を通じて、我が国の技術優位性などについて各国と認識を共有し、我が国の周波数利用効率の高い無線技術の国際的な利用の促進と周波数の国際的な協調利用を図っている。

図表5-8-2-3 ICT海外展開の具体的な事例
ウ 放送コンテンツ

我が国の放送事業者等が、地方自治体等と連携し日本の魅力を発信する放送コンテンツを制作して海外の放送局等を通じて発信する取組や、国際見本市を通じた放送コンテンツの海外展開を継続的に支援してきており、地域産品の販路開拓などの経済波及効果や日本の魅力の浸透など、様々な効果が生まれている。令和5年度からは、海外に対して日本の放送コンテンツの情報を発信する共通基盤の整備等に着手しており、放送コンテンツ関連海外売上高を令和7年度までに1.5倍(対2020年度(令和2年度)比)に増加させることを目標に、引き続き放送コンテンツの海外展開の推進及びそれを通じたソフトパワーの強化を図っていく。

エ その他
(ア)消防分野

2018年(平成30年)10月8日にベトナムとの間で「日本国総務省とベトナム社会主義共和国公安省との消防分野における協力覚書」を締結して以来、予防政策や消防用機器等の基準等についての意見交換等を行うことで、日本の消防用機器等の品質の高さをPRしてきた。また、令和5年2月には火災予防技術に関する基礎研修を実施したところである。引き続き、ベトナムをはじめ幅広く東南アジア諸国等に対し働き掛けていくことで、日本の規格に適合する消防用機器等の海外展開を推進していく。

(イ)郵便分野

アジア、東欧などの主に新興国・途上国を対象に、郵便業務の効率化・近代化に関する機会及び課題を特定し、その解決などに資する我が国の知見や経験を共有するアプローチを通じて、官民一体となって国際協力及び海外展開の取組を推進している。これまで、ベトナム郵便やスロベニア郵便を対象に、業務効率化のためのコンサルテーションの実施や区分機などの受注を実現してきており、これらの取組に加えて、ICTの活用を通じて郵便事業体におけるビジネス機会の拡大を図るような取組も新たに進めている。

(ウ)行政相談・統計分野

行政相談分野では、各国の公的オンブズマンとの連携・協力などが行われており、ベトナム、ウズベキスタン、イラン、タイの4か国とは、行政苦情救済に係る協力の覚書をそれぞれ締結している。これに基づき、例えば、ベトナムから研修生を計約280人受け入れるなどの取組が実施されてきた。

統計分野では、信頼性の高い電子政府・統計システムの構築に関する知見を活かして、政府のデジタル化支援を推進しており、例えば、ベトナムでは、中央省・地方省間の情報連携用システム構築を支援した。

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