第1部 特集 新時代に求められる強靱・健全なデータ流通社会の実現に向けて
第1節 データ流通を支える通信インフラの高度化

第1節 データ流通を支える通信インフラの高度化

1 固定通信

インターネットが普及する前の1980年代後半から1990年代前半は、電話回線やISDN経由で通信事業者のコンピューターに接続し、その中で情報の送信・受信を行うパソコン通信が多くのユーザーに使われていた1。パソコン通信は、これまでの音声の通信に加えてデータによる通信の道を開いたものであり、メールや掲示板、チャットなどテキストベースのサービスが中心であったものの、着実に普及していった。

その後、我が国でもインターネットの商用利用が開始され、1995年にWindows95の販売を契機としてインターネットの一般家庭への普及が急速に進んだ。

インターネットが普及し始めた1990年代後半の通信環境は、電話回線によるダイヤル接続が主流であったが、通信速度が十分ではない、従量課金型である、インターネット接続中は通話を行えないといった課題があった。

このような中、1999年にADSLの商用での提供が開始された。ADSLは、同じ電話回線の中でも通話とは別の帯域をデータ通信用に使用するため、通話とインターネット接続を同時に行うことが可能となり、定額料金・常時接続という形で提供されるようになった。2001年には、Yahoo!BBなど低廉な価格のADSLサービスを提供する事業者が新規参入したことで事業者間での競争が進展し、開始当初から提供していたNTT東日本も含めて、料金が低廉化していった。また、開始当初に下り最大1.5Mbpsであった回線速度が2004年には50Mbpsに達するなど高速化も進み、契約数は急激に拡大した2

ADSLの料金低廉化と高速化が進む中、2001年に一般利用者向けに光ファイバーを活用したFTTH(Fiber To The Home)サービスが開始され、2000年代後半にADSLから更に高速なFTTHへの乗り換えが進んだ。2008年にはFTTHが総契約数においてDSLを抜き、現在までFTTHサービスが固定系ブロードバンドサービスの主流となっている。



1 パソコン通信の利用者は、1991年で115万人だったものが、1996年には573万人にまで増加した。

2 2003年には契約者数が1,000万人を超えた。

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