総務省トップ > 政策 > 白書 > 令和5年版 > 豊かかつ健全な情報空間の実現
第1部 特集 新時代に求められる強靱・健全なデータ流通社会の実現に向けて
第2節 豊かなデータ流通社会の実現に向けて

4 豊かかつ健全な情報空間の実現

第2章第3節で述べたとおり、SNS等の普及によりインターネット上ではあらゆる主体が情報の発信者となり、様々な情報を容易に入手することが可能となる一方、違法有害情報や偽・誤情報の拡散、情報の偏り等データの流通や活用をめぐり様々な課題が生じている。このような課題はサイバー空間や一部の年代に閉じたものではなく、現実世界も含めた社会全体の問題である。

しかしながら、現状において、これら課題への特効薬はなく、これら課題の要因の一つであるインターネット上の「アテンション・エコノミー」に対する解決策も見いだせていない状況である。また、生成AIやディープフェイク技術の普及により、虚偽の文章や偽画像を誰でも容易に作成できるようになり、人の目では本物かどうか見抜くことが困難な情報に国民が日常的に触れる機会が増加しており、これら技術の悪用により偽・誤情報の問題は今後一層複雑化していくことが想定される。

誰もが安心してデジタルサービスを利用できる健全な情報空間を実現するためには、データ流通・共有・活用の場となるプラットフォーム事業者を含む多様なステークホルダーの一層の取組が求められる。

総務省「プラットフォームサービスに関する研究会(座長:宍戸 常寿 東京大学大学院法学政治学研究科教授)」が2022年8月に公表した「第二次とりまとめ」では、偽・誤情報に関する今後の取組の方向性として、表現の自由の確保などの観点から、民間部門の自主的な取組を基本とし、プラットフォーム事業者・ファクトチェッカー・ファクトチェック推進団体・既存メディア等が連携したファクトチェックの取組の推進、ICTリテラシー向上の取組、我が国における偽情報問題に対する対応状況の把握など、プラットフォーム事業者をはじめ、幅広い関係者による自主的取組を総合的に推進すること等とされている。

その中で、プラットフォーム事業者は、リスク分析・評価に基づき、偽情報へのポリシーの設定とそれに基づく運用を適切に行い、それらの取組に関する透明性・アカウンタビリティ確保を進めていくことが求められていることから、これらの取組に関し、政府はモニタリングと検証評価を継続的に行っていくことが必要である。

また、デジタルサービスを使う側のリテラシーの向上も必要である。

我が国では、これまで主に青少年を対象として、インターネットトラブルの予防法などICTの利用に伴うリスクの回避を促すことを主眼に置いたICTリテラシー向上施策を推進してきた。ICTやデジタルサービスの利用が当たり前となる中、あらゆる世代が、実際にICT等を活用するなどしながら、主体的かつ双方向的な方法により、デジタルサービスの特性、当該サービス上での振舞に伴う責任、それらを踏まえたサービスの受容、活用、情報発信の仕方を学ぶことが一層重要となっている。

総務省は、「ICT活用のためのリテラシー向上に関する検討会」(座長:山本 龍彦 慶應義塾大学大学院法務研究科 教授)を開催し、自分たちの意思で自律的にデジタル社会と関わっていく「デジタル・シティズンシップ」の考え方も踏まえつつ、これからのデジタル社会に求められるリテラシー向上の推進方策等について議論・検討を行ってきた。本検討会等の議論を踏まえ、2023年夏頃には、今後取り組むべき事項等を取りまとめたロードマップを作成・公表する予定である。今後は、ロードマップに基づき、リテラシーの習熟度に関する指標の策定や、リテラシーを向上するためのコンテンツの開発に向けた検討を進めて行く必要がある。

近年急速に進化・普及する生成AIやメタバースのような新しいデジタル技術・サービスは、生活者の利便性を向上させ、様々な利益をもたらす一方、それはこれらを適正に使いこなせるかにかかっている。これら技術の使い方を誤ると、自身がトラブルに巻き込まれるだけでなく、場合によっては他者の利益・権利を侵害してしまう可能性もある。

誰もがAI等の活用による利便性を享受できるよう、AI等を適正に利活用できるスキル・リテラシーを身につける必要がある。

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