第1部 特集 新時代に求められる強靱・健全なデータ流通社会の実現に向けて
第1節 データ流通を支える通信インフラの高度化

2 移動通信

我が国の移動通信ネットワークは、1979年に第1世代となるサービスの開始以降、2020年に開始された第5世代に至るまで約10年周期で世代交代が行われ、大容量化・高速化の方向で進化を続けており、これに伴い移動通信サービスも多様化・高度化してきた(図表1-1-2-1)。

図表1-1-2-1 移動通信システムの進化
(出典)総務省作成資料

1979年に日本電信電話公社が第1世代アナログ方式自動車電話のサービスの提供を開始した後、1985年には自動車の外からでも通話可能なショルダー型の端末が登場し、1987年にはNTTが、更に小型・軽量化した端末を用いた「携帯電話」サービスを開始した。

1993年からはそれまでのアナログ方式に代わるデジタル方式の「第2世代移動通信システム(2G)」が開始された。2Gのパケット交換技術を用いた通信の実現に伴い、音声通話の伝送のほかにデータ通信サービスも本格的に開始されることになり、各社から携帯電話向けインターネット接続サービスが提供された3

2001年、世界に先駆けて「第3世代移動通信システム(3G)」を用いたサービスが開始された。3Gの特徴は、アクセス方式にCDMA(符号分割多元接続)を採用している点にあり、拡散符号と呼ばれるコードでユーザーを識別することにより、同じ周波数を同じ時間に多数のユーザーで共用することが可能となった。また、周波数拡散技術の一種であるCDMAを採用することで広帯域での通信が可能となり、2Gに比べて高速・大容量の通信が実現した。さらに、3Gの登場と前後して携帯電話端末の多機能化が一層進展し、携帯電話専用のサイトにアクセスできるサービスが本格化し、携帯電話端末でゲームや音楽など多様なコンテンツを楽しめるようになった。

このように携帯電話端末で多様なコンテンツを利用するニーズが増えるにつれ、当初の3Gの通信速度では物足りなさを感じるようになり、2003年には3Gを発展させてデータ通信の高速化に特化した技術を開発・導入した「第3.5世代移動通信システム4」を用いたサービスが始まった。

2007年に米国でAppleがスマートフォン「iPhone」を発表すると、そのデザイン性の高さと使いやすさから人気を博し、世界的にフィーチャーフォンからスマートフォンへの移行が始まった。

このような状況において商用開始されたのが「第4世代移動通信システム(4G)」である。まず、2010年に「3.9世代移動通信システム(Long Term Evolution(LTE))」を用いたサービスが開始された。スマートフォン時代を迎えて高速・大容量通信に対するニーズが一層高まる中、LTEは、周波数の利用効率を高めることで3Gよりも大幅な広帯域化を可能とし、更なる高速化を実現した。2015年には、LTEを更に高速化した「第4世代移動通信システム(4G、LTE-Advanced)」が開始され、通信速度はメガレベルからギガレベルへ進化した。

4G5の商用開始から約10年、2020年3月に「第5世代移動通信システム(5G)」の商用サービスの提供が開始された。5Gには、4Gの100倍以上の速度である「超高速」だけでなく、遠隔地でもロボットなどの操作をスムーズに行える「超低遅延」、多数の機器が同時にネットワークにつながる「多数同時接続」といった特徴があり、我が国の生活・経済・社会の基盤になると期待されている。早期に5Gの広域なエリアカバーを実現し、様々な産業での5Gの利活用を加速するために5Gの普及展開に向けた取組が積極的に行われており6、2022年3月末時点で全国の5G人口カバー率は93.2%、都道府県別の5G人口カバー率は全都道府県で70%を超えている。



3 NTTドコモは携帯電話向けインターネット接続サービスとして1997年に「DoPa」、1999年に「iモード」を、セルラーグループ及びIDOは1999年に「EZweb」「EZaccess」を、J-フォン(デジタルホン・デジタルツーカー各社が社名変更)も1999年に「J-SKY」をそれぞれ開始した。

4 3Gでは1枚のDVDをダウンロードするのに27〜30時間要したものが、第3.5世代では45分から1時間程度と速度が向上したことで、画像を含むホームページや動画の閲覧が円滑に行うことができるようになり、携帯電話でのインターネット利用シーンはより豊かになっていった。

5 第3.9世代移動通信システム(LTE)と第4世代移動通信システム(LTE-Advanced)の総称

6 詳細は第2部第5章第3節「電波政策の動向」を参照

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