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第1部 特集 人口減少時代のICTによる持続的成長
2 データ主導社会へ

2 データ主導社会へ

(1)データの価値

1990年代半ばからのインターネットと携帯電話の急激な普及により、先進国にとどまらず、途上国にも情報化の波が押し寄せた。このように国境を越えた情報通信ネットワークの形成が進み、さらにスマートフォンが世界的に普及した結果、人々の意識や行動の範囲が時間や場所を超えて世界的な広がりを持つことになり、世界中で様々な変化、成長、進歩の機会が拡大することとなった。我が国で、2000年代にはFTTHなどのブロードバンド通信と第3世代以降の携帯電話との急激な普及により、世界でも有数の情報通信ネットワーク基盤を有する国となった。今後、2020年に向けて、IoT基盤とも期待される、高速・低遅延・大量接続が可能な第5世代移動通信システム(5G)のサービス開始に向けて、情報通信ネットワークは更なる進化を遂げることが期待される。

近年、ICT(Information and Communications Technology:情報通信技術)はより進化している。インターネット利用の増大とIoT(Internet of Things:モノのインターネット)の普及により、様々な人・モノ・組織がネットワークにつながることに伴い、大量のデジタルデータ(Big Data:ビッグデータ)の生成、収集、蓄積が進みつつある。それらデータのAI(Artificial Intelligence:人工知能)による分析結果を、業務処理の効率化や予測精度の向上、最適なアドバイスの提供、効率的な機械の制御などに活用することで、現実世界において新たな価値創造につなげることができる。

これは現実世界の変化にとどまらない。IoTによって現実世界からより多くの情報が収集できると、サイバー空間においても、現実世界の状況をより詳細に再現することができるようになり、また、サイバー空間の情報に現実世界の情報が合わさることによって、これまでとは異なる視点や考え方も生まれることで、現実世界のみでは困難だった複雑な原因の解明や将来予測、最適な対策・計画を検討することも可能となる。

このような世界では、データは「21世紀の石油」とも言われるように、その利活用が国のあり方とその発展に大きな影響を与えることとなる。ただし、データを多く集めること自体には必ずしも価値はなく、そこから取り出される様々な意味や知見にこそ価値がある。さらに、AIの分析精度向上や様々な領域での活用により新たな価値を生み出すためには、データの量だけではなく、その種類・質が重要であり、多種類(多分野、多サービス)の高品質(高精度、高精細)なデータを大量にもっていることが競争力を左右するだけではなく、イノベーションの源泉にもなる。

そのようになると、市場での優位性の基準が、データへと移転する、つまり、現実世界とサイバー空間の主従関係が逆転することとなるとも考えられる。

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