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第2部 基本データと政策動向
第2節 電気通信事業政策の展開

(2)利用者情報の適正な取扱い

スマートフォンに蓄積される様々な利用者情報については、アプリケーション(以下「アプリ」という。)が収集・利用しており、収集した情報が第三者へ提供されている場合もある一方、利用者にとっては、どのような情報が収集され、また利用されているのかが分かりにくいといった不安や懸念が生じている。

このような中、総務省は、プライバシーポリシーの普及と、運用面・技術面から第三者が当該アプリを検証する仕組み(以下「第三者検証」という。)を推進するにあたっての諸課題について検討し、平成26年度から平成28年度において第三者検証システム(図表6-2-3-2)の構築に向けた実証実験を実施し、その結果を取りまとめたSPO(スマートフォン プライバシー アウトルック)IVを平成29年7月に公表するとともに、利用者情報を取り扱う際の指針であるSPI(スマートフォン プライバシー イニシアティブ)IIIを策定・公表した。10

図表6-2-3-2 スマートフォンアプリケーションのプライバシーに関する第三者検証の仕組み
【出所】総務省作成

これらの結果を踏まえ、総務省は事業者に対してプライバシーポリシーの正確な記載を一層求めていくとともに、利用者に対しても、自らのプライバシーを守る第一歩として、アプリを利用する際にはプライバシーポリシーの記載内容等を確認するよう周知・啓発を図っていく方針である。

政策フォーカス 固定電話網のIP網への円滑な移行に向けて

1.移行の背景

NTTは、加入電話の契約数等が減少し11、2025年頃に中継交換機・信号交換機が維持限界を迎えること等を踏まえ、2015年11月、NTT東日本・西日本の公衆交換電話網(PSTN)をIP網へ移行する構想を表した(図表1)。

図表1 固定電話網のIP網への移行に伴う設備構成のイメージ

NTT東日本・西日本のPSTNは、我が国の基幹的な通信インフラであり、また、IP電話や携帯電話を含む事業者間の通話を媒介する機能や多くの事業者が事業展開するための競争基盤を提供していることから、移行後のIP網の姿や移行の在り方は、利用者や事業者に大きな影響を与えるものと想定される。

こうした認識の下、総務省は、移行後のIP網の姿や移行の在り方について検討するため、2016年2月、「固定電話網の円滑な移行の在り方」について情報通信審議会に諮問した。これを受け、同審議会の電気通信事業政策部会及び電話網移行円滑化委員会(部会長及び委員会主査 : 山内 弘隆 一橋大学大学院商学研究科教授12)において、一年半にわたり精力的に調査・審議が行われ、2017年3月に「移行後のIP網のあるべき姿」についての一次答申13、同年9月に「最終形に向けた円滑な移行の在り方」についての二次答申14がとりまとめられた。一次答申の概要については「平成29年版 情報通信白書」で紹介しているところ15、以下では二次答申のポイントや総務省の取組について紹介する。

2.二次答申の概要

二次答申においては、一次答申後の進展等を踏まえつつ、IP網への円滑な移行を実現するための移行工程・スケジュールの明確化等が図られるとともに、一次答申に基づく取組を踏まえた各個別課題への対応の方向性が示された。

(1)固定電話網のIP網への移行工程・スケジュール

IP網への移行に際しては利用者の契約切替えなどの「サービス移行」と事業者のネットワーク対応などの「設備移行」の両面から検討する必要があるところ、電気通信事業政策部会・電話網移行円滑化委員会における移行工程・スケジュールの検討にあたっては、利用者のサービス利用に直結し、利用者に直接影響が及ぶ「サービス移行」を中心に据えることとし、「設備移行」については、事業者間協議の検討状況を踏まえつつ、「サービス移行」に支障が生じないよう確認することとされた。

その上で、二次答申においては、円滑なサービス移行の実現に向けては、必要な取組に係る期間が十分に確保されることが重要であることから、NTTが電気通信事業者として責任を持って利用者に対するサービス提供を維持できる限界を迎えるとしている時期(2025年頃)等を踏まえつつ、具体的な移行工程・スケジュールの整理がなされている(図表2)。

図表2 IP網への移行工程・スケジュール

(2)各個別課題への対応の方向性

二次答申においては、上記の移行工程・スケジュールに係る整理とあわせて、一次答申に基づく事業者の取組状況のフォローアップ等を踏まえた個別課題への対応の方向性についても整理がなされている。その内容は「IP網への移行に向けた電気通信番号の管理の在り方」、「IP網への移行に対応した緊急通報の確保」や「INSネット(ディジタル通信モード)の終了に伴う対応」など多岐にわたっている。(図表3

図表3 各個別課題への対応の方向性(抜粋)

(3)固定電話網のIP網への円滑な移行に向けて

NTTをはじめとする事業者においては、二次答申で整理された具体的な移行工程・スケジュールを踏まえ、必要となる協議や取組を加速し、円滑な移行の実現に向けた取組を着実に進めることが求められる。このため、二次答申取りまとめ後も、電話網移行円滑化委員会を定期的に開催することとし、一次答申及び二次答申に基づく取組が適切かつ着実に実施されているかについて、NTTから定期的な報告を求め、必要に応じて事業者等からの意見聴取を行いつつ、フォローアップを実施することが適当とされた。

また、総務省においては、以下の点を踏まえ、固定電話網のIP網への円滑な移行が確実に図られるようにするために必要な制度整備に着手することが適当とされた。

  • サービス移行との関係では、遅くとも2021年にはNTTにおけるメタルIP電話への移行に向けた準備・取組が本格化することから、その前に廃止・移行に係る取組についてあらかじめ行政が確認を行い整理・公表するためのルールを導入することが必要となること
  • 設備移行との関係では、①2021年から開始するIP-IP接続に対応した技術基準等の整備及び②IP-IP接続での発着信のための番号管理(ENUM方式による番号解決等)の仕組みに対応した電気通信番号の適正な管理・利用を確保するための制度整備が必要となること

3.答申を踏まえた総務省の取組

これを受けて、総務省では、「電気通信業務等の休廃止に係る利用者保護」や「電気通信番号の効率的な使用や適切な管理」に関する制度整備を含む「電気通信事業法及び国立研究開発法人情報通信研究機構法の一部を改正する法律案」を本年3月に国会へ提出し、同改正法は同年5月に公布された16

総務省としては、今後も引き続き、固定電話網のIP網への円滑な移行に向けて、一次答申及び二次答申で示された方向性を踏まえ、必要となる制度の整備・運用、事業者の取組の促進や移行工程・スケジュールの国民への周知などに取り組んでいく17



10 スマートフォン プライバシー:http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/d_syohi/smartphone_privacy.html別ウィンドウで開きます

11 NTT東日本・西日本の加入電話・ISDN電話の契約数は、減少傾向にあり、2016年3月末時点で約2,250万件(2017年3月末時点では約2,114万件)。

12 所属は諮問(2016年)時点のもの。

13 「固定電話網の円滑な移行の在り方」一次答申:http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban02_02000216.html別ウィンドウで開きます

14 「固定電話網の円滑な移行の在り方」二次答申:http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban02_02000230.html別ウィンドウで開きます

15 「平成29年版 情報通信白書」344頁、第7章第2節 1公正競争の促進④固定電話網の円滑な移行の在り方:
http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h29/pdf/n7200000.pdfPDF

16 「電気通信業務等の休廃止に係る利用者保護」及び「電気通信番号の効率的な使用や適切な管理」に係る部分の施行日は、公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日となっている。

17 (参考)「固定電話網の円滑な移行」:http://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/ictseisaku/telephone_network/index.html別ウィンドウで開きます

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