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第1部 特集 人口減少時代のICTによる持続的成長
第4節 ICTによる多様な人材の労働参加促進

(3)ビジネスコミュニケーションツールの活用事例

職場でのコミュニケーション活性化として、特にコミュニケーションの円滑化に役立つビジネスICTツール(ビジネスコミュニケーションツール)を利用することは、コミュニケーションを容易とすること以上の意味がある。例えば、文字、あるいは音声以外の付加的な情報を送付できるチャットツールについては、機能向上により資料の参照が簡単になる、受け手の誤解が生じにくくなるなどの利点がある。あるいは情報の可視化、共有化が進み、パソコンの操作ログなどの情報を集計し、業務の改善につながる情報を得られるようにすることも期待できる。

ここでは、ビジネスコミュニケーションツールの利用が進んでいる企業を2事例取り上げる。日本マイクロソフトは、ビジネスICTツールを活用し、従業員の働きやすい職場を実現した例である。次のイージフは、様々なビジネスICTツールや、テレワーク等の制度を柔軟に導入しながら、従業員の働きやすい職場を実現した例である。

ア 日本マイクロソフト

日本マイクロソフトでは、過去の失敗を踏まえて働き方改革を行って、大きな成果を上げている。例えば、2007年に在宅勤務制度を導入したが、主に育児や介護といった事由がある社員のみが活用するという限定的な傾向になっていた。

過去の経験を踏まえ、2011年2月の東京都内のオフィス統合・本社移転のタイミングで、全社規模での働き方改革の取組を開始した。フリーアドレスを導入し、紙の書類を置く場所を物理的になくして書類をすべてデジタル化し、仕事環境をすべてクラウド化することで社外からファイルにアクセスすることを可能にした。また、固定電話をなくし、メール、通話はもちろんオンライン会議などを“Skype for Business”という自社製品のツールで行うように促進し、社内と社外を分け隔てなく同じように仕事ができるようにした。この結果、取組開始前の2010年と2015年の比較で、ワーク・ライフ・バランスに対する従業員の満足度が40%改善、一人あたりの売り上げが26%増加、従業員意識調査のGreat Place to Workの働き甲斐に関する設問の回答が7%改善、残業時間が5%減少、交通費が20%削減、女性の離職率が40%削減、紙の使用量を50%削減することができた。

さらに、Office365上で蓄積されたビッグデータから、ユーザー個人の働き方を可視化し、AIがアドバイスとしての気付きを与えるツールであるMyAnalyticsを活用して、働き方の質の改善を進めている。MyAnalyticsには、ダッシュボードを用いて、1週間の業務の作業時間の配分結果を可視化したり、メンバーとのコラボレーション状況を分析して、チーム全体に関係する働き方の質向上についてのアドバイスを提供したり、会議時間の増減や会議の質(傾向)を可視化したり、日々のメンバーとのコラボレーション状況を可視化したり、メール作業を可視化したりする機能がある。その結果、無駄な会議時間を27%削減し、4部門合計で3,579時間の削減に成功した。日本マイクロソフトは、個人と組織のポテンシャルを最大限発揮できる環境作りを目指している。

図表4-4-2-9 MyAnalyticsによる働き方の見える化
(出典)日本マイクロソフト
図表4-4-2-10 MyAnalyticsの効果(2016年12月〜2017年4月に実施した効果)
(出典)日本マイクロソフト
イ イージフ

株式会社イージフ(aegif)は、2006年に設立され、コンテンツ管理システム(ECM)1 の導入コンサルティングとして、ECMの導入支援やカスタマイズ、保守サービスを提供したり、Liferayというポータル製品の導入や、その他ビジネスコンサルティングを行っている。

イージフでは、働く環境の整備に力を入れており、設立当初からテレワーク、BYOD2を採用している。元々、外資系コンサルティング会社の出身者が立ち上げた会社であり、外資系のカルチャーを引き継いでいていたため、自由な働き方やペーパーレスを前提としていた。社内では、新しいツールやサービスの情報交換を活発に行い、様々なビジネスICTツールを導入してきた。

図表4-4-2-11 イージフのオフィスの様子
(出典)イージフウェブサイト

コミュニケーションツールは全社で導入し、タスク管理ツールは4〜5名のチームやプロジェクト単位で活用している。また、バーチャルオフィスについては、事務系の職員向けに導入した。しかし、他のツールとの連携に課題があり、利用者が限られていて導入効果が低いので現在では使わなくなった。

これらの理由としては、コミュニケーションツールは全社共通であれば、全社員がコミュニケーションを取りやすくなり円滑に運用できるが、タスク管理は業務の内容によって管理すべき項目も変わるため最適なツールも変わるので、業務単位ごとの方が使い勝手がより良いことや、バーチャルオフィスのような仕組みは一定程度の利用者が確保されていないと費用対効果が低くなることが挙げられる。

コミュニケーションツールとしては、チャットとWeb会議システムを導入している。導入中のチャットシステムではプロジェクトやチーム、趣味ごとに多数のチャネルがあって、チャット上で仕事の指示をする人もいる。現在は、よりコストが安く、無料で多機能が利用できる別のオープンソースソフトウェアのチャットシステムへの移行を進めている。Web会議システムも料金が安く多機能な他のWeb会議システムに移行しようとしている。

会社が成長すると、テレワークで働く人も増えてきたが、社員間のコミュニケーションが希薄になってしまうおそれがある。そこで、週に1回は出社することとして、さらに、月に1回はオフラインの社員交流イベントを開催している。また、孤立感を抱くのを回避するため、オープン型のコワーキングスペースの利用に補助金を出している。コワーキングスペースは、子供がいて自宅では仕事がしにくい人などにとっても非常に有効である。

会社として、子育て中の女性を積極的に採用しようとしており、どのようなツールがあるとより働きやすいのか、試行中である。



1 イージフが扱うのは、Alfrescoという英Alfresco Software, Inc.(以下Alfresco社)により開発されたオープンソースによる企業向けコンテンツ管理システム(ECM)。イージフは、Alfrescoの初期リリース時から2012年までAlfrescoの日本で初めてのパートナーとしてAlfrescoの導入支援やカスタマイズ、保守サービスを提供してきた。顧客の業種は金融や製造、通信等様々であり、企業規模は大手企業ないしは上場している中堅企業である。

2 BYOD(Bring Your Own Device)とは、従業員の個人保有の携帯用機器を企業内に持ち込んで業務に使用することであり、個人保有の携帯用機器から会社のシステムにアクセスすることが可能になる。

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