総務省トップ > 政策 > 白書 > 30年版 > PDS・情報銀行・データポータビリティに関わる国際動向
第1部 特集 人口減少時代のICTによる持続的成長
第2節 日本と世界のデータ関連制度

(5)PDS・情報銀行・データポータビリティに関わる国際動向

ア 本人関与の元でのデータ活用促進

前項で紹介したように、我が国においては、2016年12月に公布・施行された官民データ活用推進基本法に関連して、情報銀行やデータポータビリティなど、個人の関与の下での多様な主体による適正なデータ活用に向けた環境整備が進められている。諸外国においても、米国のエネルギー分野のグリーンボタンや医療分野のブルーボタン、英国のマイデータ(midata)イニシアティブに基づくエネルギー・モバイル・金融・小売データ分野の取組をはじめとして、様々な主体が保有するデータを再利用しやすい電子的な形式で本人に還元し、第三者のアプリケーションでの活用を可能とするなど、本人関与の元でのデータ活用を推進する施策が進められてきた。

特にEUでは、2018年5月から適用が開始された先述のGDPR第20条において、個人情報を対象とした「データポータビリティの権利」が定められ、個人は一定の要件下で、①再利用しやすい機械可読な形式で自らの個人情報を受け取ること、そして②技術的に可能な場合には、別の企業等に対して直接その個人情報を提供することを求めることができることとされた。データポータビリティの権利は、本人による自らのデータへのコントロール能力を強化すると共に、本人自らが望んだ形でのデータ活用サービスの恩恵を受けられる環境を作るために導入されたものである。

EU各国ではデータポータビリティの権利を円滑に実現するための施策が進められており、例えばフランス政府の支援を受けたFing財団では、個人が自らの個人情報を集積・管理し自らが指定した第三者に提供する基盤となるパーソナルクラウドの構築や、様々なウェブサービスから自らの個人情報をダウンロードしたり、別のサービスに移転することを可能とするための共通仕様(レインボーボタン)の策定に取り組んでいる。

イ 分野ごとの環境整備に向けた取組

EUでは、PDS・情報銀行・データポータビリティに関連する施策は、個人情報全般を対象としたGDPRの他にも、分野ごとの法制化が進められている。EUで2015年に成立した改正決済サービス指令(PSD2:Payment Service Directive 2)は、域内の銀行や電子マネー事業者等に対して、免許・登録やセキュリティなどの要件を満たした決済指図伝達サービス提供者(PISP:Payment Initiation Service Provider)及び口座情報サービス提供者(AISP:Account Information Service Provider)と呼ばれる第三者サービスとのAPI接続を義務付けている。PISPは利用者の依頼により金融機関の決済口座に決済情報を伝達するサービスである。AISPは様々な金融機関に分散する利用者の決済情報を集約するサービスであり、データ分析に基づく家計アドバイスなどを提供することが多い。AISPは、データポータビリティに基づくPDS・情報銀行サービスの、金融分野における先行的取組であるといえる。

IoTの拡大に伴い重要性を増す、様々なデバイスから収集されるデータのポータビリティ確保に関わる取組も進められている。特に通信モジュールが搭載されたコネクテッドカーから収集されるテレマティクスデータは、運転者に対する情報提供サービスや、運転行動を保険料に反映させるテレマティクス保険をはじめとして、様々な活用が進められている。EUの自動車業界では、GDPRのデータポータビリティ権に対応するため、国際自動車連盟欧州・アフリカ支部が中心となり、テレマティクスデータの本人還元や、メーカー間・第三者提供サービス間のデータ移転を可能とするための検討を進めている25。また2018年2月には、欧州議会運輸委員会において、「協調的インテリジェント運輸システムに向けた欧州戦略」の一環として、本人の求めに応じたテレマティクスデータの第三者サービスによるリアルタイムアクセスを可能とし、プライバシーやセキュリティに配慮した上での活用を可能とするための新たな立法に向けた決議が可決された26



25 “My Car My Data: EU data protection rules mean drivers control who accesses their car data” FIA Region I,(2017年8月)
http://www.fiaregion1.com/my-car-my-data-eu-data-protection-rules-mean-drivers-control-who-accesses-their-car-data/別ウィンドウで開きます

26 “Report on a European strategy on Cooperative Intelligent Transport Systems”(2018年)
http://www.europarl.europa.eu/sides/getDoc.do?type=REPORT&reference=A8-2018-0036&format=XML&language=EN別ウィンドウで開きます

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