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第1部 特集 人口減少時代のICTによる持続的成長
第5節 ICTの進化によるこれからのしごと

(1)職業の変化

技術革新により自動化が進むことによる労働力代替の可能性については様々な推計が行われている。例えば、英国オックスフォード大学のマイケル・オズボーン准教授とカール・ベネディクト・フレイ博士は、米国において10〜20年内に労働人口の47%が機械に代替可能であると試算をしている1。日本については、株式会社野村総合研究所が、オズボーン准教授及びフレイ博士との共同研究により、日本の労働人口の約49%が就いている職業において、機械に代替可能との試算結果を得ている2。その一方で、この推計結果は過大であるとの意見もある3。例えば、Arnts, Gregory and Zierahn(2016)は、職業を構成するタスク(業務)単位でみた場合に大半のタスクが自動化される職業は9%程度にとどまるとの研究結果を示している4

このように、AIによって将来、どのタスクがどの程度自動化され、どの職業がどのように変化していくのかについては、非常に予測が難しい。しかし、先行研究の内容を総合すると、おおむね図表4-5-2-1のような変化が生じるといえよう。まず、AIの導入によって業務効率や生産性が向上する結果、定型的な業務などの機械化が進むであろう職業についてはタスク量が減少する。他方で、AIを導入・運用するために必要なシステム開発やシステム運用などの業務量の増加や、AIを活用したサービスなどの新たな職業の登場によりタスク量が増加する。このようにAIの導入が進んだ結果、機械化可能性の高い職業に就く人が減る一方で、AIを導入・運用する職業や、AIの登場により新しく生まれる職業などに就く人が増加すると考えられる。

図表4-5-2-1 人工知能(AI)の導入による職業の変化
(出典)総務省「ICTの進化が雇用と働き方に及ぼす影響に関する調査研究」(2016)より作成

今後労働力の減少が見込まれる我が国において、自動化による業務の代替は減少する労働力人口を補完するための手段のひとつとして期待することができる。しかし、業務の自動化を進めていく中で人間の担うべき仕事の内容は、現在存在しない職業の仕事が創出される可能性も含めて、いつ、どのような変化を遂げるかについては不明確である。AIの活用拡大を進めて行く取組と同時に、人間が担うべきより質の高い仕事や、今後生まれるであろう仕事への労働力の移動を進めていくことが必要であろう。



1 カール・ベネディクト・フレイ及びマイケル・オズボーン「The Future of Employment: How Susceptible are jobs to computerization?」(2013)

2 株式会社野村総合研究所「日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能に〜 601種の職業ごとに、コンピューター技術による代替確率を試算 〜」(2015)
https://www.nri.com/~/media/pdf/jp/news/2015/151202_1.pdfPDF

3 AI等自動化による雇用への影響に関しては、独立行政法人経済産業研究所の岩本 晃一上席研究員が先行研究を集めており、フレイ及びオズボーンの研究では、先行研究よりも雇用への影響が過大に評価されていると指摘しいている。

4 Arnts, Gregory and Zierahn「The Risk of Automation for Jobs in OECD Countries A Comparative Analysis」(2016)
https://www.oecd-ilibrary.org/social-issues-migration-health/the-risk-of-automation-for-jobs-in-oecd-countries_5jlz9h56dvq7-en別ウィンドウで開きます

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