総務省トップ > 政策 > 白書 > 30年版 > 業種内垂直統合的なICTプラットフォーム
第1部 特集 人口減少時代のICTによる持続的成長
第3節 市場構造に引き起こされる変化

(1)業種内垂直統合的なICTプラットフォーム

垂直統合的なICTプラットフォームを展開することにより、ICT利活用企業はバリューチェーンの個別段階にとどまらず、企業活動を従来活動していた段階以外にも拡大できることとなる。そのような企業は、業種内の企業にプラットフォームを提供して収益を得るだけでなく、同一業種内のデータを集めることができ、競争上の優位を築くことができる可能性がある。ICTプラットフォームをICT利活用企業が単独で提供することもあるが、一般にICTプラットフォームにおいてはネットワーク効果が生じるため、データや利用者、プラットフォーム上のアプリケーションの量が少なければ利用者の効用は低い。そのため、単独でICTプラットフォームを提供可能なICT利活用企業は、自社で多くのデータや利用者を集めることが可能な大企業に限られる。近年はICT利活用企業とICT企業の連携により、特定業種内のオープンなプラットフォームを構築する事例も見受けられる(図表2-3-2-1)。

図表2-3-2-1 ICT利活用企業とICT企業の連携によるICTプラットフォーム展開の例
(出典)総務省「ICTによるイノベーションと新たなエコノミー形成に関する調査研究」(平成30年)

これらのプラットフォームは開発者向けに開発環境が提供され、サードパーティーがアプリケーションを提供することができる仕組になっている場合が多い。そのようなプラットフォームにおいては、「パートナープログラム」等の名称で開発者・開発会社を囲い込むような戦略がとられているケースも散見される。スマートフォンにおいては、アプリマーケットというプラットフォーム上にアプリケーションが広がることによって多様なサービスが生み出されたが、同様の現象がBtoBの分野においても拡大することが想定される。

業種内垂直統合的なプラットフォームによって新たに登場するサービスとしては、業種におけるバリューチェーンや企業を跨いだ最適化を実現するサービスが想定される。例えば物流であれば、倉庫や運送用車両はそれまで知り合いの企業同士での融通にとどまっていたものが、プラットフォーム参加者間で需給をマッチングすることができるため、業種全体としての最適化が進むこととなる(図表2-3-2-2)。

図表2-3-2-2 物流業内垂直統合的なプラットフォームによる最適化の例
(出典)総務省「ICTによるイノベーションと新たなエコノミー形成に関する調査研究」(平成30年)(平成30年)

また、製造現場においても、工場に導入されている機器のメーカーはさまざまであり、センサー等が組み込まれていても、データの形式等の違いから相互運用性には欠けていた。しかし、プラットフォームを利用することで異なるメーカーの機器同士をつなぐことができ、ラインや工場全体の最適化を図ることができる。また、利用者の使い方がデータ化され記憶されることによって、熟練者のスキルをデジタル化して自動的に再現することも、新たなサービスとして考えられる。



1 一般社団法人Edgecrossコンソーシアムのレギュラー会員以上での入会が必要。

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