総務省トップ > 政策 > 白書 > 30年版 > ソーシャルメディア利用のデメリット
第1部 特集 人口減少時代のICTによる持続的成長
第2節 ICTによる「つながり」の現状

(3)ソーシャルメディア利用のデメリット

ソーシャルメディアの利用により、個人が容易に他人とコミュニケーションを取り合うことができるようになったことで、トラブルが生じ、人間関係を悪化させる可能性もあることに留意が必要である。

ソーシャルメディアを利用することで他者との間に摩擦が生じることは決してまれな事ではない。我が国において、ソーシャルメディアで情報発信を行う利用者のうち、何かしらのトラブルを経験した人々の割合は、23.2%である。これはアメリカ(56.9%)、イギリス(49.2%)、ドイツ(50.0%)と比較すると低い割合である(図表4-2-2-5)。

図表4-2-2-5 ソーシャルメディアの情報発信者が経験したトラブル(複数回答、国際比較)
(出典)総務省「ICTによるインクルージョンの実現に関する調査研究」(2018)
「図表4-2-2-5 ソーシャルメディアの情報発信者が経験したトラブル(複数回答、国際比較)」のExcelはこちらEXCEL / CSVはこちら

トラブルの内容別では、各国とも、最も経験者の割合が高かったのは、「自分の発言が自分の意図とは異なる意味で他人に受け取られてしまった(誤解)」であった。2番目に高い「ネット上で他人と言い合いになったことがある(けんか)」と3番目に高い「自分は軽い冗談のつもりで書き込んだが、他人を傷つけてしまった」を含む上位3つのトラブルは、いずれも発信者自身の書き込みによるコミュニケーションのすれ違いにより生じたトラブルである。この傾向は、調査対象国に共通しており、回答者の割合が高かったトラブルの順位は1位から3位までが一致している。このように、ソーシャルメディアの情報発信者が多く経験したトラブルは、相手から攻撃されたり被害を受けたりすることよりも、自分の発言が異なる意味で取られたり、相手と言い合いになったりする場合である。これらは、互いの顔の見えない、匿名の場合は相手の背景が見えないインターネット特有のコミュニケーションの難しさが原因となっているといえよう。

続く、「自分の意思とは関係なく、自分について他人に公開されてしまった(暴露)」、「自分は匿名のつもりで投稿したが、他人から自分の名前等を公開されてしまった(特定)」はいずれも、自分が望まないのに自身がネットで特定されてしまったもので、次の「他人が自分に成りすまして書き込みをした(なりすまし)」も含めて、ネットでのコミュニケーション特有のトラブルといえよう。

それら以外のトラブルについては、アメリカでは「自分のアカウントが乗っ取られた結果、入金や商品の購入を促す不審なメッセージを他人に送ってしまった」の割合が他国と比較して高いことや、ドイツでは「自分の意思とは関係なく、自分について他人に公開されてしまった(暴露)」の経験がアメリカやイギリスと比較して低い傾向にあるなどの特徴はあるものの、その割合はいずれも10%程度の水準でいずれの国においても低くなっている。

このように、ソーシャルメディア利用によるトラブルの傾向は、国によって多少の順位の違いはあるものの、日本、アメリカ、イギリス、ドイツで共通しており、各国共通の課題である。

さらに深刻な問題としては、ソーシャルメディアの利用によって、さまざまな悪意を持つユーザーとのつながりを得てしまい、犯罪などに巻き込まれる可能性があることが挙げられる。特に、SNSは不特定多数の個人によるコミュニケーションを可能にするサービスであるため、その可能性がより高まる。一例として、警察庁「平成29年におけるSNS等に起因する被害児童の現状と対策について」4によると、SNS5が起因となった犯罪に巻き込まれた児童の数は2008年から2017年までの間に増加傾向にあり、2017年は1,813人で過去最高を記録した。

以上から、日本では、ソーシャルメディア利用のメリットとして、個人間のつながりを創出・強化するよりも情報収集などの役割のほうがより認識されていることが分かった。さらに、ソーシャルメディアの利用においては少なからずコミュニケーションのすれ違いが発生してしまうこと、さらに悪意を持つユーザーとの直接のつながりを得てしまう可能性があることが、留意すべきインターネット上のコミュニケーションにおける課題である。



4 警察庁「平成29年におけるSNS等に起因する被害児童の現状と対策について」(2018)
https://www.npa.go.jp/safetylife/syonen/H29_sns_shiryo.pdfPDF

5 出会い系サイトに起因する事犯の被害児童数はSNSの利用とは対照的に減少傾向にあり、2017年は29人であった。

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