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第1部 特集 人口減少時代のICTによる持続的成長
第4節 ICTのポテンシャルを引き出す組織改革

第4節 ICTのポテンシャルを引き出す組織改革

1 組織変革の必要性

(1)CIO・CDO等の設置による組織改革の必要性

企業におけるAI・IoT等を含むICT等の導入・利活用によるプロセス面・プロダクト面の変革は、経営層が積極的に関与し、トップダウンでの推進体制が整わなければ実現は難しい。実現にあたっては、ICTのポテンシャルを引き出すことのできる組織整備が求められるが、変革の規模が大きく、かつ企業活動の広範にわたるものであればあるほど、経営層のコミットと変革に責任を持つリーダーが必要になる。過去の事例を見ても、例えば、英国の公共放送であるBBCのICT変革事業であるDigital Media Initiativeは、失敗した要因の一つとして当該事業を主導するリーダーの不在が挙げられている。1

トップダウンな組織改革の一例として、事業活動におけるICTの導入・利活用にミッションを持つCIO(最高情報責任者、Chief Information Officer)やCDO(最高デジタル責任者、Chief Digital Officer)を設置の上、その直属の組織によりICTの導入・利活用を進める動きがみられる。我が国においては、企業におけるCIOやCDOを定義する法律は存在しないが、政府CIOポータルにおけるCIOの役割定義は「企業グループ全体のIT活用を俯瞰し、業務、ISの構造と共に、企業グループ全体のIT部門の機能と役割を変革し、企業の“全体最適化”実現に貢献する。」2とされている。同様に、政府CIOポータルにおいては「全社横断のビジネス変革」をミッションとするChief Innovation Officerや、「情報活用による経営戦略の創造」をミッションとするChief Intelligence Officerも定義されているが、企業における実装ではこれらのミッションをCIOではなくCDOが担っている事例が見受けられる。

以降では、CIO・CDOの設置等による組織改革が、企業におけるICT導入において果たす役割について説明する。企業が新たにICTを導入し、利活用を進めるにあたっては例えば以下のような課題がある。

① 業務の一部へICTを導入することに対する現場部門の反発

ICTの導入により現在担当している業務に影響がある部門の社員からは、自身の業務プロセスが変わってしまうこと対する不安がある。また、失業への危機感により、会社への不信感が高まったり、ICT導入に対する反発が起きたりする可能性がある。

① 現場部門と情報システム部門の調整・役割分担

ICTの導入においては既存の業務プロセスの確認・整理が必要であり、当該作業は理解の深い現場部門の社員が担当することになる。一方で、導入するICTの選定や社内環境に合わせたチューニングは情報システム部門が担当するため、両部門の役割分担・調整が必要である。

CIO・CDOは全社的なICT戦略を策定するとともに、その目標を明確化する。この目標について、適切なメッセージを発信することによりステークホルダーの理解を得ることがCIO・CDOの役割の一つである。また、現場部門とシステム部門の役割分担も、全社的なICT戦略に基づいてトップダウンに明確化されることが期待される(図表3-4-1-1)。

図表3-4-1-1 組織改革(CIO・CDOの設置等)がICT導入にあたって果たす役割
(出典)総務省「ICTによるイノベーションと新たなエコノミー形成に関する調査研究」(平成30年)

今後、CIO・CDOの設置等による組織改革によって進むことが期待されるICTとして、RPAの導入が挙げられる。日本RPA協会によれば、RPAとは「これまで人間のみが対応可能と想定されていた作業、もしくはより高度な作業を人間に代わって実施できるルールエンジンやAI、機械学習等を含む認知技術を活用した業務を代行・代替する取り組み」3と説明されており、ICTによる生産性向上手段として注目が高まっている、定型業務をRPAに任せることにより、人間は人間にしかできない、付加価値が高い、創造性のある業務に時間を割くことができるようになることが期待されている。

RPAへの期待が高まる一方で、これまで省力化が進んでこなかった業務においても省力化が大きく進展し、既存要因の配置転換や削減につながる可能性があることから、上記①、②の課題は深刻になる可能性がある。そのため、CIO・CDOを核とした組織改革により、現場・システム部門の双方の理解を得ながらもトップダウンに進めていくことが求められる。RPAが導入されることにより、定型業務を担当していた社員をより付加価値の高い業務や成長分野の業務に割り振ることができるようになり、継続的な組織改革が実現することが期待される。前述のような改革を現場や情報システム部門の社員・統括責任者が進めることは、特に自組織が部分最適に陥っている場合は難しいため、経営層の関与の元、CIO・CDOとその配下組織が全社横断で進めていくことが望ましい。



1 英国会計検査院 ” British Broadcasting CorporationDigital Media Initiative” , 2014

2 政府CIOポータルHP:https://cio.go.jp/what別ウィンドウで開きます

3 日本RPA協会HP:http://rpa-japan.com/別ウィンドウで開きます

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