総務省トップ > 政策 > 白書 > 30年版 > プラットフォーム化による消費者視点の取り込み
第1部 特集 人口減少時代のICTによる持続的成長
第4節 ICTによる個人需要の喚起

2 プラットフォーム化と消費者視点の重要性

(1)プラットフォーム化による消費者視点の取り込み

IoT化が進むことによって、これまでインターネットに接続されていなかった人やモノのデータが集まる。結果として莫大なデータが集まるが、人間による分析では処理できるデータ量に限界がある。しかし、AIの利用が進むことによって、集まったデータをAIが分析し、人による理解・解釈が可能な形式にレポーティング(見える化)される。以降では、前述の流れにおいてデータが集まり見える化される場所のことをプラットフォームと表現する(図表2-4-2-1)。プラットフォームではユーザーの消費行動や属性と、商品・サービスの稼働状況を分析することで、需給関係が「見える化」され、個々のユーザーのニーズを把握するとともに、そのニーズに対応することが可能になる。

図表2-4-2-1 プラットフォームのイメージ図
(出典)総務省「ICTによるイノベーションと新たなエコノミー形成に関する調査研究」(平成30年)

例えばアパレル業界においては、ユーザーがファッションスナップを投稿可能なアプリを作成し、写真に写っているアパレル製品をそのアプリを通じて購入可能にしている事例が存在する。ユーザーとの接点を増やすとともに、アプリというプラットフォームを通じてユーザーの属性や嗜好、消費活動を見える化している事例だといえる。これらの情報が見える化されることによって、ユーザーの嗜好に合うと判断されたアイテムを衣替えのタイミングでリコメンドすることも可能になり、ユーザーの消費促進することが期待される。また、製造業においては、工場におけるAI・IoT の利用が進展することにより、サプライチェーンが統合化され製造スピードを確保したまま多品種の製品を作り分けることが可能になる。その結果として、顧客一人一人のユーザーニーズに即して製品を作成する「マスカスタマイゼーション」が進むことが実現することが期待されている。先ほどのアパレル業界の例であれば、ユーザーの嗜好に応じて既存製品からリコメンドすることから進めて、ユーザー専用にカスタマイズした製品を提案・販売できるようになることが想定される。

アンケートの結果を確認すると、国内企業についてはICTの導入が進んでいる企業のほうが、進んでない企業と比較してユーザー視点を取り入れるための取組を実施している割合が高いことがわかる(図表2-4-2-2)。

図表2-4-2-2 ICTの導入状況1別のユーザー視点を取り入れる取組の実施状況(国内企業)
(出典)総務省「ICTによるイノベーションと新たなエコノミー形成に関する調査研究」(平成30年)
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ユーザー視点を取り入れるための取組の内容に関しては、全体としてはアンケートの実施や他社の調査結果の活用等の回答率が高い。ICTの導入状況別にみると、ICTの導入が進んでいる企業の方がユーザー視点を取り入れることに積極的であることが窺える。加えてICTの導入に積極的な企業は、SNSやブログ等のUGC(User Generated Contents:ユーザーによって作成されたコンテンツのこと)の分析や、センサー等のデータの分析からユーザー視点を取り入れることに対しても積極的である。(図表2-4-2-3)。ICTの導入が進んでいる企業のほうがユーザーニーズの取入れに熱心であること、先進的な方法を積極的に取り入れていることから、今後のプラットフォームを用いたユーザーニーズの把握においてもそれらの企業が積極的に取り組んでいくことが推測される。

図表2-4-2-3 ICTの導入状況別のユーザー視点を取り入れる取組内容(国内企業)
(出典)総務省「ICTによるイノベーションと新たなエコノミー形成に関する調査研究」(平成30年)
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ユーザー視点を取り入れる取り組みの実施状況はICTの導入状況によって差がみられたものの、取り入れたユーザー視点の活用状況については大きな差は見られない。全体でみると、活用はできているものの十分ではないという回答と、活用できていないという回答の合計が83.0%に達しており、国内企業におけるユーザー視点の活用はいまだ途上であると言える(図表2-4-2-4)。

図表2-4-2-4 ICTの導入状況別のユーザー視点の活用状況(国内企業)
(出典)総務省「ICTによるイノベーションと新たなエコノミー形成に関する調査研究」(平成30年)
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アンケートにおいて、ICTを積極的に導入しており、かつユーザーニーズを取り入れる取組を実施している回答者と、ICTを導入しておらず、かつユーザーニーズを取り入れる取組を実施していない回答者の過去3年間の売上高、営業利益の伸び率を比較したところ、前者の方がどちらの経営指標も伸び率が高いことがわかる(図表2-4-2-5)。

図表2-4-2-5 ICTの導入状況とユーザーニーズを取り入れる取組の実施状況と売上・営業利益の過去3年間の伸び率の比較(国内企業)
(出典)総務省「ICTによるイノベーションと新たなエコノミー形成に関する調査研究」(平成30年)
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1 ICTの導入状況は、14の選択肢から構成されるICTの導入状況を問う設問における項目選択数を指標として利用した。具体的には選択肢を4つ以上選択した企業を「高導入」、1〜3つ選択した企業を「導入」それ以外の企業を「導入なし」と分類した。

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