総務省トップ > 政策 > 白書 > 30年版 > シェアリングエコノミー概観
第1部 特集 人口減少時代のICTによる持続的成長
第5節 シェアリングエコノミーの持つ可能性

1 シェアリングエコノミー概観

AI・IoTに代表されるICTの進展によって商品の利用状況を把握し続けることが可能になり、同時に商品を売らずに商品の利用権のみを一定期間提供することも可能になった1。また、第4節で述べたICTプラットフォームによる需要と供給の「見える化」が進むことによって、商品・サービスを保有する個人と利用したい個人をマッチングすることが可能になり、個人も供給者として市場に参加することが容易になってきた。加えて、音楽や動画等におけるサブスクリプション型サービスへの移行に象徴されるように、商品・サービスの「所有」から「利用」へと個人の意識が変化しており、コンテンツだけではなく形あるモノについてもシェアリングが受け入れられるようになってきた。

このような状況からシェアリングエコノミーと呼ばれる新たな経済活動が拡大している。シェアリングエコノミーという言葉に対して世界的にコンセンサスを得た定義はない2が、内閣官房シェアリングエコノミー促進室においては、「個人等が保有する活用可能な資産等(スキルや時間等の無形のものを含む。)を、インターネット上のマッチングプラットフォームを介して他の個人等も利用可能とする経済活性化活動」3と説明している。

我が国では、内閣官房IT総合戦略室において、2016年7月から「シェアリングエコノミー検討会議」が開催され、シェアリングエコノミーの健全な発展に向け、民間団体等による自主的なルール整備を促すモデルガイドラインなどを盛り込んだ「シェアリングエコノミー推進プログラム」が策定された。民間の動きとして、2015年12月にはシェアリングエコノミーの普及や発展を目的に、一般社団法人シェアリングエコノミー協会(以下、シェアリングエコノミー協会)が設立された。設立当初は32社であったシェアリングエコノミー協会の会員数は、2017年には200社以上に増え、我が国においてもシェアリングエコノミーが浸透するようになっていることが窺える。シェアリングエコノミー協会においては、シェアの対象となるものに着目し、以下の5分類にサービスを分類している(図表2-5-1-1)。

図表2-5-1-1 シェアリングエコノミーの5類型
(出典)総務省「ICTによるイノベーションと新たなエコノミー形成に関する調査研究」(平成30年)

空間や移動をシェアするサービスに提供者として参加するには自身で物件や自動車等の資産を有している必要がある。一方でスキルをシェアするサービスに関してはそれらの資産を有しておく必要はなく、提供者として参加するユーザーの障壁は低いといえる。プラットフォーム型のビジネスにおいては参加者が増えれば増えるほど、参加者が指数関数的に増加することが期待されるため、参加の際の障壁の低さは重要である。2012年以降、スキルをシェアするサービスが牽引する形でシェアリングサービスを開始する企業が増加している(図表2-5-1-2

図表2-5-1-2 サービスを開始したシェアリングサービスの数の推移
(出典)総務省「ICTによるイノベーションと新たなエコノミー形成に関する調査研究」(平成30年)
「図表2-5-1-2 サービスを開始したシェアリングサービスの数の推移」のExcelはこちらEXCEL / CSVはこちら

シェアリングエコノミーは国際的にも普及が進んでおり4、特に、交通分野において、様々な事例が導入されるようになって来ている。交通分野におけるシェアリングエコノミーは、Mobility as a Service(MaaS)という概念とともに、さらに広まりを見せている。「MaaS」は、フィンランドの技術庁と運輸通信省が助成し、世界で初めてとなるモビリティサービスのオープンイノベーションプラットフォームの開発のためにつくられたプロジェクトで採用された概念であり5、ヘルシンキで2014年に開催された「ITS European Congress」や、フランスのボルドーで2015年10月に開催された「ITS World Congress」などを通じて世界中に知られるようになってきた。

日本の自動車産業も、例えば、トヨタ自動車が2016年10月に、既存のトヨタスマートセンター、トヨタビッグデータセンター、金融・決済センターの上位に、モビリティサービスに必要とされる様々な機能を備えた、モビリティサービス・プラットフォーム(MSPF)の構築を推進することを発表するなど、交通分野におけるシェアリングエコノミーに積極的に関与しようとしている。



1 國領二郎(2017)「トレーサビリティとシェアリング エコノミーの進化」 研究・イノベーション学会誌『研究 技術 計画』、第32巻、第2号(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsrpim/32/2/32_105/_pdfPDF

2 例えば欧州委員会(European Commission)では、シェアリングエコノミーと類似する概念をCollaborative Economyと称している。

3 政府CIOポータル シェアリングエコノミー促進室HP:https://cio.go.jp/share-eco-center/別ウィンドウで開きます

4 EU加盟国内の国民を対象として行われる世論調査であるEurobarometer(2016)「The use of collaborative platforms」(http://ec.europa.eu/commfrontoffice/publicopinion/index.cfm/ResultDoc/download/DocumentKy/72885別ウィンドウで開きます)によると、調査対象者全体の52%がcollaborative economyを認知しており、17%がサービスを利用したことがあるという結果が出ている。

5 地域SNS研究会(2017)「フィンランドにおけるMaaSのはじまりと発展」(http://www.local-socio.net/2017/04/finlandmaas.html別ウィンドウで開きます

テキスト形式のファイルはこちら

ページトップへ戻る