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第1部 特集 人口減少時代のICTによる持続的成長
第4節 日米のICTとイノベーションの現状

(2)イノベーション実現度の日米比較

日米企業へのアンケート結果を基に、日米の大企業5での直近3年間(組織イノベーション及びプロセス・イノベーションは3年以上前の取組も含む6)のイノベーションの実現度7を比較すると、いずれのイノベーションにおいても米国企業の方が多いことがわかる(図表 1-4-1-2)。組織イノベーションやプロセス・イノベーションについては、3年以上前の実現度は、米国企業(組織6.7、プロセス8.2)が日本企業(組織3.4、プロセス3.4)よりも高く、直近3年間の実現度については、米国企業(組織1.9、プロセス1.3)は日本(組織2.9、プロセス3.4)よりも低くなっている。これは、米国企業は3年以上前に両イノベーションを概ね実現済みである一方、日本企業は直近3年間に取り組んでいる企業が未だ一定数あることを示している。次に、マーケティング・イノベーションとプロダクト・イノベーションについては、日本企業では特にマーケティング・イノベーションが遅れている。今後、日本企業が成長していくためには、これらの取組をより一層加速させていくことが求められる。

図表1-4-1-2 日米企業のイノベーションの実現度
(出典)総務省「我が国のICTの現状に関する調査研究」(平成30年)
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次に、アンケート結果から、企業におけるICT利活用8と全イノベーションの実現数9が平均(ICT利活用:日本企業8.8、米国企業9.1、全イノベーション:日本企業11.4、米国企業12.4)以上を(高)、平均未満を(低)グループに分類し、3年前と比べて営業利益が増加した企業の割合を比較すると、日本ではICTを利活用しているほど、また、イノベーションの実現が多いほど、営業利益が増加した企業の割合が高くなっている(図表1-4-1-3)。特に、日本では全イノベーションの高低よりもICT利活用の高低で営業利益が増加した企業の割合に顕著な差が生じていることからも、ICT利活用の重要性がわかる。

図表1-4-1-3 日米企業のICT利活用、イノベーションと営業利益増加との関係
(出典)総務省「我が国のICTの現状に関する調査研究」(平成30年)
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5 「製造業」、「情報通信業」、「エネルギー・インフラ業」は常勤従業員数が300人以上、「商業・流通業」、「サービス業」は常勤従業員数が100人以上の企業を大企業とした。
中小企業からもイノベーションは起こりうるが、大企業と比較して業務プロセスや組織形態が多様であり1社で完結していないことも多いため、グラフィカルモデリング分析の枠組みになじみづらい点があることから、今回は大企業を対象に分析を行っている。なお、米国においては、大企業のプロダクト・イノベーションであってもスタートアップ企業を買収したことによるものもあること、日米でスタートアップ企業へのファイナンスの金額が異なることにも留意が必要と考えられる。

6 各イノベーションとも直近3年間における実現を確認し、プロセス・イノベーションと組織イノベーションについては、川上淳之・淺羽茂(2015)「組織改革は生産性に影響するか?」経済産業研究所, RIETI Discussion Paper Series, 15-J-048,によると取組から効果の発現まで3年程度の期間を要することから、3年以上前における実現も確認した。

7 イノベーションの実現数をアンケートにて尋ね4類型それぞれ10点満点に換算。プロダクト・イノベーションは製品とサービスに分け、それぞれの実現数を確認した(5つ以上の場合は5点に換算)。プロセス・イノベーションは生産工程・配送方法・それらを支援する活動それぞれについて実現有無を確認した。組織イノベーションは企業務慣行(4項目)、職場組織(8項目)、社外関係(8項目)について実現有無を確認した。マーケティング・イノベーションはデザイン・販売経路・販売促進方法・価格設定方法それぞれについて実現有無を確認した。

8 ICT端末(パソコン、タブレット、スマホ、IoT端末)、ネットワーク(専用線、一般固定回線、無線回線)、社内向けサービス(グループウェア、社内ポータルサイト、社外からのモバイル端末アクセス)、社外向けサービス(外部向けHPの開設、外部向けSNSアカウントの開設、SNSで顧客の意見や反応の収集・活用)、クラウド(SaaS、PaaS、IaaS)の利用状況(全16項目)について確認した。

9 プロダクト・イノベーション、プロセス・イノベーション、組織イノベーション、マーケティング・イノベーションの直近3年間における実現数の合計

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