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第1部 特集 人口減少時代のICTによる持続的成長
第4節 ICTによる多様な人材の労働参加促進

(2)テレワークによる働きやすい職場の実現

ア テレワークの導入と働きやすい環境の実現

時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方であるテレワークは、企業にとっても従業員にとっても様々なメリットがある(図表4-4-3-5)。企業側には、産業競争力の維持・向上や人材の離職抑制・就労継続支援の創出などの効果が期待でき、従業員側にはワーク・ライフ・バランスの向上や仕事全体の満足度向上と労働意欲の向上などの効果が期待できる。

図表4-4-3-5 テレワークのメリット
(出典)厚生労働省「テレワークではじめる働き方改革 テレワークの導入・運用ガイドブック」(2016)

通信利用動向調査によると、企業によるテレワーク導入目的として最も割合が高かったのは「勤務者の移動時間の短縮」(54.1%)であった(図表4-4-3-6)。これは2016年の結果と比較すると、10%高い数値である。そのほかにも、2016年の結果と比較して2017年の回答率が高かった項目は「勤務者にゆとりと健康的な生活の実現」、「通勤弱者への対応」、「優秀な人材の雇用確保」と、いずれも従業員の働きやすい職場の実現に関する項目である。これは企業が働き方改革に取り組む中でより従業員の働きやすさと、人手不足が見込まれる中での従業員の雇用継続のために、テレワークを導入する企業が増えつつあるためと考えられる。

図表4-4-3-6 テレワークの導入目的(企業)
(出典)総務省「通信利用動向調査」(各年)より作成
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2017年の調査では、50.1%の企業が「労働生産性の向上」をテレワークの導入目的として挙げている。労働生産性向上を目的としてテレワークを導入した企業のうち、82.1%の企業がテレワーク導入により目的とする効果を得たと回答したことから、テレワーク導入は労働生産性向上に効果があると考えられる(図表4-4-3-7)。

図表4-4-3-7 労働生産性向上目的でテレワークを導入した企業による効果の認識
(出典)総務省「平成29年通信利用動向調査」(2018)より作成
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続いて、就労者が感じているテレワークのメリットについて、調査結果を踏まえて考察する。テレワークの利用理由として、利用者が挙げるのは、通勤時間・移動の削減が71.5%、自由に使える時間の増加が68.1%と多かった。性別年代別に見た場合、20代の女性で、52.5%が育児・子育てと仕事の両立と回答しており、子育て世代の女性の社会的な活躍の促進のためにも、テレワークの導入が求められることが明らかになった(図表4-4-3-8)。

図表4-4-3-8 テレワークを利用する/したいと考える理由(複数回答)
(出典)総務省「ICTによるインクルージョンの実現に関する調査研究」(2018)
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イ テレワーク利用の課題

テレワークは、労働者の働きやすさや生産性を向上させるとされるものの、まだ実施には課題もある。テレワークを利用していないが、利用したいという希望を持つ雇用者を対象にテレワークを利用する上での課題について尋ねたところ、「会社のルールが整備されていない」(49.6%)、「テレワークの環境が社会的に整備されていない」(46.1%)という環境整備に関する回答が最も多かった(図表4-4-3-9)。我が国においては、テレワークの実施に際してサテライトオフィスのような社会的な環境整備や、企業においてテレワークを認めていないこと、あるいは企業が定めるテレワークの実施ルールが利用者のニーズに合わず使いにくいものになっていることなどが、テレワークを利用したいと希望する人がテレワークをしない理由になっていると考えられる。

図表4-4-3-9 テレワーク実施の課題(複数回答、テレワーク実施希望者)
(出典)総務省「ICTによるインクルージョンの実現に関する調査研究」(2018)
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テレワークは職場の同僚や上司と離れた場所で仕事をするため、オフィスで働く場合に比べて、何気ない雑談などの対面コミュニケーションの機会がないことにより孤立感を感じる可能性が考えられるが、調査結果では孤立感を感じる従業員の割合は15.5%であった。

テレワーカーの職場とのコミュニケーションについては、テレワーカーのコミュニケーション不足を防ぐために、テレワークと併せてビジネスICTツールや制度の導入を行っている企業が87.5%ある(図表4-4-3-10)。導入しているという回答の割合が最も高かったのは「ビデオ会議システムの導入」(49.0%)で、その後に「チャットの導入」(39.6%)が続いた。企業側として、まずは、音声や顔の見えるコミュニケーションツールを導入していることがわかる。ビジネスICTツール以外の対応としては、「自社によるサテライトオフィスの整備」が24.0%あり、テレワークと組み合わせることでの効果を期待していることが分かる。

テレワークの際の社内コミュニケーションについては、現実の職場でも重要となる同僚や上司との情報共有をできる限り同程度に行えるような環境整備が重要である。

図表4-4-3-10 テレワーカーのコミュニケーション確保のための対策(複数回答、企業)
(出典)総務省「ICTによるイノベーションと新たなエコノミー形成に関する調査研究」(2018)
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ウ サテライトオフィス

自宅以外でテレワークを行える場所としてのサテライトオフィスに着目する。サテライトオフィスには、契約形態によって専用型と共用型に分かれる5図表4-4-3-11)。

図表4-4-3-11 サテライトオフィスの形態
(出典)総務省「ICTによるインクルージョンの実現に関する調査研究」(2018)

専用型は、自社・自社グループ専用として利用され、従業員が営業活動で移動中、あるいは出張中である場合などに立ち寄って就業できるオフィススペースである。事業所とは別にスペースを設置する方法と、各地の事業所内にテレワーク専用のスペースを設ける方法がある。

共用型は、複数の企業がシェアして利用するオフィススペースである。自社以外を含めて利用者がフリーアドレス形式で使用するものや、作業場所が壁などで仕切られていないオープンスペース型のものがある。

サテライトオフィスは、周囲に同じ企業の社員がいることによるコミュニケーション不足の解消や、専用の場所で仕事をすることで集中力をより高めることができるなど、在宅勤務とは異なる特徴がある。

図表4-4-3-1のとおり、企業のサテライトオフィス導入率は、在宅勤務やモバイルワークと比較すると低い。しかし、総務省の「『サライトオフィス』設置に係る民間企業等のニーズ調査」6によると、サテライトオフィスを既に導入している企業は850社(回答企業(10,955社)の7.8%)、導入検討中が459社(4.2%)、検討していないが興味はある企業が 1,721社(15.7%)であった(図表4-4-3-12)。サテライトオフィスの導入はまだ7.8%に過ぎないが、検討中または興味はあるという導入に前向きな企業が19.9%あることから、今後導入が急速に進む可能性がある。

図表4-4-3-12 サテライトオフィスの導入状況
(出典)総務省「サテライトオフィス」設置に係る民間企業等のニーズ調査」(2017)より作成
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5 厚生労働省「テレワークではじめる働き方改革 テレワークの導入・運用ガイドブック」(2016)

6 総務省「『サテライトオフィス』設置に係る民間企業等のニーズ調査」(2017)。同調査では、2017年1月〜2月にかけて、三大都市圏に所在する企業60,000社を対象に郵送等により調査し、10,955社から有効回答を得た。

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