総務省トップ > 政策 > 白書 > 30年版 > 金融分野におけるAPI公開
第1部 特集 人口減少時代のICTによる持続的成長
第3節 組織を「つなぐ」ことで生産性向上をもたらすICT

(4)金融分野におけるAPI公開

高度なセキュリティを求められる銀行を始めとする金融機関においても銀行法改正によるAPI公開の動きがある。未来投資戦略2017においては、「銀行法等の一部を改正する法律を施行した上で、APIを提供する銀行の数や銀行が電子決済等代行業者と契約した数等についてフォローアップするとともに、オープンAPI検討会等において、オープンAPIの推進に係る更なる課題を検討する」こととし、「(2020年6月まで)に、80行程度以上の銀行におけるオープンAPIの導入」をKPIに設定した。実際に2017年5月には「銀行法の一部を改正する法律」(以降、改正銀行法)が成立し、同年6月に公布され、改正銀行法施行後2年までに、銀行等はオープンAPIに係る体制整備に努めることとされている。2015年12月の金融審議会・決済業務等の高度化に関するワーキング・グループ報告の提言を踏まえ、2016年10月に「オープンAPIのあり方に関する検討会」が全国銀行協会を事務局として設置され、FinTech事業者や金融機関、関係省庁、有識者等との連携の下で、2017年6月にはAPI仕様の開発原則・開発標準・電文仕様標準を内容とする報告書がとりまとめられた。今後は当該報告書・電文仕様標準に従って銀行のオープンAPI化が進むことが期待される。

金融機関においてAPI公開が進められてきた背景には全世界的なFinTech事業者の台頭がある。家計簿アプリや貯金アプリ等のFinTechサービスは、ユーザの利便性を飛躍的に向上させるものであり、今後も新たなサービスの登場が期待される。しかし、FinTech企業と金融機関の連携には利用者保護やオープンイノベーションの促進の面で課題があった。金融機関がAPI公開を公開していない場合、FinTech事業者がユーザーの金融機関のサービスへのログインIDやパスワードを取得し、代理でログインして情報を取得するため、利用者保護の観点から課題がある。また、FinTech事業者が代理ユーザとしてログインした後は、金融機関のウェブページの情報をウェブスクレイピングという技術によって取得する。この技術はウェブページの構造をもとに情報を読み取るため、金融機関ごとに別のプログラムが必要になる、ウェブページ構造が変わるたびにプログラムの修正が必要になる、という非効率性が存在し、オープンイノベーションが進みにくい状況であった。

金融機関とFinTech事業者のAPI接続が進むことによって、利用者は金融機関におけるID等の情報をFinTech事業者に開示することなく、FinTechサービスを利用することができるようになり、利用者保護上の懸念が解消される。また、金融機関や関係者で連携してとりまとめた標準規格に則りAPI公開を進めることで、FinTech企業と金融機関との連携の効率性が向上し、オープンイノベーションが促進されることが期待されている(図表3-3-1-9)。

図表3-3-1-9 金融機関のAPI公開が求められる背景
(出典)金融庁「平成28年度金融レポート」

アンケート結果においても、国内の金融事業者とそれ以外の事業者ではAPIの認知・公開状況に違いがあることが確認された。APIの認知状況には違いがみられないが、APIを公開(又は公開を検討)している事業者の割合は3、金融事業者が25.5%に上るのに対し、それ以外の事業者は13.9%であり2倍程度差が開いている(図表3-3-1-10)。

図表3-3-1-10 国内金融事業者とそれ以外の事業者のAPI認知・公開状況の比較
「図表3-3-1-10 国内金融事業者とそれ以外の事業者のAPI認知・公開状況の比較」のExcelはこちらEXCEL / CSVはこちら

金融機関におけるAPI公開は全世界的に進展している。前述のProgrammable Webによると、金融系APIの新規登録数は2015年の1年間で216件だったが、2016年には1年間で424件登録されており4、金融系APIの公開ペースはこの1年で速まっていることがわかる。実際に国内外の金融機関においてはネットバンクや地方銀行等にとどまらず、都市銀行においてもAPIを公開に向けた動きがある(図表3-3-1-11)。

図表3-3-1-11 国内外の金融機関におけるAPI公開5に向けた動きの例
(出典)総務省「ICTによるイノベーションと新たなエコノミー形成に関する調査研究」(平成30年)


3 「既に公開している」「今後公開していることを検討している」「公開について検討している」の回答率の合計

4 Programmable Web HP:https://www.programmableweb.com/news/financial-apis-have-seen-two-growth-spikes/research/2017/08/09別ウィンドウで開きます

5 APIの公開範囲はさまざま(特定のパートナー企業にのみ開放する、すべての利用者に開放する等)であるが、この表においては特定のパートナー企業にAPIを開放している例も含めている。

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