総務省トップ > 政策 > 白書 > 30年版 > 消費者視点に基づく新製品・サービス提供のための異業種連携
第1部 特集 人口減少時代のICTによる持続的成長
第4節 ICTによる個人需要の喚起

(2)消費者視点に基づく新製品・サービス提供のための異業種連携

前述のような消費者のニーズを軸とした製品・サービス開発においては、これまでにないような製品やサービスが求められる可能性があるため、個社や個別の業種では提供が難しい場合が存在する。そのため、バリューチェーンの段階や業種を越えて、企業の活動が統合化される動きも生じ、異業種協業などの新たなエコシステムの形成につながっていく。

AI・IoTの進展により異業種協業の動きがみられる分野の例として、スマートホーム分野が挙げられる。スマートホームにおいてはAIスピーカーやスマートフォンをコアとしてスマート家電やスマートメーター、自動車等、家庭のモノがインターネットに接続されている。それらのデータがプラットフォームに蓄積されることによって、ニーズの見える化が進むことが想定される。この状況において、例えば冷蔵庫の在庫状況やそれまでの消費動向から、生鮮食品の購入を提案し、ユーザーが購入した場合には30分以内に配送するサービスを考える。この場合、冷蔵庫の中身のデータを持つ家電メーカーだけではサービスの実現が困難であるが、小売事業者や物流事業者と連携して対応することによって実現可能性が高まる(図表2-4-2-6)。

図表2-4-2-6 スマートホーム分野における異業種連携の例
(出典)総務省「ICTによるイノベーションと新たなエコノミー形成に関する調査研究」(平成30年)

このようなユーザーニーズ起点の新たな製品・サービスを提供するための異業種連携を進めるための取組の一例として、業種横断の業界団体を設立することが挙げられる。実際に、国内におけるスマートホーム分野での異業種連携を進めるアライアンスとして、2017年7月に「コネクティッドホーム アライアンス」が設立された2。このアライアンスには、住宅・不動産等の住環境を提供する事業者と電機メーカーやICT企業、金融機関や放送事業者等の生活サービス提供事業者等、幅広い業種の事業者が参加している。発足時参加企業は30社だったが、2018年2月5日時点で101社にまで拡大していることから、スマートホーム分野における異業種連携志向の高まりがわかる。同様の取組はスマートホーム以外の分野でも見受けられ、旅行代理店と運輸事業者や物流事業者、小売事業者が連携して、海外向けのデジタルマーケティング事業を展開する合弁会社を設立した事例3も存在する。このように、AI・IoTの進展に伴い、ユーザーと、ユーザーが存在する「場」のモノの状況が「見える化」されるにつれて、ニーズに基づく新しいサービスの提供のためその「場」に関わるプレーヤーの異業種連携が進むことが想定される。

アンケートの結果を確認すると、ICTの導入が進んでいる企業の方が今後の企業活動において重視する社外との協業・連携体制があると回答している。ICTの導入に積極的な企業において、社外との協業・連携がより一層強化されていくことが示唆される(図表2-4-2-7)。

図表2-4-2-7 今後特に重視する他社との協業・連携体制の有無(国内企業)
(出典)総務省「ICTによるイノベーションと新たなエコノミー形成に関する調査研究」(平成30年)
「図表2-4-2-7 今後特に重視する他社との協業・連携体制の有無(国内企業)」のExcelはこちらEXCEL / CSVはこちら

次に、今後特に重視する他社との協業・連携体制があると回答した事業者について、重視する協業・連携体制の内容を確認する。回答者全体でみると、現在内製化している業務をアウトソーシングすることの回答率が高く、ICTの導入が進んでいる企業ではとりわけ高くなっている。また、既に協業・連携している事業者との連携に対する回答率はICTの導入状況とあまり関係がない一方で、異業種との連携に関しては、ICTの導入が進んでいる企業の方がそうではない企業と比較して重視している(図表2-4-2-8)。ICTの導入が進んでいる企業においては、業務の内製化よりも異業種連携が進んでいくことが期待される。

図表2-4-2-8 今後特に重視する他社との協業・連携体制(国内企業)4
(出典)総務省「ICTによるイノベーションと新たなエコノミー形成に関する調査研究」(平成30年)
「図表2-4-2-8 今後特に重視する他社との協業・連携体制(国内企業)」のExcelはこちらEXCEL / CSVはこちら


2 一般社団法人コネクティッドホーム アライアンス HP:https://www.connected-home.jp/別ウィンドウで開きます

3 株式会社Fun Japan Communications HP:https://fj-com.co.jp/company/別ウィンドウで開きます

4 ICT未導入企業は15社と少ないため、全体に含めている。

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