総務省トップ > 政策 > 白書 > 30年版 > リカレント教育に役立つICT
第1部 特集 人口減少時代のICTによる持続的成長
第5節 ICTの進化によるこれからのしごと

(3)リカレント教育に役立つICT

教育分野のICTについては、近年、Education(教育)とTechnology(技術)をかけ合わせたEdTech(エドテック/エデュテックとも)という造語で知られるように、様々なものが開発されるようになってきている。

EdTechの中でも最近着目されるようになったもののひとつが、Massive Open Online Course(MOOC、ムーク)である。MOOCは、インターネット上で誰もが無料で受講できる大規模な開かれた講義である。MOOCでは、オンラインの講義によって学習者は自分の都合の良い時間に受講できるだけでなく、試験やレポートなどもオンラインで実施することで理解の度合いを測ることが可能になっている。また、ディスカッション可能な掲示板などもあり、学習者がオンラインで疑問を解消できるようになっている。全てのプログラムを終了し、一定の条件を満たしていれば講座提供者が発行する修了証が発行される。2012年にアメリカで始まったMOOCの学習者は世界で9,400万人以上と言われている。日本でも、2013年に一般社団法人日本オープンオンライン教育推進協議会(JMOOC)が設立され、日本語によるMOOCの提供及び普及拡大が進められている。

一般社団法人日本オープンオンライン教育推進協議会(JMOOC)は、日本語によるMOOCの提供及び普及拡大を目的に2013年に設立された。JMOOCでは、JMOOC会員である大学および企業、学会等の団体が提供する本格的なオンライン講義を公開し、誰もが無料で受講できる教育サービスを提供している。JMOOCには、会員企業が提供する複数の講座配信プラットフォーム(gacco(ドコモgacco)、OLJ(ネットラーニング)、OUJMOOC(放送大学)、Fisdom(富士通))があり、JMOOCサイトはポータルサイトの役割を果たしており、全ての講座を閲覧、検索することができる。

図表4-5-3-8 JMOOCのウェブサイト
(出典)JMOOCウェブサイト(https://www.jmooc.jp/別ウィンドウで開きます

JMOOCの学習は1週間が基本的な学習の単位であり、1週間で講義が5本から10本公開される。各講義は10分程度の動画で、学習後に確認のための小テストが提示される。1週間の学習が終わると課題が提示され、期限内に提出が求められる。これを4週繰り返し、最後に総合課題を提出し、週ごとの課題と総合課題の全体評価が修了条件を満たしていた場合に修了証が発行される。

他の受講生と対面で議論を深めたい場合は、掲示板でミートアップと呼ばれる自主勉強会を企画し、他の受講生に呼びかけて集まったり、他の受講生が企画するミートアップに参加することも可能である。一部の講座では、講義映像に登場する講師に、直接教えてもらえる対面学習コースも用意されている。当該授業では、オンライン授業(MOOC)で講義動画の視聴や課題提出により基本的な内容を学び、知識を蓄積し、その後、対面授業における講師や受講生同士の議論を通じて理解をより深め、応用力を養うことが可能である。

SkypeやGoogleハングアウト等のビデオチャットによる個別のオンライン教育は、従来、英会話で使われることが多かった。ビデオチャットを活用することで教師とマンツーマンで話すことが可能になり、教室における受講と同様に質問をリアルタイムに教師に投げかけることができる。教師の都合にもよるが、基本的には自分の都合に合わせて受講することが可能になっている。最近では、プログラミング教育の分野でもこうしたリアルタイムのオンライン教育が活用されるようになっている。

録画した授業を視聴する形式のオンライン教育は、自分の都合の良い時間に受講できるというメリットがある。英語、会計、受験勉強、プログラミングなど様々なものが提供されている。リアルタイムのオンライン教育で欠席した際の補習などにも活用されている。従来よりも通信速度が速くなったことによって、よりストレスなく大容量の録画した授業を視聴することが可能になってきている。

電子教材のオンラインによる提供には、主に一斉指導で教師が使用する指導者用デジタル教科書や、子どもが学校や家庭・地域で使用する学習者用デジタル教科書などがある。電子教材にすることで、より広く教材を普及させることができるとともに、教師や子供にあった教材をより選択しやすくなるというメリットがある。

学習アプリには、語学学習アプリ、雑学系学習アプリ、資格取得学習アプリ、ビジネス系の学習アプリなどがある。空き時間を有効活用できる、移動中に学習できる、ゲーム感覚で学習できるなどといったメリットがある。

学習者用のSNSは、特に語学学習に活用されることが多い。例えば、英語を学びたい日本人と、日本語を学びたい英語圏の人がSNSによって結びつくことで、比較的安価に語学を学ぶことができる。

このように、ICTツールを活用した教育、EdTechによって、受講者は自分の都合の良い時間に安価に教育を受けることが可能になってきている。特に、通信速度の向上や様々なコミュニケーションツールの開発、ユーザーインターフェースの工夫によって、単に一方的に講義を視聴するだけでなく、教師と受講者で双方向にやり取りすることがより容易になってきており、ICTツールによる学習効果も今後さらに向上すると考えられる。

ただし、日本ではまだまだこうしたICTツールの利用が十分進んでいるとは言えない。例えば、MOOCに関しては、2017年9月末現在のJMOOCの受講者は約40万人5であり、世界のMOOCの学習者の数と比べると日本のMOOCの学習者はまだ少ない。

他方、調査によると、学び直しや職業訓練を感じている回答者のうち、82.7%がICTの利用意向を持っていた。学び直しや職業訓練の際に使いたいICTとしては、「インターネット上で誰もが無料で受講できる大規模な開かれた講義(MOOC)」が64.9%と大きく、MOOCの利用意向は高い(図表4-5-3-9)。MOOC以外にも、録画したものを視聴するオンライン教育の利用が38.7%、電子教材のオンラインによる提供に関する利用が28.6%など、ICTの利用意向を持つ人は多い。こうしたニーズに合わせて、学び直しや職業訓練でもさらにICTの導入を進めることが、学び直しや職業訓練を促進し、その効果を高めるためにも必要である。

図表4-5-3-9 学び直しや職業訓練におけるICTツールの利用意向(複数回答)
(出典)総務省「ICTによるインクルージョンの実現に関する調査研究」(2018)
「図表4-5-3-9 学び直しや職業訓練におけるICTツールの利用意向(複数回答)」のExcelはこちらEXCEL / CSVはこちら


5 一般社団法人日本オープンオンライン教育推進協議会「大学のオープン化に関する調査結果報告」(2017)

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