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第1部 特集 人口減少時代のICTによる持続的成長
第3節 組織を「つなぐ」ことで生産性向上をもたらすICT

(2)API公開の効果と課題

APIを公開することにより、あらゆる人や企業の持つサービスと自社のサービスを連携し、自社サービス自体の価値を高めることができる。結果としてAPIによる経済圏、即ちAPIエコノミーの形成とも言える状態ができつつある。

APIエコノミー形成について、配車アプリを例にとって説明する。配車アプリが提供する配車サービス自体をAPIとして公開することによって、例えばホテル事業者が自社のアプリに配車サービスを組み込むことが可能になる。このことにより、ホテルアプリが持つ予約機能、周辺の観光情報提供機能に配車サービスが加わることになる。結果として、ユーザーが予約後にホテルに向かう際や、ホテルから観光地に向かう際に、シームレスに配車サービスを利用することができるようになり、ユーザの利便性が高まる。また、目的地としている観光地に詳しいドライバーを手配する等の付加価値を提供することも可能になり、ホテルへの満足度も高まることが期待される。配車アプリを提供する事業者からしても、自社サービスの利用者増えることになり、収益の増加が見込める。ここでは、単に利用者が増加するのではなく、自社で広告・営業努力をしなくても、公開することによって自社APIの利用者が増えることにより、自社アプリ単体ではリーチできなかったユーザー層にリーチできる効果がある(図表3-3-1-2)。

図表3-3-1-2 配車アプリによるAPIエコノミー形成の例
(出典)総務省「ICTによるイノベーションと新たなエコノミー形成に関する調査研究」(平成30年)

企業が自社サービスのAPIを公開することによって、オープンイノベーションの促進や既存ビジネスの拡大、サービス開発効率化といった効果がある。特に外部知見の導入によるオープンイノベーションの促進や、リーチできる顧客層や収益源の拡大によるビジネスチャンスの拡大等のメリットが大きく、ビジネスが従来の「自前主義」からシフトしていくことが期待される(図表3-3-1-3)。

図表3-3-1-3 企業がAPIを公開する効果の例
(出典)総務省「ICTによるイノベーションと新たなエコノミー形成に関する調査研究」(平成30年)

前述のような効果がある一方で、APIの公開は自社のデータやサービスを公開することであるため、セキュリティの担保や他社参入の脅威拡大、サーバーへの負荷といった点で課題がある(図表3-3-1-4)。API公開の際にはセキュリティに配慮しつつ、自社のデータやサービスのどの部分を公開するか、どのように公開するか、どの範囲まで公開するかということを適切に定める必要がある。

図表3-3-1-4 企業がAPIを公開する際の課題の例
(出典)総務省「ICTによるイノベーションと新たなエコノミー形成に関する調査研究」(平成30年)

企業向け国際アンケートにおいて、API認知者に対してAPI公開の効果と課題に対する認識を聞いたところ、いずれの国でも大部分の企業がAPI公開の効果を認識している。一方で、日本企業においてはわからないという回答や課題のみ認識しているとの回答が諸外国と比較して大きな割合を占めており、APIを認知している者でもAPI公開の効果までは描けていないことがわかる(図表3-3-1-5)。

図表3-3-1-5 API公開の効果と課題に関する認識
(出典)総務省「ICTによるイノベーションと新たなエコノミー形成に関する調査研究」(平成30年)
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API公開の効果については、回答者全体においてはサービス開発の効率化の回答率が高いものの、日本企業においてはオープンイノベーションの促進との回答の割合が最も高くなっており、効率化よりも力点が置かれていることがわかる(図表3-3-1-6)。

図表3-3-1-6 API公開の効果
(出典)総務省「ICTによるイノベーションと新たなエコノミー形成に関する調査研究」(平成30年)
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API公開の課題に関しては国別の差異は大きく見られず、どの国においてもセキュリティの担保について回答した企業が大きな割合を占めている。APIを公開することに対するセキュリティ面への不安は依然強いことがわかる(図表3-3-1-7)。

図表3-3-1-7 API公開の課題
(出典)総務省「ICTによるイノベーションと新たなエコノミー形成に関する調査研究」(平成30年)
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