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第1部 特集 デジタルで支える暮らしと経済
1 我が国デジタル化政策の歴史

(2)第二期:ICT利活用の推進

ICTは、利用できる環境を整備するだけではなく、いかに利活用するかが重要である。第一期のICTインフラ整備が当初計画よりも前倒しで進んできたことを受け、第二期においては、ICTインフラの整備だけではなく、ICT利活用促進に向けた多くの取組が行われた。

ア e-Japan戦略II(2003年)

e-Japan戦略の公表から2年が経過し、「高速インターネットを3,000万世帯に、超高速インターネットを1,000万世帯に」という「利用可能環境整備」の目標は達成され、電子商取引や電子政府関連の制度的な基盤整備も進んできたことを受け、「IT戦略の第一期の目標は達成されつつある」として、2003年7月、IT戦略本部により「e-Japan戦略II」4が公開された(図表0-1-1-3)。

図表0-1-1-3 e-Japan戦略IIの概要
(出典)IT戦略本部(2003)「e-Japan戦略II(概要)」

e-Japan戦略IIでは、IT利活用の推進を前面に打ち出し、第一期で整備されたIT基盤を活かして社会・経済システムを積極的に変革し、21世紀にふさわしい「社会全体が元気で、安心して生活でき、新たな感動を享受できる、これまで以上に便利な社会」を目指すことを基本理念としている。その基本理念を実現するために、国民にとって身近で重要な7つの分野(1.医療、2.食、3.生活、4.中小企業金融、5.知、6.就労・労働、7.行政サービス)において先導的取組を進め、その成果を他の分野に展開することが掲げられている。

イ IT新改革戦略(2006年)

(ア) IT新改革戦略

「e-Japan戦略」の5年間で、我が国はブロードバンドインフラの整備と利用の広がり、高機能の携帯電話の普及、電子商取引の環境整備とその飛躍的拡大等について世界最先端を実現した一方で、行政サービスや医療、教育分野等でのIT利用・活用における国民満足度の向上、地域や世代間等における情報活用における格差の是正、セキュリティ対策や防災・災害対策の促進、企業経営におけるITの活用や産業の国際競争力の強化、国際貢献等について、依然として課題が存在していた。

そこで、「いつでも、どこでも、何でも、誰でも」使えるユビキタスなネットワーク社会を、セキュリティ確保やプライバシー保護等に十分留意しつつ実現し、それによって世界最高のインフラ・潜在的な活用能力・技術環境を有する最先端IT国家であり続けることを目指し、2006年1月にIT戦略本部は、我が国の新たなIT戦略として「IT新改革戦略」5 を策定した(図表0-1-1-4)。

図表0-1-1-4 IT新改革戦略の概要
(出典)IT戦略本部(2006)「IT新改革戦略 概要」

IT新改革戦略では、重点的に取り組むIT政策として「ITの構造改革力を追求し、日本の社会が抱えるさまざまな課題解決をITによって行おうとする政策(第一の政策群)」、「ITの構造改革力を支えるとともに、来るべきユビキタスネットワーク社会に向けた基盤の整備(第二の政策群)」、「2つの政策群を通じて達成される成果を世界に発信し国際貢献する(第三の政策群)」を提示した。

(イ) IT政策ロードマップ

さらに、IT戦略本部は、2008年6月には、IT新改革戦略に掲げられた目標を確実に達成するとともに2010年以降を見据えた将来展望を示すための工程表を示すため、「IT 政策ロードマップ」6を策定し、同年8月には、これを具体化した「重点計画-2008」を策定した。IT政策ロードマップでは、より国民の視点に立ったアプローチとして、ライフイベントごとの複数の行政手続が一か所で完結できる「国民本位のワンストップ電子行政サービスの実現」を掲げ、2010年度を目途に次世代のワンストップ電子行政サービスの標準モデルを構築し、実用化を目指すとしていた。

ウ i-Japan戦略2015(2009年)

IT新改革戦略の策定から3年が経過した2009年4月、デジタル技術の進展に加え、百年に一度とも言われる金融危機に伴う経済失速への処方箋が強く求められている事態を鑑み、IT戦略本部は、現下の経済危機を克服するための三か年緊急プランとして「デジタル新時代に向けた新たな戦略〜三か年緊急プラン〜」7を策定し、同年7月、現行のIT新改革戦略の期限を待たずに、2015年に向けた新たな中長期戦略として「i-Japan戦略2015」8を策定した(図表0-1-1-5)。

図表0-1-1-5 i-Japan戦略2015の概要
(出典)IT戦略本部(2009)「i-Japan戦略2015」

i-Japan戦略2015では、2015年のデジタル社会の将来ビジョンとして「社会の隅々に行き渡ったデジタル技術が「空気」や「水」のように抵抗なく普遍的に受け入れられて経済社会全体を包摂する存在となる(Digital Inclusion)ことを目指す」とし、従来の戦略が技術優先指向でサービス供給者側の論理に陥っていた面があることを反省の上、真に国民(利用者)の視点に立った人間中心(Human Centric)のデジタル技術が、普遍的に国民(利用者)によって受け容れられるデジタル社会を実現する戦略でなければならないと示した。同戦略では、三大重点分野として、①電子政府・電子自治体分野、②医療・健康分野、③教育・人財分野が設定された。

エ 新たな情報通信技術戦略(2010年)

2010年5月、IT戦略本部は「新たな情報通信技術戦略」9を公表した。新たな情報通信戦略は、過去のIT戦略の延長線上にあるのではなく、政府が主導する社会から国民が主導する社会に転換するための、非連続な飛躍を支える重点戦略(3本柱)に絞り込んだ戦略と位置付けられ、「戦略の実施に当たっては、これまでの関連政策が効果を上げていない原因を徹底的に追求し、IT戦略以外の各政策との連携、関係府省間の連携、政府と自治体との連携、政府と民間との連携等を具体的に進め、新たな国民主権の社会が早期に確立されるよう、国を挙げて、強力に推進する。」と記された。

3本柱と定められたのは「国民本位の電子行政の実現」、「地域の絆の再生」、「新市場の創出と国際展開」であった。



4 IT戦略本部(2003.7.2)「e-Japan戦略II」(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kettei/030702ejapan.pdfPDF

5 IT戦略本部(2006.1.19)「IT新改革戦略 -いつでも、どこでも、誰でもITの恩恵を実感できる社会の実現-」(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kettei/060119honbun.pdfPDF

6 IT戦略本部(2008.6.11)「IT政策ロードマップ」(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kettei/080611honbun.pdfPDF

7 IT戦略本部(2009.4.9)「デジタル新時代に向けた新たな戦略〜三か年緊急プラン〜」(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kettei/090409plan/090409honbun.pdfPDF

8 IT戦略本部(2009.7.6)「i-Japan戦略2015 〜国民主役の「デジタル安心・活力社会」の実現を目指して〜 Towards Digital inclusion & innovation」(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kettei/090706honbun.pdfPDF

9 IT戦略本部(2010.5.11)「新たな情報通信技術戦略」(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/100511honbun.pdfPDF

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