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第1部 特集 デジタルで支える暮らしと経済
第3節 コロナ禍における企業活動の変化

(5)海外におけるテレワークの動向

我が国では、コロナ禍を契機として、急速にテレワークの導入が進められている状況ではあるが、海外ではどのような状況にあるのだろうか。ここでは、米国及びEUにおけるテレワークの実施状況や動向を整理する。

ア 米国におけるテレワークの動向
(ア)テレワークの実施状況

米国の労働者を対象とした調査によると、新型コロナウイルス感染症の感染拡大後に、一度でも在宅勤務をした経験がある者は57.9%、調査実施の時点で在宅勤務をしている者は35.3%という結果であった(図表2-3-4-21)。

図表2-3-4-21 米国における在宅勤務の実施割合
(出典)成長戦略会議(2021.2.17)資料

続いて、在宅勤務の実施者に対して、職場勤務と比較した場合の在宅勤務の効率性について尋ねたところ、「職場勤務と同じ」との回答が43.5%、「在宅勤務の方が効率的」との回答が41.2%となり、在宅勤務に対する評価が肯定的であることがわかる(図表2-3-4-22)。

図表2-3-4-22 米国の在宅勤務の生産性(感染拡大前の職場での勤務を100とした場合の比較)
(出典)成長戦略会議(2021.2.17)資料
(イ)コロナ収束後における在宅勤務の実施意向

在宅勤務の実施者に対して、コロナ収束後における在宅勤務の実施意向を尋ねたところ、在宅勤務の日数は「週5日」→「週2日」→「週3日」の順に高く、在宅勤務の実施意向の高さが見て取れる(図表2-3-4-23)。

図表2-3-4-23 コロナ後における在宅勤務の実施意向
(出典)成長戦略会議(2021.2.17)資料
イ EUにおけるテレワークの動向
(ア)テレワークの実施状況と課題

Euro found14が2020年2月に公表した調査によると、新型コロナウイルス感染症の流行後に、EU域内の労働者の36.5%が在宅勤務を始めている(図表2-3-4-24)。新型コロナウイルス感染症流行以前は、在宅勤務を月1回以上実施していた労働者は22.7%にとどまっており(図表2-3-4-25)、EUでは新型コロナウイルス感染症の流行を契機として、在宅勤務が拡大している。

図表2-3-4-24 新型コロナウイルス感染症流行後に在宅勤務を実施した割合(EU)
(出典)Eurofound「Living, working and COVID-19 data」
図表2-3-4-25 新型コロナウイルス感染症流行前の在宅勤務の実施頻度(EU)
(出典)Eurofound「Living, working and COVID-19 data」

ただし、EU Joint Research Centerが2020年5月に公表した新型コロナウイルス感染症前後のテレワークに関する調査15によると、在宅勤務は急速に拡大しつつも、全員が実施したものではなく、特定の加盟国、特定のセクターや職業に偏っているとあり、現状を放置すると、格差が拡大する可能性を示唆している16図表2-3-4-26)。

図表2-3-4-26 新型コロナウイルス感染症流行前後のテレワーク実施調査結果(EU Joint Research Centre)
(出典)総務省(2021)「ウィズコロナにおけるデジタル活用の実態と利用者意識の変化に関する調査研究」

また、テレワークには多くのメリットがある一方で、家庭でも仕事ができる環境となることで、「ワークライフバランスを崩す」、「仕事と家庭生活の両立が困難」、「休息が不十分になる」、「仕事関連のストレスが生じる」、「睡眠障害などの健康上の問題が生じる」といった様々な課題が生じる可能性が指摘されている17

(イ)EUにおけるテレワークに関する法制度

このように、EUでは、テレワークに関して、格差の拡大等が生じる可能性があるなどの課題があると認識されており、そのような課題解決に向けて、在宅勤務に関する様々な議論や法整備が進められている。

例えば、オランダは、「柔軟な働き方を保証する法律(フレキシブルワーク法)」が制定されている。また、フランス、イタリア等では「つながらない権利(勤務時間外に電子メール等を送らなくてもよい権利等)」が確立されている。他にも、在宅勤務を実施すること自体を権利として認めようとする議論もある(図表2-3-4-27)。

図表2-3-4-27 EU加盟国等におけるテレワーク関連の法制度
(出典)総務省(2021)「ウィズコロナにおけるデジタル活用の実態と利用者意識の変化に関する調査研究」


14 European Foundation for the Improvement of Living and Working Condition

15 Joint Research Center(2020.5)“Teleworkability and the COVID-19 crisis: a new digital divide?”

16 EUにおける新型コロナウイルス感染症拡大前の在宅勤務の実施状況は、2008年は8%未満で、2019年となっても11%にとどまっていた。また、在宅勤務の実施割合は、国や職業によって差があった。

17 The European Foundation for the Improvement of Living and Working Conditions (Eurofound)
“Does the new telework generation need a right to disconnect?”
https://www.eurofound.europa.eu/publications/blog/does-the-new-telework-generation-need-a-right-to-disconnect別ウィンドウで開きます

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