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第1部 特集 デジタルで支える暮らしと経済
3 「誰一人取り残さない」デジタル化の推進

(3)デジタル社会の共通基盤の構築

本項1及び2に記載した各種の取組を進めて効果を上げていくには、以下に記すようなこれら取組の共通基盤の構築を併せて進めていく必要がある。

ア 高度な情報通信インフラの整備

「誰一人取り残さないデジタル社会」を実現するには、全ての人がデジタルによる恩恵を受けられるよう、今後のデジタル社会におけるインフラ、具体的には、高速・大容量通信の基盤となる光ファイバや5G基地局の地域格差を抑えつつ全国整備を進めていく必要がある。また、企業における生産性向上や地域課題の解決のために、ローカル5Gの整備も促進する必要がある。

さらに、次世代のデジタルインフラのあり方の検討及び必要となる技術の研究開発等も重要である。Beyond 5Gは、次世代のデジタルインフラとして全世界が注目しており、規格の策定を見据えた研究開発や国際連携の動きが活発化している。我が国もこうした動きに遅れることなく、国際競争力の確保に向けて積極的に取り組んでいく必要がある。

イ ベース・レジストリ等のデータ整備

現在、民間や行政の業務やシステムごとにデータの整備が行われてきており、どのようなデータが利用可能なのか、存在しているのかを体系的に探すことは困難となっているほか、存在するデータも形式や品質がバラバラであり再利用に支障をきたしている。また存在するデータの全体像が見えないため、整備すべきデータの検討が進まず、データの整備が重複して行われている。システム間で連携できるデータも非常に限定的である。

そのため、公的機関等で登録され多くの場面で利活用される、人、法人、土地、建物、資格などの社会の基本データを「ベース・レジストリ」として整備することとし、その後、ベース・レジストリの対象となるデータの範囲を広げることが必要である。さらに、行政機関全体で利活用する基本データに加え、公的分野(医療や教育等)においては、官民が連携し分野ごとに様々な手続で参照される基盤データを整備する必要があるものと考える。

また、データは幅広く利活用されることでその価値が最大限発揮されることから、これまでオープンデータの促進を行ってきており、多くの府省や自治体がオープンデータに取り組んでいる。しかしながら、質、量ともにまだ改善の余地があり、より幅広く様々な経済社会活動に利活用されるよう、機械判読性の強化などオープンデータの取組を強化する必要がある。

ウ 安全・安心な利用環境の整備

デジタル技術の進化とともに、サイバー攻撃も複雑化・巧妙化するなど、セキュリティリスクも広範かつ深刻なものとなっている。社会インフラにおいてはサイバー・フィジカル・システムが普及し、国境を越えたサイバー攻撃も行われるなど、安全保障上の脅威ともなっている。サイバーセキュリティの確保は、デジタル化が進展する中でますます重要になる。

また、個人情報の保護も重要である。これまで個人情報を安全かつ有効に活用するための個人情報保護法が、むしろ個人情報の活用抑制につながった面は否めない。今般、改正個人情報保護法が成立したことにより、地方公共団体ごとに個人情報保護条例が存在する、いわゆる「2000個問題」は解消に向けて動き出すが、今後も安全かつ有効に個人情報を活用できるための制度整備が不可欠である。今後、パーソナルデータを公共目的で利用するには、公益性と個人情報の保護とのバランスをどのように図るかが鍵となってくる。データ提供者のプライバシーに配慮したデータ活用のあり方が問われるであろう。併せて、個人情報を安全に活用するための新たなサービス(情報銀行など)の普及に向けた取組も必要と考えられる。

さらに、災害大国である我が国において、社会インフラとなっている情報通信ネットワークを非常時でも円滑に利用できるよう、通信事業者によるネットワークの冗長性の確保などの災害対策が進むよう、支援していくことも必要である。

そして、今後、社会全体のデジタル化を進めるにあたっては、情報セキュリティの確保や個人情報の保護をも包含する、デジタル利用に対する信頼感(トラスト)を関係者全体で醸成していくことが大切であり、そのための制度のあり方が問われるであろう。

エ 公共デジタル・プラットフォームの整備

(ア)ID・認証基盤の普及

デジタル社会において、官民が保有するデジタルデータを連携させ、利便性の高いデジタルサービスを構築・提供していくには、諸外国では広く利用されている共通IDについて、我が国においてもその利活用を進めていくことが重要である。

我が国においては、マイナンバーを情報連携のキーとして利用したり、公金受取口座との紐付けを行うことにより、今後、非常時における給付等を円滑に進めることが期待できる。また、デジタル社会における本人確認基盤であるマイナンバーカードについては、健康保険証や運転免許証との一体化等により利便性を高め、普及につなげていくことが重要である。

また、デジタル社会における認証基盤としての電子署名、電子委任状等の普及、マイナンバーカードに格納されている公的個人認証の電子証明書のスマートフォン搭載の実現などの取組を進める必要がある。

(イ)政府情報システムの整備

政府機関に対して共通的な基盤・機能を提供する複数のクラウドサービスの利用環境である「ガバメントクラウド」を整備・運用を図るほか、信頼と実績がある最新技術を採用してガバメントネットワークを再構築し、現行のネットワークからの移行を図ることとしている。

地方公共団体においては、利用している基幹業務等システムについて、ガバメントクラウド上に構築された標準化基準に適合したシステムへと移行する統一・標準化を目指すこととしている。

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