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第2部 基本データと政策動向
第6節 IoT・ICT利活用の推進

第6節 IoT・ICT利活用の推進

1 先端技術を活用した議題解決

(1)ローカル5Gの推進

ローカル5Gは、携帯電話事業者による5Gの全国サービスと異なり、地域や産業の個別ニーズに応じて、地域の企業や自治体等の様々な主体が、自らの建物内や敷地内でスポット的に柔軟に構築できる5Gシステムであり、様々な課題の解決や新たな価値の創造等の実現に向け、多様な分野、利用形態、利用環境において活用されることが期待されている(図表5-6-1-1)。総務省では、ローカル5Gについて、2019年(令和元年)12月24日に28.2GHz-28.3GHzを制度化及び申請受付を開始した。その後、更なる多様なニーズに対応するため、4.6GHz-4.9GHz及び28.3GHz-29.1GHzの周波数帯について、他システムとの共用検討等を行い2020年(令和2年)12月18日に新たに制度化した(図表5-6-1-2)。

図表5-6-1-1 ローカル5Gの利用シーン
図表5-6-1-2 ローカル5Gの周波数帯拡充

ローカル5G普及のための取組として、総務省では2020年度(令和2年度)から多種多様なローカル5G基地局の設置場所・利用環境下を想定したユースケースにおけるローカル5Gの電波伝搬等に関する技術的検証を実施するとともに、当該検証を通じてローカル5G等を活用した課題解決モデルを構築する「地域課題解決型ローカル5G等の実現に向けた開発実証」1に取り組んでいる。2021年度(令和3年度)においても、ローカル5Gのより柔軟な運用の実現に向け、2020年度(令和2年度)の実証結果から更なる検討が必要とされた電波伝搬等について詳細なデータを取得するために実証を行うとともに、引き続きローカル5G等を活用したソリューション創出に取り組むこととしている。

また、安全で信頼できる5Gの導入を促進し、5Gを活用して地域が抱える様々な社会課題の解決を図るとともに、我が国経済の国際競争力の強化を目的として、2020年度(令和2年度)に「5G投資促進税制」を創設した。具体的には、法人税・所得税の特例措置として、全国5G基地局及びローカル5Gの一定の設備について、15%の税額控除又は30%の特別償却を認めることとし、固定資産税の特例措置として、ローカル5Gの一定の設備について、取得後3年間の課税標準を2分の1とすることとしている。

さらに、今後、ローカル5Gが普及段階に入り、工場、農地、交通、医療、建設現場、災害現場など様々な場面におけるローカル5Gの導入を推進していく観点から、それぞれの分野を所管する関係省庁、それぞれの事業分野を代表する関係団体、各地域のローカル5G推進組織等から構成される「ローカル5G普及推進官民連絡会」が2021年(令和3年)1月に設立された。ローカル5G導入主体等と関係政府機関、通信事業者、ベンダー等を繋ぐハブ機能を担うとともに、関係省庁や各地域ローカル5G推進組織間の連携推進や、ローカル5G導入促進に係る普及啓発活動を実施する。

2020年(令和2年)12月の新たな周波数帯の制度化にあたっては、他システムとの共用検討や非同期運用に関する検討が行われた。

4.7GHz帯については公共業務用システム及び5GHz帯無線アクセスシステムとの共用検討が、28GHz帯については衛星通信システムとの共用検討が行われた。追加周波数の同一周波数帯及び隣接周波数帯おける既存システム等との共用検討結果から、4.6GHz-4.8GHzについては一部地域限定かつ屋内での運用に限定、4.8GHz-4.9GHzについては屋内外ともに利用が可能という結論となった。また、28.3GHz-28.45GHzについては屋内外共に利用が可能、28.45GHz-29.1GHzについては屋内での運用が基本という結論となった。加えて、他システムへの干渉量の総和(アグリゲート干渉)を考慮する必要があることから、最大空中線や利得等に制限が設けられている。

5G及びローカル5Gは、通信方式として時分割復信方式(以下「TDD方式」という。)という、基地局と陸上移動局の上りと下りの通信を時間で区切り、異なるタイミングで上りと下りの通信を行うことで、同じ周波数での上下の通信を可能とする無線通信方式が使われている。

2019年(令和元年)12月24日に制度化された28.2GHz-28.3GHzでは、隣接周波数帯を使用する携帯電話事業者向けの5Gシステムとの干渉回避の観点から、TDD方式について、上下の通信を行うタイミングや上下の通信パターンを合わせる設定(以下「TDD同期」という。)での運用を基本としていた。

しかし、ローカル5Gの様々な主体の多種多様なニーズに応えるためには、TDD方式の上下の通信パターン等を柔軟に選択できるようなネットワークの実現が求められる。上下の通信パターン等を柔軟に設定することができると、例えばカメラで撮影した容量の大きい4K/8Kの映像データを上り回線に流して、そうした映像をもとに下り回線で機械等の制御を行うことが可能となる。

様々な分野・主体の多種多様なニーズに応えるため、ローカル5Gの周波数拡張の検討と併せて、TDD非同期に関する検討を行った。非同期の実現に向けては、同期運用の無線局が非同期運用の無線局よりも優先的に保護される考え方を基本としつつ、非同期運用の場合の干渉調整を簡素化するため、携帯電話事業者向け5Gの同期TDDパターンとスロットの開始タイミングを一致させたまま、上りスロットの比率を高めた「準同期TDD」の導入を行った。また、準同期TDD以外の非同期方式についても、事前に干渉調整を行うことで上り/下りの比率を柔軟に設定した利用が可能となっている。

5Gの活用が期待されるIoT時代において、ローカル5Gは様々な分野での活用が検討されていることから、こうした制度整備等の取組みを踏まえ、今後の普及・展開が期待されている。



1 2021年度(令和3年度)からは事業名を「課題解決型ローカル5G等の実現に向けた開発実証」に変更。

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