第1部 特集 デジタルで支える暮らしと経済
第2節 企業活動におけるデジタル・トランスフォーメーションの現状と課題

(11)まとめ

アンケート結果から、我が国企業が実施するデジタル・トランスフォーメーションの傾向についてまとめると以下のとおりである。

まず、デジタル・トランスフォーメーションの取組状況は、業種や事業規模、地域(本社所在地)によって大きく異なっている。業種別では情報通信業や金融業・保険業が他の業種より取組が進んでいるとの結果が出たほか、大企業と中小企業、都市と地方で、取組状況に明確な差が生じている。

取組体制については、デジタル・トランスフォーメーションの主導者として、「社長・CIO・CDO等の役員」や「外部コンサルタント・パートナー企業等」を挙げる日本企業は少ない結果となった。

デジタル・トランスフォーメーションの目的や効果について、日本企業は「業務効率化・コスト削減」を挙げる回答が多く、「企業文化、働き方の改革」がそれに次ぐ結果となっている。後者は2020年度に伸びていることから、コロナ禍に伴い働き方改革(テレワーク等)及びそれに伴うICT導入(可搬端末の支給、遠隔会議システムの導入等)を行う企業が増えたとのアンケート結果とも連動しているものと考えられる。他方、米国やドイツでは、「新製品・サービスの創出」、「新規事業の創出」、「ビジネスモデルの変革」及び「顧客満足度の向上」といった回答が多い結果となった。

社内及び社外手続きの電子化について、日本は社内と社外とで電子化の状況に差が生じており、この点からも社内業務の効率化を重視していることがうかがえる。

また、デジタル技術の活用状況は、日本企業はクラウド以外に関しては、特に米国企業と比較した場合に大きな差が生じている。また、デジタルデータの活用も、日本企業は伸びているものの、米国企業及びドイツ企業との間には依然として差が存在している。

デジタル・トランスフォーメーションを進める上での課題として、特に日本企業は人材不足を挙げているが、人材確保に向けた取組として、日本企業は「社内・社外研修の充実」を挙げているほか、「特に何も行っていない」との回答が多い結果となった。対照的に米国では、デジタル人材の新規・中途採用に積極的との回答が多い結果であった。

これらの結果を総合すると、日本企業におけるデジタル・トランスフォーメーションは、社内業務の効率化など、社内で完結する「内向き」の取組であると言えよう。コロナ禍でさらに厳しくなる環境において、企業の存続・発展につなげていくには、デジタル・トランスフォーメーションの本来の趣旨(第2項1参照)に鑑みて、新たなサービスの創出や事業拡大を目的とし、外部との連携や外部リソースの活用などを積極的に進める「外向き」の取組へと進化させることが、デジタル・トランスフォーメーションの本来の効果を生み出す意味でも必要と考えられる。

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