企業がデジタル・トランスフォーメーションに取り組む目的と得られた効果について尋ねた(図表1-2-4-10)。まず、目的に関して3か国の2年分を比較すると、日本では「業務効率化・コスト削減」を目的に掲げる企業が2年ともに多い。また、「既存商品・サービスの高付加価値化」や「既存商品・サービスの販路拡大」は米国やドイツでは2019年度は高かったが2020年度には下がっている。他方、「新製品・サービスの創出」、「新規事業の創出」、「ビジネスモデルの変革」、「顧客満足度の向上」といったデジタル・トランスフォーメーション本来の目的については、米国やドイツと比較すると日本はまだ低い結果となった。ただし、「ビジネスモデルの変革」や「企業文化、働き方の変革」を回答する企業が2020年度には増えるなど、徐々にではあるが、デジタル・トランスフォーメーションの意義が浸透しつつある様子もうかがえる。
ちなみに、令和元年版情報通信白書に掲載した「我が国におけるIoT、AI等の活用状況」を引用すると、企業がIoTやAIといった先端技術を利用する際の目的として、「業務効率の向上」や「コストの削減」を挙げた企業が多い一方、デジタル・トランスフォーメーションにつながる「新事業への進出」や「新製(商)品・サービスの開発」を挙げる企業は少なかった(図表1-2-4-11)。
他方、今回のアンケート調査では、「新製品・サービスの創出」や「新規事業の創出」を挙げる日本企業は増えているものの、付加価値創出のためのデジタル活用の促進は、引き続きの課題と言えそうである。
図表1-2-4-10に載せた目的別での効果の有無を尋ねた結果が図表1-2-4-12である。このうち左表は、各項目をデジタル・トランスフォーメーションの実施目的としたかどうかに関わらず、発現した効果を尋ねたもので、日本は「業務効率化・コスト削減」で効果が出たと回答した企業が多い一方、米国やドイツでは「既存製品・サービスの販路拡大」、「新製品・サービスの創出」、「新規事業の創出」、「ビジネスモデルの変革」、「顧客満足度の向上」において効果が出たとの回答が日本と比べると高い結果となった。
一方、右表は、各項目をデジタル・トランスフォーメーションの実施目的として掲げた企業に限定して、当該項目における効果の有無を尋ねた結果である。全体的に目的意識があった方が効果も出やすいとの結果になった。