総務省トップ > 政策 > 白書 > 令和3年版 > 国際指標におけるポジション
第1部 特集 デジタルで支える暮らしと経済
3 国際指標でみる我が国のデジタル化

(1)国際指標におけるポジション

ここでは、国際競争力に関する指標として、国際経営開発研究所(以下「IMD26」という。)が公表するデジタル競争力ランキングと世界経済フォーラム(以下「WEF27」という。)が公表する国際競争力ランキングを取り上げる。

また、電子政府に関する指標として、国連経済社会局(UNDESA)が公表する世界電子政府ランキングと早稲田大学電子政府・自治体研究所が公表する世界デジタル政府ランキングを取り上げる。

ア デジタル競争力ランキング(IMD)

(ア)概要

デジタル競争力ランキングとは、IMDが策定・公表しているデジタル競争力に関する国際指標であり、国によるデジタル技術の開発・活用を通じ、政策、ビジネスモデル及び社会全般の変革をもたらす程度を分析し、点数とランクを付けている28

デジタル競争力ランキングでは、デジタル競争力に影響を与える要因を「知識」、「技術」及び「将来への備え」の3つに分類し、各要因に関する52の基準・指標に基づいて算出される(図表0-1-3-1)。

図表0-1-3-1 デジタル競争力ランキングの基準・指標の詳細
(出典)総務省(2021)「ポストコロナの経済再生に向けたデジタル活用に関する調査研究」
(イ)総合評価

2020年のデジタル競争力ランキングでは、米国が3年連続1位で、シンガポールが2位、デンマークが3位と続いている(図表0-1-3-2)。上位国には、欧米だけではなく、2位にシンガポール、5位に香港、8位に韓国となっている。

図表0-1-3-2 デジタル競争力ランキング2020の上位10か国
(出典)IMD World Digital Competitiveness Rankingを基に総務省作成

このようにアジアの国・地域も上位を占める中、我が国の順位は、ここ数年低下傾向にあり、2020年は、前年に比べて4位下がり、63か国・地域のうち27位となっている(図表0-1-3-3)。また、要因ごとに見ると、いずれもここ数年20位前後となっているが、特に「技術」及び「将来への備え」の順位が近年低下傾向にある(図表0-1-3-4)。

図表0-1-3-3 デジタル競争力ランキングにおける我が国の順位(2020)
(出典)総務省(2021)「ポストコロナの経済再生に向けたデジタル活用に関する調査研究」
図表0-1-3-4 デジタル競争力ランキングにおける我が国の順位の推移
(出典)総務省(2021)「ポストコロナの経済再生に向けたデジタル活用に関する調査研究」
(ウ)要因ごとの評価

続いて、要因ごとの評価がどのようになっているかを分析する。

「知識」

まず、「知識」については、構成要素の中では、特に「人材」に関する順位が低下傾向にあり、2020年の我が国の順位は46位である(図表0-1-3-5)。

図表0-1-3-5 知識における我が国の順位の推移
(出典)総務省(2021)「ポストコロナの経済再生に向けたデジタル活用に関する調査研究」

この「人材」を測定するための指標の中には、「教育評価(PISA-数学)」では5位、「都市管理」では14位になっており、順位が高いものもあるが、「国際経験」が63位、「デジタル/技術スキル」が62位であり、全63か国・地域のうち最下位レベルであることから、「知識」の順位が大幅に下がっている(図表0-1-3-6)。

図表0-1-3-6 人材における我が国の順位
(出典)総務省(2021)「ポストコロナの経済再生に向けたデジタル活用に関する調査研究」
「技術」

続いて、「技術」について見てみると、「技術」の順位は継続的に低下しているが、その構成要素の中でも、特に「規制枠組み」や「資本」の順位が低い傾向にある(図表0-1-3-7)。

図表0-1-3-7 技術における我が国の順位の推移
(出典)総務省(2021)「ポストコロナの経済再生に向けたデジタル活用に関する調査研究」

この「規制枠組み」を測定するための指標では、最も高い順位でも「知的財産権」の33位にとどまるなど、どの測定指標の順位も高くはないが、特に「移民法」が56位であり、特に低くなっている(図表0-1-3-8)。

図表0-1-3-8 規制枠組みにおける我が国の順位
(出典)総務省(2021)「ポストコロナの経済再生に向けたデジタル活用に関する調査研究」

この「移民法」は、外国人労働者の受け入れ及び活用をどのぐらい促進しているのかが評価基準となっており、我が国は、欧米諸先進国と比較し、外国人受け入れ実績が大きく遅れていることから、下位の評価になっている。

なお、出入国在留管理庁29によると、2020年6月末の在留外国人数は288万5,904人で、日本の総人口の約2%となっている。本項目で1位となったUAEの外国籍労働者は、全人口の8割以上を占めている。

「将来への備え」

続いて、「将来への備え」について見てみると、「将来への備え」は継続的に順位が低下しているが、その構成要素の中でも、特に「ビジネスの俊敏性」の順位が低い傾向にある(図表0-1-3-9

図表0-1-3-9 将来への備えにおける我が国の順位の推移
(出典)総務省(2021)「ポストコロナの経済再生に向けたデジタル活用に関する調査研究」

この「ビジネスの俊敏性」を測定するための指標では、「世界のロボット分布」は2位となっているが、それ以外の測定指標の順位が低く、特に「機会と脅威」、「企業の俊敏性」及び「ビッグデータの分析と活用」30がいずれも最下位(63位)となっている(図表0-1-3-10)。

図表0-1-3-10 ビジネスの俊敏性における我が国の順位
(出典)総務省(2021)「ポストコロナの経済再生に向けたデジタル活用に関する調査研究」

イ 国際競争力ランキング(WEF)

(ア)概要

国際競争力ランキングとは、WEFが策定・公表している国際競争力に関する国際指標で、各国の競争力に貢献する、技術やICT導入を含めた12の要因を分析・評価している31

国際競争力ランキングは、インダストリー4.0時代に適応するため、2018年から新しいフレームワークとなっている。この新しいフレームワークでは、「環境」、「人的資本」、「市場」及び「イノベーションエコシステム」に分類され、各要因に関する基準・指標に基づいて算出される(図表0-1-3-11)。

図表0-1-3-11 国際競争力ランキングの詳細
(出典)総務省(2021)「ポストコロナの経済再生に向けたデジタル活用に関する調査研究」
(イ)旧国際競争力ランキングにおける評価

2017年まで測定された国際競争力ランキング(以下「旧国際競争力ランキング」という。)における我が国の順位は、ほぼ1桁台を維持しており、2017年は137か国・地域のうち、9位であった(図表0-1-3-12)。

図表0-1-3-12 旧国際競争力ランキングにおける我が国の位置付けの推移
(出典)総務省(2021)「ポストコロナの経済再生に向けたデジタル活用に関する調査研究」

要因ごとに見ると、「技術の準備」については、2010年には28位まで低下していたが、2017年は15位まで上昇している。一方、「イノベーション」に関しては、2017年は8位と高い順位を維持しているものの、2014年は4位であることからすると、順位が低下している。

(ウ)新国際競争力ランキングにおける評価

2018年以降に測定された国際競争力ランキング(以下「新国際競争力ランキング」という。)における我が国の順位は、2018年は5位(全140か国・地域)、2019年は6位(全141か国・地域)と高い順位を維持している(図表0-1-3-13)。

図表0-1-3-13 新国際競争力ランキングにおける我が国の位置付けの推移
(出典)総務省(2021)「ポストコロナの経済再生に向けたデジタル活用に関する調査研究」

このように我が国の順位が高い背景としては、携帯電話加入率等の「ICT導入」、道路の整備や鉄道ネットワークの整備等の「インフラ整備」や国民寿命予測の「ヘルスケア」が本指標に含まれていることがある。

要因ごとにみると、「環境」32では、インフレ率や国の債務状況等の「マクロ経済安定性」は42位と順位が低いが、道路や鉄道等の「インフラ」(5位)や携帯電話加入者数等の「ICT導入」(6位)の順位が高い。

また、「人的資本」では、「ヘルスケア」は1位であるにも関わらず、「スキル」は28位と順位が低くなっている。

さらに、「イノベーションエコシステム」では、起業コストや破壊的なアイデアを持つ会社の割合等の「ビジネスダイナミズム」が17位となっており、他の項目と比べて比較的低い順位となっている。一方、「イノベーション能力」は7位である。その算出指標を見てみると、労働力の多様性はスコアが低いものの、研究開発経費や特許出願などのスコアは高い。

ウ 国連経済社会局(UNDESA)「世界電子政府ランキング」

国連経済社会局(UNDESA)による電子政府調査は、国連加盟国におけるICTを通じた公共政策の透明性やアカウンタビリティを向上させ、公共政策における市民参画を促す目的で実施され、2003年から始まり、2008年以降は2年に1回の間隔で行われている。この調査では、オンラインサービス指標(Online Service Index)、人的資本指標(Human Capital Index)、通信インフラ指標(Telecommunications Infrastructure Index)の3つの指標を元に平均してEGDI(電子政府発展度指標)を出して順位を決めている。

2020年の世界電子政府ランキングでは、2019年に引き続きデンマークが1位であった。続いて2位が韓国、3位がエストニア、4位がフィンランド、5位がオーストラリアと続く。上位10か国のうち、6か国をヨーロッパが占めている(図表0-1-3-14)。

図表0-1-3-14 世界電子政府ランキング2020の上位10か国
(出典)国連世界電子政府ランキングを基に総務省作成

日本の順位は14位であり、前回の10位から順位を下げている。過去からの推移をみると、日本は概ね18位から10位の間で推移している(図表0-1-3-15)。

図表0-1-3-15 国連(UNDESA)「世界電子政府ランキング」における日本の順位推移
(出典)UN e-Government Surveys33をもとにNTTデータ経営研究所作成
「図表0-1-3-15 国連(UNDESA)「世界電子政府ランキング」における日本の順位推移」のExcelはこちらEXCEL / CSVはこちら

個別指標の順位をみると、通信インフラ指標及びオンラインサービス指標と比較して人的資本指標の評価が一貫して低い。スコア自体としては、EGDI及び人的資本指標、通信インフラ指標については前回より評価が上がった一方、オンラインサービス指標の数値が下がっている。この結果については、他国が飛躍的に行政手続きのデジタル化やデジタルIDの導入を進めるなかで、日本はウェブサイト上にある行政サービスの所在が分かりにくいことや、役所手続きの煩雑さなどが指摘されている。

エ 早稲田大学世界デジタル政府ランキング

早稲田大学電子政府・自治体研究所は、世界のICT先進国64か国を対象に、各国のデジタル政府推進について進捗度を主要10指標(35サブ指標)34で多角的に評価する「世界デジタル政府ランキング」を、2005年から毎年公表している。このランキングでは、日本は8位から4位の間を推移しており、直近の2019年調査の結果では7位と評価されている(図表0-1-3-16)。

図表0-1-3-16 早稲田大学世界デジタル政府ランキングにおける日本の順位推移
(出典)総務省(2021)「デジタル・ガバメントの推進等に関する調査研究」
「図表0-1-3-16 早稲田大学世界デジタル政府ランキングにおける日本の順位推移」のExcelはこちらEXCEL / CSVはこちら


26 International Institute for Management Development

27 World Economic Forum

28 国家・国際機関の統計及び企業役職員への調査結果に基づき、測定。

29 出入国在留管理庁(2020)報道発表(http://www.moj.go.jp/isa/content/930006222.pdfPDF

30 これら3指標は、国際機関又は各国政府が公表したデータによるものではなく、日本に住んでいる又は住んだことのある企業の管理職に対して実施したアンケート調査結果である。

31 国際機関の統計及びWEF役職員オピニオン調査に基づき、測定。

32 「環境」においては、「マクロ経済安定性」の順位が2019年は42位となっており、2018年の4位から大幅に低下しているが、2019年のスコアは94.9であり、2018年の93.9と比べて上昇していることから、他の国・地域のスコアが上昇したことにより、相対的に我が国の順位が低下している。

33 UN e-Government Surveys(https://publicadministration.un.org/en/Research/UN-e-Government-Surveys別ウィンドウで開きます

34 主要10指標は、「NIP(ネットワーク・インフラの充実度(公的ネットワークの構築・整備))」、「MO(行財政改革への貢献度,行政管理の最適化)」、「OS(各種オンライン・アプリケーション・サービスの進捗度(オンライン・サービス活動の種類や進捗度))」、「NPR(ホームページ,ポータルサイトの利便性(ナショナル・ポータルの状況))」、「GCIO(政府CIO(最高情報責任者)の活躍度(権限や人材育成))」、「EPRO(電子政府の戦略・振興策(計画の達成度))」、「EPAR(ICTによる市民の行政参加の充実度(市民の電子参加))」、「OGD(オープン・ガバメント(オープン・データ))」、「CYB(サイバーセキュリティ)」、「AIU(先端ICT(クラウド,IoT,ビッグデータ)の利活用度)」である。

テキスト形式のファイルはこちら

ページトップへ戻る