今回の調査対象国・地域におけるデジタル・ガバメント推進戦略全体の取組概要を図表1-3-3-1に示す。各国とも、高福祉化やコスト削減等の目的の下、1990年代半ば頃から電子政府に関する取組を開始しているが、近年は、省庁横断組織が中心となり、デジタルを前提とした行政サービスの構築が推進されている。地域のデジタル化についても、州政府の独立性の強い米国を除き、中央政府と自治体の合意の下で共通フレームワークの活用やデータ共有が推進され、首尾一貫したデジタル化の推進が志向されている。
各国・地域とも、近年はベース・レジストリ整備を含むデータ連携・活用施策に注力しており、特にコロナ禍以降は、経済復興と公共サービスの更なる充実化の両面において、国家的なデータ戦略の下で積極投資していく方向性を示している。
EUにおける最新の電子政府戦略は、2016年4月に公表された「電子政府行動計画2016-2020(European eGovernment Action Plan 2016-2020)」29であり、加盟国の電子政府が、企業、市民、行政にメリットをもたらすために、順守すべき原則を提供するものとなっている。
同行動計画の実現に向けて、翌2017年10月、タリン宣言(Ministerial Declaration on eGovernment - the Tallinn Declaration)30が調印され、EU加盟国は、2018年から2022年までの5年間で、5つの目標(①デジタル・バイ・デフォルト、包括性とアクセシビリティの原則、②ワンス・オンリーの原則、③信頼性とセキュリティの原則、④開示性と透明性の原則、⑤インターオペラビリティ・バイ・デフォルトの原則)に取り組むことが合意された。なお、同宣言には、これらの目標に対し、加盟国側が実施するべき事項や、EU機関に対し要請する事項についても盛り込まれている。
EUのデジタル・ガバメント推進に当たっては、加盟国のコミットメントを基本原則とし、その進捗状況を管理することで各国間の競争を促し、EU全体としてデジタル・ガバメントの推進を加速させる仕組みが存在する。その中心となる施策が「eGovernment Benchmark」31である。本ベンチマークでは、「ユーザ中心志向(User Centricity)」、「透明性(Transparency)」、「国境を越えた移動性(Cross Border Mobility)」、「実現の鍵(Key-Enablers)」の四つの観点から様々な分析を行い、各国のデジタル・ガバメントの取組状況を評価している。
29 「EU eGovernment Action Plan 2016-2020」(欧州委員会、2016.4.19)(https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX:52016DC0179)
30 「Ministerial Declaration on eGovernment - the Tallinn Declaration」(欧州委員会、2017.10.6)(https://digital-strategy.ec.europa.eu/en/news/ministerial-declaration-egovernment-tallinn-declaration)
31 「eGovernment Benchmark 2020: eGovernment that works for the people」(欧州委員会、2020.9.23)(https://digital-strategy.ec.europa.eu/en/library/egovernment-benchmark-2020-egovernment-works-people)