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第2部 基本データと政策動向
第4節 放送政策の展開

3 放送コンテンツ流通の促進

(1)放送コンテンツの製作・流通の促進

ア 放送コンテンツの流通を支える配信システム及びネットワークの在り方

動画配信サービス等の普及に加え、今後、放送事業者による同時配信等(同時配信、追っかけ配信及び見逃し配信をいう。以下同じ。)が本格化することが見込まれる中、通信トラヒックの増加に備えて、放送コンテンツの流通を支える効率的な配信システム及びネットワークの確立を図ることが求められる。

総務省では、2020年度(令和2年度)に地域IX・CDN等を活用した効率的・安定的なインターネットコンテンツ配信の在り方に係る実証事業を実施した。宮城、広島エリアにおいて、CDNを接続した県域IP網等を活用することにより、地域における最適なネットワーク構築の在り方、最適なコンテンツ配信基盤の検討及びそれらを活用した地域におけるビジネスモデルに関する検証を行った。地域の事業者による適切な設備投資、新たな地域サービス創出及び地域事業のビジネスモデルの変革等の促進に向けて技術・運用及びビジネスモデル面の課題及び有効な方策案を取りまとめた。

イ 放送コンテンツの適正かつ円滑な製作・流通の確保

放送コンテンツの適正かつ円滑な製作・流通の確保については、視聴環境の変化を踏まえ、放送コンテンツの適正な製作取引の推進及び放送事業者による同時配信等に関する権利処理について取組むことが重要であり、前者に関しては、「放送コンテンツの製作取引適正化に関するガイドライン」(以下「ガイドライン」という。)の周知・啓発の徹底、取引実態の調査の実施、ガイドラインの見直し等が必要であり、後者に関しては、放送事業者のビジネスモデルの具体像が明確となる段階に備えて、権利処理方法の形成に向けた取組を継続して行うことが必要である。

また、規制改革実施計画においても、製作取引について、実態調査やガイドラインの見直し等に取り組むとともに、取引の透明性向上や更なる適正化に資する法的措置を含む取引ルールの策定やその執行の強化について検討することなどとされたほか、権利処理については、放送業界の現状の課題や要望を具体的に取りまとめた上で権利者や関係者等から意見聴取を行い、同時配信等に係る権利処理の円滑化のための制度改正を行うこととされた。

これらを踏まえ、総務省では、製作取引に関しては、有識者等で構成される「放送コンテンツの適正な製作取引の推進に関する検証・検討会議」(座長:舟田正之 立教大学名誉教授)を開催し、同会議での議論等に基づき、2020年(令和2年)9月に著作権の帰属等に関する契約形態別の類型化や、雛型の充実等を改訂内容とするガイドライン(第7版)を公表するとともに、放送事業者に対して、下請中小企業振興法(昭和45年法律第145号)第4条に基づく助言としてガイドライン遵守に係る要請文書を発出したほか、番組製作会社団体に対して、加盟各社への周知を要請した。

また、総務省では、ガイドラインの周知・啓発のため、講習会をオンラインで開催したほか、ガイドラインの遵守状況について、放送事業者及び番組製作会社に対し、ヒアリング等の実態把握を進めており、発覚した問題点については、下請中小企業振興法第4条に基づく指導等を行っている。さらに、これら周知・啓発及びガイドライン遵守状況の実態把握に係る取組に加え、製作取引に関する個別具体的な問題について、弁護士に無料で相談できる窓口「放送コンテンツ製作取引・法律相談ホットライン」を2020年(令和2年)6月から2021年(令和3年)2月末まで開設した。

同時配信等に係る権利処理に関しては、有識者等で構成される「ネット同時配信に係る権利処理に関する勉強会」を開催し、我が国における同時配信等の実施状況を踏まえ、円滑な権利処理の実現に向けて必要な対応策の検討等を進めている。2020年(令和2年)8月には、同時配信等に係る権利処理の円滑化に関する放送事業者の要望を取りまとめ、著作権法(昭和45年法律第48号)を所管する文化庁に提出した。その後、文化庁とともに権利者や関係者等から意見を聴取し、制度改正の方向性を検討した。なお、「著作権法の一部を改正する法律案」は2021年(令和3年)3月に国会に提出され、同年5月に成立した。

ウ 放送分野の視聴データ活用とプライバシー保護の在り方

視聴データの収集、分析により、趣味趣向や興味関心等の個人属性の推定が可能であり、視聴データを活用することで、視聴者に多様で利便性の高いサービスを提供することが可能となる。一方で、放送局に求められる公共性と視聴者の信頼を維持するため、プライバシー保護に十分配慮した取扱いが必要であり、総務省において「放送受信者等の個人情報保護に関するガイドライン」(2017年(平成29年)総務省告示第159号。以下「放送分野ガイドライン」という。)を制定している。

今般、「個人情報の保護に関する法律」(2003年(平成15年)法律第57号)が改正されたことを踏まえ、2021年(令和3年)4月より「放送分野の視聴データの活用とプライバシー保護の在り方に関する検討会」を立ち上げ、新設された「仮名加工」や「個人関連情報」等を主な論点とし、放送分野ガイドラインの改定に向けた検討を行い、2022年(令和4年)4月1日までに放送分野ガイドラインを改定予定である。

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