ここまでコロナ禍が企業活動に及ぼした影響についてマクロレベルで見てきたが、第1項で述べたように、企業業績の回復は、業種によってばらつきが生じており、我が国では製造業や、小売・通信といった業種が回復基調にあることを示した。
ここでは、具体的にどのような企業が業績回復を牽引しているか、我が国及び我が国よりさらに回復が進んでいるとされる米国を比較する形でみていくこととしたい。
まず、日米の上場企業の利益率の変化をみる。直近四半期の前年からの変化を見ると、売上高営業利益率が5%以上増加した企業の割合は、日本企業は9.6%であるのに対し、米国企業は17.5%となっている。なお、変化の分布は日米ともに左右対称に近い(図表2-3-3-1)。
続いて、コロナ禍においてどのような企業が業績を伸ばしているかについて、2020年の日米上場企業の営業利益をみると、米国では、GAFAやマイクロソフトなどデジタル化の追い風を受けた「TECH企業」が軒並み業績を伸ばしている。日本では、トヨタ自動車や本田技研といった自動車産業が減益となる一方、KDDI、ソフトバンク、ソニー、任天堂といったICT産業やゲーム業界は、オンライン消費の拡大を背景に増益となっている(図表2-3-3-2)。
さらに、2020年1月末から2021年1月末にかけての日米上場企業の時価総額の変化をみると、日米ともにICT関連業種の時価総額が大きく伸びており、これらの業種が業績回復を牽引している様子がみてとれる(図表2-3-3-3、図表2-3-3-4)。