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第1部 特集 デジタルで支える暮らしと経済
第3節 公的分野におけるデジタル化の現状と課題

1 我が国のデジタル・ガバメントの取組

(1)我が国における電子政府・電子自治体推進の経緯

我が国における電子政府・電子自治体推進の経緯を振り返ると、目指す姿や重点的な取組の特徴によって大きく5つの時代に区切ることができる(図表1-3-1-1)。

図表1-3-1-1 我が国における電子政府・電子自治体推進の経緯
(出典)総務省(2021)「デジタル・ガバメントの推進等に関する調査研究」
ア コロナ禍以前の取組

我が国における電子政府・電子自治体推進は、1990年代半ばのインターネット商用利用開始を契機としたIT革命を背景に、5年以内に世界最先端のIT国家となることを目標に掲げた「e-Japan戦略」(2001)から取組が本格化した。e-Japan戦略の下、まずはオンライン手続の基盤となる行政内部の電子化やネットワークインフラ整備、法やルールの整備等が推進された。

基盤整備が当初計画よりも前倒しで進んできたことを受け、2003年(平成15)に「e-Japan戦略II」が策定された頃から、国民によるITの利活用や利便性向上を目指した取組が推進され、電子政府・電子自治体においては、国に対する申請・届出等手続についてオンライン利用拡大に向けた取組が推進された。

2008年の百年に一度とも言われる金融危機に伴う経済失速、またデジタル技術の急速な進展を背景に、2009年頃から、真に国民によって受け容れられるデジタル社会、及び国民に開かれた電子政府・電子自治体を目指す取組が推進された。政府CIO制度導入等のITガバナンス強化が進められるとともに、オープンガバメント確立における重点施策として、オープンデータ化推進の取組も開始された。

2010年代半ばの「データ大流通時代」の到来を背景として、2016(平成28)年に官民データ活用推進基本法が施行され、翌2017(平成29)年5月、「世界最先端IT国家創造宣言」に官民データ活用推進基本法に規定された政府の「基本的な計画」とを含む「世界最先端IT国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」2が策定されて以降は、行政サービスにおいても官民データの利活用を前提とした「デジタル技術の活用による利用者中心サービス」及び「官民協働によるイノベーションの創出」を掲げた「デジタル・ガバメント推進方針」3及び「デジタル・ガバメント実行計画」4の初版が策定され、2019(令和元)年12月に施行されたデジタル手続法5に基づきデジタル前提で行政サービスの改革を図る「デジタル・ガバメント」の実現に向けた取組が推進されている。

イ コロナ禍を受けた今後のデジタル強靱化社会の構築に向けた検討状況
(ア)検討の経緯

2020(令和2)年7月の「経済財政運営と改革の基本方針2020〜危機の克服、そして新しい未来へ〜(骨太方針2020)」6では、「次世代型行政サービスの強力な推進―デジタル・ガバメントの断行」を最優先政策課題と位置付け、今回の感染症対策で明らかになった様々な課題を受け、データの蓄積・共有・分析に基づく不断の行政サービスの質の向上こそが行政のデジタル化の真の目的であるとした。

また、同日に公開された「世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」7においては、「デジタル強靱化社会」の構築を進めることが重要であると述べ、IT基本法の全面的な見直しにより新たな基本理念や方針を規定するとともに、政府全体に横串を刺した社会全体のデジタル化の取組の抜本的強化を図るとした。

これらを踏まえ、菅義偉首相は、2020年(令和2)9月23日に開催されたデジタル改革関係閣僚会議において、行政の縦割りを打破し、大胆に規制改革を断行するためのデジタル庁の創設、及びIT基本法の抜本改正を指示した。これを受けて、デジタル・ガバメント閣僚会議の下に設置されたデジタル改革関連法案ワーキンググループは、同年11月、デジタル社会の将来像と、それを実現するためのIT基本法の見直し及びデジタル庁設置の考え方をまとめた「デジタル改革関連法案ワーキンググループとりまとめ」8を公表した。また、同じく閣僚会議の下に設置されたデータ戦略タスクフォースは、同年12月、21世紀のデジタル国家にふさわしいデータ戦略の方向性等をまとめた「データ戦略タスクフォース 第一次とりまとめ」9を公表した。

(イ)IT基本法の見直しとデジタル庁設置によるデジタル改革の推進

前述の「ワーキンググループとりまとめ」では、デジタル社会の目指すビジョンとして「デジタルの活用により、一人一人のニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会 〜誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化〜」と掲げ、このようなデジタル社会を形成するため、10の基本原則を大方針として施策を展開することとした(図表1-3-1-2)。

図表1-3-1-2 デジタル社会を形成するための基本原則
(出典)内閣官房(2020)「デジタル改革関連法案ワーキンググループとりまとめ」

これらを踏まえ、2020(令和2)年12月、「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」10が閣議決定された。基本方針では、デジタル化によって、多様な国民がニーズに合ったサービスを選択でき、国民一人ひとりの幸福に資する「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化」を進めることを掲げ、取組事項として「ネットワークの整備・維持・充実」、「データ流通環境の整備」、「行政や公共分野におけるサービスの質の向上」、「人材の育成、教育・学習の振興」、「安心して参加できるデジタル社会の形成」の5項目を示した。また、デジタル庁を2021(令和3)年9月1日に発足させるため、内閣官房に準備室を立ち上げることが示された。

2020(令和2)年12月、改定版「デジタル・ガバメント実行計画」11も閣議決定された。本計画では、今般の感染症対応を通じて指摘された課題は、これまで解決を目指してきた課題が表面化したものと捉え、デジタル・ガバメント推進のための取組を新たな司令塔の下で計画的かつ実効的に進めていくとしている。

総務省は、実行計画における各施策について、自治体が重点的に取組むべき事項・内容を具体化するとともに、総務省及び関係省庁による支援策等をとりまとめ、同年12月、「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画」12(以下「自治体DX計画」という。)として公表した。

その後、2021(令和3)2月には、デジタル社会の形成に関する施策を迅速かつ重点的に推進するため、デジタル社会の形成に関する行政事務の迅速かつ重点的な遂行を図ることを任務とするデジタル庁を設置するデジタル庁設置法案を含めたデジタル改革関連6法案13が閣議決定され、同年5月に国会で可決・成立し、公布された。

さらに、同年6月には「デジタル社会の実現に向けた重点計画」が閣議決定された。同計画は、デジタル社会形成基本法(令和3年法律第35号)の施行(2021年9月1日)を見据え、同法第37条第1項に規定する「デジタル社会の形成に関する重点計画」に現時点において盛り込むべきと考えられる事項を示したもので、我が国が目指すデジタル社会と推進体制や、デジタル社会の形成に向けた基本的施策が記載されている。



2 「世界最先端IT国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」(IT総合戦略本部 官民データ活用推進戦略会議、2017.5.30)(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kettei/pdf/20170530/honbun.pdfPDF

3 「デジタル・ガバメント推進方針」(IT総合戦略本部 官民データ活用推進戦略会議、2017.5.30)(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kettei/pdf/20170530/suisinhosin.pdfPDF

4 「デジタル・ガバメント実行計画」(eガバメント閣僚会議決定、2018.1.16初版)(https://cio.go.jp/sites/default/files/uploads/documents/densei_jikkoukeikaku.pdfPDF

5 「情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律」(平成十四年法律第百五十一号)

6 「経済財政運営と改革の基本方針 2020 〜危機の克服、そして新しい未来へ〜(骨太方針2020)」(2020.7.17閣議決定)(https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/2020/2020_basicpolicies_ja.pdfPDF

7 「世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」(2020.7.17閣議決定)(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kettei/pdf/20200717/siryou1.pdfPDF

8 「デジタル改革関連法案ワーキンググループとりまとめ」(デジタル・ガバメント閣僚会議 デジタル改革関連法案ワーキンググループ、2020.11.26)(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/dgov/houan_wg/dai4/siryou4.pdfPDF

9 「データ戦略タスクフォース 第一次とりまとめ」(デジタル・ガバメント閣僚会議決定、2020.12.21)(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/dgov/dai10/siryou_a.pdfPDF

10 「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」(2020.12.25閣議決定)(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/dgov/201225/siryou1.pdfPDF

11 「デジタル・ガバメント実行計画」(2020.12.25閣議決定)(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/dgov/201225/siryou5.pdfPDF

12 「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画」(総務省、2020.12.25)(https://www.soumu.go.jp/main_content/000726912.pdfPDF

13 デジタル社会形成基本法(令和3年法律第35号)、デジタル庁設置法(令和3年法律第36号)、デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律(令和3年法律第37号)、公的給付の支給等の迅速かつ確実な実施のための預貯金口座の登録等に関する法律(令和3年法律第38号)、預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律(令和3年法律第39号)及び地方公共団体情報システムの標準化に関する法律(令和3年法律第40号)。

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