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第1部 特集 デジタルで支える暮らしと経済
第1節 国民生活におけるデジタル活用の現状と課題

(2)パーソナルデータの活用に係る意識や課題・障壁

パーソナルデータの提供に関する消費者の意識について、令和2年版情報通信白書でも取り上げているが、コロナ禍を経て、何らかの変化があったのか見ていきたい。

令和2年版情報通信白書では、データ流通に関する消費者及び企業の意識を調査するためのアンケートを実施している。このアンケートによると、我が国の消費者のうち、パーソナルデータの提供に対して不安を感じていると回答した割合は8割を超えており、欧米の消費者に比べて不安を感じる消費者の割合が依然として多いとの結果が出ている。

それでは、現時点で消費者は自分の情報を企業に提供することについてどのような意識を持っているのだろうか。パーソナルデータ流通に係る消費者の意識を調査するため、2021年3月にインターネットを通じ、日本、米国、ドイツ及び中国の各国1,000人を調査対象とするアンケート調査を実施した13

ア パーソナルデータの提供についての不安

企業等が提供するサービスやアプリケーションを利用するに当たりパーソナルデータを提供することについてどのように思うか聞いたところ、各国とも、不安を感じている14(「あてはまる」又は「どちらかといえばあてはまる」)割合は6割を超えた(図表1-1-4-5)。国別に見ると米国が73%と最も高く、次いで中国で68%だった。2020年の調査結果と比較すると、我が国においては、不安に感じる割合がおよそ12ポイント(78%→66%)低下しており、パーソナルデータの提供への抵抗感がやや薄まりつつあることがうかがえる。中国でもおよそ6ポイント(74%→68%)の低下がみられた。他方、米国は6ポイント(67%→73%)、ドイツは2ポイント(65%→67%)増加しており、各国間での差は縮まりつつある。米国やドイツにおいて不安に感じる消費者が増加している背景には、影響力を増しているデジタル・プラットフォーマーに対する懸念があるものと考えられる。

図表1-1-4-5 サービス・アプリケーションの利用に当たってパーソナルデータを提供することへの不安
(出典)総務省(2021)「ウィズコロナにおけるデジタル活用の実態と利用者意識の変化に関する調査研究」
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また、パーソナルデータの提供について、特にどのデータの提供に不安を感じているか調べるため、データの種別ごとに尋ねたところ、各国ともに「口座情報・クレジットカード番号」、マイナンバーなどの「公的な個人識別番号」、「生体情報」といったデータについては不安に感じる割合が多かった。一方で、「年代」や「趣味」、「身長・体重」といったデータについては不安でないと回答した割合が多かった。

また、日本については、「氏名・住所」、「連絡先」、「位置情報・行動履歴」で他国より大きく上回る一方、「年代」、「身長・体重」、「趣味」など米国やドイツを下回る結果のものもあった(図表1-1-4-6)。

図表1-1-4-6 提供に当たって不安に感じるパーソナルデータ
(出典)総務省(2021)「ウィズコロナにおけるデジタル活用の実態と利用者意識の変化に関する調査研究」
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本設問について前回調査時との比較を行うと、いずれの国においてもグラフの形状に大きな変化はなく、不安に感じるパーソナルデータに係る傾向に大きな変化がないことが見てとれた。また、今回の調査では、いずれの国においても「商品購買等の履歴」については、提供に不安を感じるとの回答が前回を上回った15図表1-1-4-7)。

図表1-1-4-7 提供に当たって不安に感じるパーソナルデータ(前回調査との比較)
(出典)総務省(2021)「ウィズコロナにおけるデジタル活用の実態と利用者意識の変化に関する調査研究」
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パーソナルデータの提供に不安を感じる理由について尋ねたところ、日本では、「外部への流出」、「プライバシー保護」、「データの提供先が不明」、「提供先企業による悪用」といった回答が上位を占める結果となった(図表1-1-4-8)。

図表1-1-4-8 パーソナルデータの提供に不安を感じる理由
(出典)総務省(2021)「ウィズコロナにおけるデジタル活用の実態と利用者意識の変化に関する調査研究」
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なお、米国やドイツでは、「外部への流出」、「提供先企業による悪用」が、中国では、「プライバシー保護」、「データの使途が不明」といった回答が上位を占めている。

イ パーソナルデータの提供意向と利用目的

次に、利用目的ごとのパーソナルデータの提供の意向について尋ねた質問では、各国ともに大規模災害や健康・福祉に関わる場合など、公共の目的で用いる場合に提供してもよい(「提供してもよい」又は「条件によっては提供してもよい」)と回答した割合が、「新しい商品や新しいサービスの開発に活用」など、企業等の事業目的に用いる場合に比べて高くなった(図表1-1-4-9)。また、企業の利用であっても「企業の経営方針の策定」などの場合よりも、自分への経済的なメリットが受けられる場合など、利用者に何らかのメリットがある場合には提供しても良いとの回答が高くなっている。中国においては、全般的に提供しても良いと回答した割合が他国に比べて高くなった。国別に見ると、中国の消費者はその利用目的についても他国の消費者に比べ、パーソナルデータを提供することに前向きであることが見て取れる。

図表1-1-4-9 利用目的ごとのパーソナルデータの提供意向
(出典)総務省(2021)「ウィズコロナにおけるデジタル活用の実態と利用者意識の変化に関する調査研究」
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本設問について前回調査時との比較を行うと、日本、米国及びドイツでは、全般的に前回の回答を下回る結果となっており、公共目的・民間目的のいずれにおいても、パーソナルデータの提供に慎重になりつつある傾向がうかがえる。他方、中国は、一部を除いて、前回の回答を上回る結果となっており、パーソナルデータの提供に積極的である様子が見てとれる(図表1-1-4-10)。

図表1-1-4-10 利用目的ごとのパーソナルデータの提供意向(前回調査との比較)
(出典)総務省(2021)「ウィズコロナにおけるデジタル活用の実態と利用者意識の変化に関する調査研究」
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13 総務省(2021)「ウィズコロナにおけるデジタル活用の実態と利用者意識の変化に関する調査研究」

14 2020年調査では、「とても不安を感じる」、「やや不安を感じる」、「あまり不安を感じない」、「全く不安を感じない」及び「よく分からない」の5択で、2021年調査では「(不安を感じると)あてはまる」、「(不安を感じると)どちらかといえばあてはまる」、「(不安を感じると)どちらかといえばあてはまらない」「(不安を感じると)あてはまらない」及び「よくわからない」の5択で質問し、それぞれ前2択の回答の合計を「不安を感じる」とした。

15 今回の調査で4か国とも上回った理由として、昨年の調査における選択肢が「商品購買等の履歴」であったのに対し、今年の調査では選択肢を「商品購買や、預金引き出し等の取引履歴」に変更したことによる影響と考えられる。

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