総務省トップ > 政策 > 白書 > 令和3年版 > サプライチェーンの分断に伴う生産拠点の移転等
第1部 特集 デジタルで支える暮らしと経済
第3節 コロナ禍における企業活動の変化

2 サプライチェーンの分断に伴う生産拠点の移転等

コロナ以前の世界では、世界規模での分業体制(グローバル・バリューチェーン)が形成され、我が国企業の活動も、国境を越えて構築されたサプライチェーンを前提に行われてきたが、この間、グローバル市場において中国の台頭が急速に進み、米国との間で通商、技術、経済安全保障、人的交流など多岐にわたる対立(デカップリング)を引き起こした結果、世界規模でのサプライチェーンの分断を招くこととなり、我が国企業の活動にも大きな影響を及ぼすこととなった。

その後、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行に伴い、各国において出入国の制限が講じられた結果、人流・物流の不活発化がもたらされることとなり、世界規模でのサプライチェーンの寸断が拡大している(図表2-3-2-1)。

図表2-3-2-1 新型コロナウイルスを受けたサプライチェーンの寸断
(出典)経済産業省(2020.5.26)「第7回産業構造審議会通商・貿易分科会」

このような事態を受け、欧州や日本など米中以外を最終需要地とする財の生産にもサプライチェーンの見直しの影響が及ぶ可能性があるほか、コロナ禍における経済活動の停滞が雇用などにも影響し、所得格差や貧困の拡大による社会の分断も懸念されている。

我が国企業においても、このようなサプライチェーンの分断を受けて、これまで中国に設けていた生産拠点を第三国に移転させたり、国内に回帰させるといった動きが、コロナ禍前後から見られるようになった(図表2-3-2-2)。

図表2-3-2-2 日本企業の生産拠点の移転事例
(出典)総務省(2021)「ポストコロナの経済再生に向けたデジタル活用に関する調査研究」(ジェトロ『地域・分析レポート』(2020年1月10日)
「特集:米中摩擦でグローバルサプライチェーンはどうなる?米中貿易摩擦の日本企業への影響(その1)対中制裁関税などへの対応に苦慮」に着色加工)

また、日本政策投資銀行の調査によると、企業が実際に取り組んでいるサプライチェーン見直しの取組としては、調達先の分散・多様化、製品・部品の標準化・規格化、他企業との共助体制の強化などを実施している(図表2-3-2-3)。

図表2-3-2-3 サプライチェーンの見直しの内容
(出典)成長戦略会議(2020.11.13)資料2

今後、我が国の経済社会システムをレジリエントなものへと進化させていくには、米中対立などの国際情勢の変化や新たな感染症の流行などの緊急事態が生じた場合でも、経済活動を維持できるような強靱なサプライチェーンの構築が一つの課題となっている。



2 日本政策投資銀行「企業行動に関する意識調査(大企業)」、「企業行動に関する意識調査(中堅企業)」(2020年8月5日公表)を基に作成されている。2020年6月22日を回答期限として、企業を対象に実施したアンケート調査。回答数は、大企業212社、中堅企業499社。

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