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第2部 基本データと政策動向
第7節 ICT研究開発の推進

(2)未来ICT基盤技術

ア 超高周波ICT技術に関する研究開発

総務省及びNICTでは、ミリ波、テラヘルツ波等の未開拓の超高周波帯を用いて、新しい超高速無線通信方式や、センシングシステムの実現を目指した基盤技術の研究開発を実施している。2020年度(令和2年度)は、超高周波領域での通信・計測システムに適用可能な高安定光源の研究開発に関し、昨年度開発した106を超える高Q値窒化シリコン微小共振器用いて100GHz間隔の光Kerrコムを発生し、そこから得られたテラヘルツ出力と周波数の評価を行った。更に、測定範囲を300GHz超まで拡大した周波数測定を可能とした。また、これまでに開発した300GHz帯トランシーバー技術をベースに、システム化に不可欠な制御用集積回路を作製するなど、大容量300GHz無線映像伝送システム実現に必要な要素技術を開発した。

イ ナノICT技術に関する研究開発

NICTでは、ナノメートルサイズの微細構造技術と新規材料により、光変調・スイッチングデバイスや光子検出器等の性能を向上させる研究開発を実施している。2020年度(令和2年度)は、Si/有機ポリマーハイブリッド超高速光変調器の構造最適化により、前年度よりも高効率の光変調(VπL=0.69)を確認した。また、EOポリマー膜の汎用的な転写プロセス技術世界で初めて開発し、グラウンド電極を有するEOポリマー導波路THz検出器を試作し、100GHz電磁波による直接光変調を実証した。さらに、850nm帯SSPDを設計・作製・評価し、1カウント/秒以下の暗計数率で90%を超える検出効率を達成した。また、16ピクセルSSPDアレイとSFQ信号処理を組み合わせて1550nmの光波長において80%以上の検出効率を実現すると同時に、1nsの時間間隔で入射する光子を検出効率の著しい劣化なく検出できることを実証した。

ウ 脳ICT技術に関する研究開発

NICTでは、人の認知、行動等に関わる脳機能メカニズム解明を通じて、高齢者や障がい者の能力回復、健常者の能力向上、脳情報科学に基づいた製品、サービス等の新しい評価方法の構築等に貢献する脳型情報処理技術、高精度な脳活動計測や脳情報に係るデータの統合・共有・分析を実現する技術等を研究開発している。

2020年度(令和2年度)は、脳型情報処理技術に関しては、高齢者の手の不器用さと運動野の半球間抑制機能の劣化との関係を明らかにし、この抑制機構を改善して、手の器用さを向上させることができるトレーニング法を企業と連携して開発し、効果を実証した。また、脳活動計測技術では、新しいMRI解析手法を開発し、従来よりも高速な白質と灰白質の描出に成功した。さらに、脳波を用いたニューロフィードバックシステムにゲーミフィケーションを導入し、これまでよりも短い時間で音素に関するリスニング能力の向上を実現できることを示した。

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