総務省トップ > 政策 > 白書 > 令和3年版 > これまでの電子政府・電子自治体推進における課題
第1部 特集 デジタルで支える暮らしと経済
第3節 公的分野におけるデジタル化の現状と課題

(2)これまでの電子政府・電子自治体推進における課題

我が国ではe-Japan戦略の策定以降、行政手続きのオンライン化、政府情報システム改革、ITガバナンスの強化等に取り組み、情報システムの運用コスト削減、またマイナンバー制度の導入や行政データの流通・活用を加速するための制度が整備されつつあるなど、行政組織内部の効率化や制度・インフラ面の整備では一定の成果を挙げており、コロナ禍においてもマイナポータルを利用した特別定額給付金申請の実現等に結実している一方、国民や事業者に提供する行政サービスにおいては未だに手続きの煩雑さが指摘され、マイナンバーカードのさらなる普及が必要であるなど住民が十分にデジタル活用の恩恵を受けているとは言い難い状況が続いている。これまでの電子政府・電子自治体推進における課題として、以下のような点が指摘されている。

ア ユーザー中心のサービス設計における課題

行政手続のオンライン化については、オンライン化自体に注力したため、単にこれまでの紙での手続を機械的にオンラインに置き換えるだけなど、利便性向上に向けた取組が十分に行われてこなかったことが指摘されている。行政や地方公共団体向け申請手続きの多くは、紙の申請用紙の項目と同様に氏名や住所等を手入力し、本人確認書類等を添付して送る方式となっており、行政側も紙と同じ業務フローで処理している。

住民に十分に活用され、住民と行政双方においてデジタルの価値を十分に享受できる行政サービスを実現するには、「いかなる価値を誰に対して生み出すか」という視点で、これまでの業務やビジネスデザインをゼロベースで徹底して見直す必要がある。従来の業務を単にデジタル化するだけではなく、デジタル化を阻害する制度や慣習の撤廃まで含め、デジタルを前提としてサービス全体を構築すること、国の機関のみならず、地方公共団体や民間のサービスが連携し、一連のサービスとして機能することが求められる。

イ データやサービスの組織間連携における課題

現状では、行政保有データは部署ごと、情報システムごとに個別に収集・管理されていることが多く、一度提出した情報は再提出不要とするワンスオンリーの原則の実現を阻害している。コロナ禍においても、組織間のデータ連携ができず十分な業務効率化が図られないケースが問題視された。

また、これまで地方公共団体のデジタル化推進については、総務省等により指針等を示しつつ各種支援策に取り組んできたが、地方公共団体の取組状況にはばらつきがあった。基幹系システムについては、事務処理の大半が法令で定められているにも関わらず各団体において個別に機能のカスタマイズ等を行っており、その結果、制度改正時の改修等における個別対応に大きな負担が生じているほか、クラウドによる共同利用が円滑に進まない要因にもなっていることが指摘されてきた。

今後は、デジタル庁が中心となり、ベース・レジストリ等のデータ基盤の整備を進めるとともに、地方公共団体の基幹システムについては標準化・共通化の方針が示されており、国と地方の十分な連携による行政サービスの実現や、社会環境や制度の変化への迅速かつ柔軟な対応に結び付くことが期待される。

ウ プロジェクトマネジメントと改善サイクルにおける課題

社会環境の変化や技術の進展が目まぐるしく、予測が困難な現代において、状況に臨機応変に対応するためには、制度や業務プロセス、情報システムの在り方について適宜評価し、継続、改善、中止等の判断を下していく必要がある。今般のコロナ禍において、政府や地方公共団体は、市民へ迅速な経済的支援を実施するため、また地域での感染状況やそのリスクの把握のため、新しい情報システムを相次ぎ立ち上げたが、トラブルに見舞われるケースも多かった。その要因の一つに、行政組織におけるプロジェクトマネジメント力の不足が指摘されている。

社会の変化や技術の変化をリアルタイムで取入れるため、またユーザーの意見を取り入れながら少しずつサービスを改善していくためには、調達時点だけでなくシステムのライフサイクルを通じて状況や課題を把握し、効果を検証していく必要がある。今後、ユーザー中心のサービス改革を推進していくにあたり、プロジェクトマネジメント力の強化と改善サイクルの浸透が、より重要となってくる。

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