平成6年版 通信白書

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第1章 平成5年情報通信の現況

(1) 電気通信サービス

 5年の国内電気通信サービスに関して、契約数等については全体として伸び率が4年と比較して鈍化しているものの堅調に推移している。提供されるサービスについては、新たな電話サービスや専用線サービスの品目の追加等サービスの多様化が図られており、また、料金についても、電話の市外通話料金の値下げ、新たな選択制通話料金の提供が行われるなど料金の低廉化・多様化が進展してきている。
 電話サービスにおいては、契約数等の伸び率が鈍化している一方、NTTの加入者線交換機のデジタル化の進展等に伴い、新たな電話サービスや選択制通話料金の提供が開始され、また、市外通話料金の値下げが実施されるなど、電話サービスの多様化及び料金の多様化・低廉化が進展している。
 移動通信サービスにおいては、無線呼出しサービスの契約数は、前年同期比15.3%増と順調な増加傾向にあり、携帯・自動車電話サービスの契約数は、伸びは鈍化しているものの引き続き同18.8%増と高い伸びを示している。また、6年4月からは、携帯・自動車電話サービス等の分野において、移動機の売切り制が始まっている。
 専用サービスにおいては、企業等における高度化・高速化する情報通信に対する需要に支えられ、高速デジタル伝送サービス(64kb/s〜6Mb/s)の回線数は、伸びは鈍化しているものの同32.6%増と引き続き増加傾向にある。また、超高速デジタル伝送サービス(150Mb/s)等の新たなサービス品目の提供が開始されている。
 高速・高品質のデジタル公衆網であるISDNサービスは、利用者のニーズ、NTTの加入者線交換機のデジタル化の進展、ISDNサービス提供地域の拡大(同 9.7%増)等に支えられて、回線数が同55.7%増と増加傾向にある。
 このように高度化・多様化する電気通信サービスの中で、利用者にとっては、自己のニーズ・利用形態等に応じて事業者、サービス、料金、端末機器等を選択する幅が一層広まってきており、利用者の利便の向上が進展している。
 ア 電話サービス
 (ア)  契約数及びサービス提供地域
 (NTTの動向)
 NTTの加入電話契約数は、5年9月末現在 5,845万契約であり、伸び率は、対前年同期比 2.2%増となっている。
 契約数全体の9割以上を占める一般加入電話契約について、事務用と住宅用とに分けてみると、5年9月末現在、事務用は 1,807万契約(対前年同期比 1.3%増)、住宅用は 4,005万契約(同 2.7%増)である。契約数の伸び率でみると、3年度以降事務用の伸び率が住宅用よりも小さく、事務用、住宅用の伸び率は、それぞれ対前年同期比で 1.3ポイント、 0.4ポイント低下している(第1-1-2図参照)。
 (新第一種電気通信事業者の動向)
 長距離系新第一種電気通信事業者(第二電電(株)、日本テレコム(株)及び日本高速通信(株))3社の市外電話サービス契約数(ID登録数の3社単純集計)は、5年9月末現在、 2,376万契約(対前年同期比41.3%増)となっている。
 新事業者が市外電話サービスを提供している地域(一部地域の場合を含む。)を各社別にみると、5年度末現在、第二電電(株)及び日本テレコム(株)は全国(4年度より提供地域を全国に拡大)で提供しており、日本高速通信(株)は33都府県(同5県増)である(第1-1-3図参照)。
 一方、地域系新第一種電気通信事業者のうち、唯一加入電話サービスを提供している東京通信ネットワーク(株)(電話サービスの開始は昭和63年5月)のサービス提供地域は、東京・神奈川・千葉・埼玉・群馬・栃木・茨城・山梨・静岡の9都県の一部の地域であり、加入電話契約数は、5年9月末現在、 9,721契約(対前年同期比19.0%増)である。
 (イ) トラヒックの状況
 4年度における総通話回数と総通話時間(NTT、第二電電(株)、日本テレコム(株)、日本高速通信(株)及び東京通信ネットワーク(株)の5社合計)は、それぞれ 772.5億回(対前年度比 0.4%増)、36億9千万時間(同 2.0%増)と、伸び率は前年と比べて総通話回数で 2.0ポイント、総通話時間で 2.4ポイント低下している。
 総通話回数をNTTと新事業者(4社の合計)別にみると、NTTは 727.6億回(同 0.7%減)であるのに対して、新事業者は44.9億回(同24.7%増)となっており、総通話回数に占める新事業者のシェアは、前年度と比べ 1.1ポイント増加して 5.8%となっている。新事業者の通話回数の増加は主に県間通話によるものであり、NTTと新事業者を合わせた県間通話の通話回数は 144.5億回で総通話回数の18.7%を占めている。この県間通話回数をNTTと新事業者別にみると、NTTが 105.8億回、対前年度比 3.5%の減少であるのに対して、新事業者は38.7億回、同22.9%の増加である。これに伴い、新事業者の県間通話におけるシェアは前年度と比べ4.4 ポイント増加して26.8%となり増加傾向にある。
 また、東京都、大阪府、愛知県相互の通話をみると、新事業者の通話回数は、この3都府県相互間の通話回数の54.4%を占め、前年度と比べ 3.4ポイント増加しており増加傾向にある(第1-1-4図参照)。
 (距離段階別通話回数・通話時間)
 総通話回数及び総通話時間を「区域内通話」(3分間の通話が10円でかけられる単位料金区域の中に終始する通話)、中距離の「100km 以内」及び遠距離の「100km 超」のように距離段階別に分けると、区域内通話の通話回数及び通話時間は、 503.9億回(総通話回数の65.2%)、21億4千万時間(総通話時間の58.1%)、100km 以内の通話が 201.8億回(同26.1%)、11億3千万時間(同30.7%)、100km を超える通話が66.8億回(同 8.6%)、4億1千万時間(同11.2%)であり、全通話に対して、区域内通話の占める割合が減少し、100km 以内及び100km を超える通話の占める割合が増加する傾向にある(第1-1-5図参照)。
 さらに、NTTと新事業者別に市外通話の通話回数及び通話時間を距離段階別の構成をみると、NTTの市外通話については、通話回数が223.7 億回(対前年度比 0.5%減)、通話時間13億1千万時間(同 0.1%減)と前年度より減少している。一方、新事業者の市外通話については、通話回数が、44.9億回(同24.7%増)、通話時間23億3千万時間(同39.5 %増)と、通話回数、通話時間ともに前年度より増加している。
 (通話時間別通話回数)
 総通話回数を通話時間別にみると、1分以内の通話の回数が 398.1億回(対前年度比 1.3%増)で最も多く、総通話回数の51.5%(同 0.4ポイント増)を占めている。この他に増加している通話では、10分を超える通話が42.5億回(同 2.6%増)であり、1分以内の通話と10分を超える通話の回数が増加傾向にある(第1-1-6図参照)。
 NTT、新事業者別に通話回数の構成をみると、NTTの増加している通話は1分以内の通話と10分を超える通話で、1分以内の通話が前年度より 0.6ポイント増加し52.1%に、10分を超える通話が同 0.1ポイント増加し 5.5%になっている。一方、新事業者の伸びている通話は5分を超える通話で、同 1.2ポイント増加し13.9%を占めている。
 (時間帯別通話回数)
 1日の時間帯別に総通話回数の構成をみると、9時から10時の1時間における通話回数が最も多く全体の 9.4%を占めている。昼間(8時から19時)は77.8%(対前年度比 0.2ポイント減)、夜間(19時から23時)・深夜早朝(23時から翌朝8時)は22.2%(同 0.2ポイント増)であり、昼間の割合が減少し、夜間及び深夜早朝の割合が増加する傾向にある。また、NTT、新事業者別の通話回数総数における時間帯別の通話回数構成比をみると、NTTでは昼間が77.0%(同 0.4ポイント減)、夜間・深夜早朝23.0%(同 0.4ポイント増)で、新事業者では昼間が87.3%(同 2.1ポイント減)、夜間・深夜早朝12.7%(同 2.1ポイント増)となり総通話回数と同様の傾向を示している(第1-1-7図参照)。
 夜間及び深夜早朝の割合が増加傾向にあるのは、4年度のNTT・新事業者4社による通話料金の値下げ、NTT・長距離系新事業者3社による選択制料金制度の提供開始等により、一般家庭で夜間の電話利用が増加していることなどが影響していると考えられる。
 (ウ) 加入者線交換機端子数
 5年12月末現在のNTTの加入者線交換機の総端子数は、 6,249万端子(対前年同期比 1.6%増)であり、このうち長距離系新事業者に加入契約が可能な端子であるID送出可能端子数は 6,127万端子で、総端子数に占める比率は98.0%(同 5.2ポイント増)である。また、高度な電話サービスや料金の多様化を実現するための基礎となるデジタル交換機の端子数は 4,198万端子で、総端子数に占める比率は67.2%(同12.3ポイント増)である。
 一方、新事業者である東京通信ネットワーク(株)の加入者線交換機の総端子数は、5年12月末現在、2万 7,097端子(対前年同期比19.4%増)であり、全端子がデジタル交換機の端子で、ID送出可能端子である。
 (エ) 電話サービスの多様化の状況
 利用者の電話サービスに対する高度化・多様化するニーズに対応して、新しいサービスの実用化が進められており、5年度から新たなサービスが提供開始されている。
 (大量情報提供サービス)
 5年11月からNTTにより、例えば災害時の緊急情報、プロ野球やJリーグ等の試合経過・結果等を、1本の回線で話中になることなく複数の利用者へ情報提供ができるサービスである大量情報提供サービスが提供されている。
 (電話投票サービス)
 5年11月からNTTにより、テレビ・ラジオ放送、新聞等のマスメディアを利用したアンケート等への、視聴者からの電話による投票結果をNTTが自動的に集計し、その結果を契約者に通知するサービスである電話投票サービスが提供されている。
 (VPN(仮想専用網)サービス)
 6年2月からNTTにより、契約者相互で構成したユーザーグループ内において、公衆網を利用しつつ、利用者にとっては、あたかも専用線による自営通信網を構築した場合と同様の効果を実現するサービスであるVPNサービスが提供されている。
 (迷惑電話おことわりサービスの試行)
 5年12月からNTTにより、いたずら電話等、受信者が受信したくない通話を事前に登録しておき、その通話をブロックするサービスである迷惑電話おことわりサービスが、利用者数・提供地域・期間等を限定し試験的に提供されている。
 イ ファクシミリ通信網サービス
 送信情報の蓄積機能等の付加機能がネットワークに付与され、ネットワークが同報通信等のサービスを提供するNTTのファクシミリ通信網サービスの契約数は、5年9月末現在、57万 4,357契約(対前年同期比12.1%増)である。昭和56年9月にサービスを開始して以来、契約数の伸び率は鈍化しているものの増加傾向にある(第1-1-8図参照)。
 ウ 移動通信サービス
 (ア) 無線呼出しサービス
 5年9月末現在、無線呼出しサービスの総契約数(NTT移動通信網(株)等地域別9社と新第一種電気通信事業者31社の合計)は 730万 459契約(対前年同期比15.3%増、伸び率は 1.3ポイント増)となり順調な増加傾向にある(第1-1-9図参照)。契約数が順調に伸びている理由としては、利用料金等の低廉化、機器等の機能の高度化による利便性の向上等により利用する人が増加しているためであると考えられる。
 総契約数をNTT移動通信網(地域別9社の合計)及び新事業者別にみると、NTT移動通信網(地域別9社の合計)の契約数は 451万 8,293契約(同11.5%増)、新事業者の契約数(新事業者31社の合計)は 278万 2,166契約(同22.0%増)である。総契約数における新事業者のシェアは、5年9月末現在38.1%であり、前年同期より 2.1ポイント増加している。
 (イ) 携帯・自動車電話サービス
 (サービスの動向)
 5年9月末現在、携帯・自動車電話サービスの総契約数(NTT移動通信網(株)等地域別9社と新事業者9社の合計)は 184万 6,612契約(対前年同期比18.8%増)で、伸び率は鈍化しているものの順調な増加傾向にある(第1-1-10図参照)。
 総契約数をNTT移動通信網(地域別9社の合計)及び新事業者別にみると、NTT移動通信網(地域別9社の合計)の契約数は 110万 9,273契約(同17.4%増)で、このうち、5年3月からNTT移動通信網(株)によりサービス開始されているデジタル方式の携帯・自動車電話サービス契約数は 1,136契約である。総契約数に占める新事業者の契約数(新事業者9社の合計)は、73万 7,339契約(同21.1%増)で、新事業者のシェアは、5年9月末現在39.9%(同 0.7ポイント増)となり、総契約数全体の約4割を占めるまでになっている。
 アナログ方式のサービスについては、既に全国でNTT移動通信網の地域別各社または新事業者のサービスを選択することが可能となっており、また、通信品質の向上、高度な秘話通信機能等の特徴を有するデジタル方式については、6年4月から一部の新事業者によるサービス開始、さらに先にサービス開始した事業者による提供地域の拡大や新たな新事業者によるサービス開始等が6年度には予定されている。
 一方、6年4月からアナログ方式及びデジタル方式について機器の売切り制が実施されており、利用者にとって、サービス方式、事業者、機器について、自己のニーズ等に従って選択できる幅が広がるなどサービスの向上が図られている。
 (トラヒックの状況)
 4年度における携帯・自動車電話の総通話回数と総通話時間(NTT、NTT移動通信網(株)、新事業者9社の11社合計)は、それぞれ19.1億回(対前年度比37.4%増)、4,770 万時間(同40.7%増)である。
 1通話当たりの平均通話時間を加入電話と比較すると、加入電話は2分52秒であるのに対して、携帯・自動車電話は約半分の1分29秒であり、携帯・自動車電話は簡潔な通話に利用されていることがうかがえる。
 また、距離区分別の通話状況をみると、 160km以内の通話では、通話回数が18.4億回(総通話回数の96.3%)、通話時間 4,480万時間(総通話時間の93.9%)であり、 160kmを超える通話では、通話回数が 0.7億回(同 3.7%)、通話時間 290万時間(同 6.1%)となっており、 160kmを超える通話が極めて少なく、近距離の通話を中心に利用されていることがうかがえる(第1-1-11図参照)。
 さらに、携帯・自動車電話と加入電話との相互通話の状況をみると、携帯・自動車電話から加入電話へ発信した通話回数は13.0億回、加入電話から携帯・自動車電話へ着信した通話回数は 5.0億回となっており、携帯・自動車電話が発信中心に利用されていることが分かる(第1-1-12表参照)。
 (ウ) その他の移動通信サービス
 第一種電気通信事業者が提供するその他の移動通信サービスとしては、従来からNTTが提供している船舶電話、列車公衆電話、航空機公衆電話等のサービスと、新事業者が提供を開始したサービスがある。
 NTT移動通信網(株)により提供されている船舶電話サービスの契約数は、5年9月末現在、2万 3,300契約(対前年同期比 2.4%増)で伸びが低下している。また、昭和61年にサービスが開始された航空機公衆電話は、5年9月末現在 204台(同24.4%増)が設置され、さらに、NTTにより提供されている列車公衆電話は、昭和40年に東海道新幹線においてサービスが開始された後、山陽、東北及び上越新幹線等と利用可能な列車が拡大され、5年9月末現在 1,520台(同11.6%増)が設置されており、設置台数が順調に増加している。
 一方、新事業者が提供する移動通信サービスであるマリネット電話サービスは、5年9月末現在3社がサービスを提供しており、総契約数は 3,823契約(同11.6%増)で伸びが鈍化している。同じく、簡易陸上移動無線電話(コンビニエンス・ラジオ・フォン)サービスは、5年9月末現在7社(同3社増)がサービスを提供しており、総契約数は1万 667契約(同45.1%増)と、会社数の増加とともに契約数も増加傾向にある。また、6年4月、マリネット電話及び簡易陸上移動無線の端末機器の売切り制が実施されており、この分野においても利用者の利便性向上が図られている。
 また、元年12月に日本シティメディア(株)がテレターミナルシステムによりサービスを開始したデジタルデータ伝送サービスの契約数は、5年9月末現在、 2,027契約(同38.2%増)である。
 エ 専用サービス
 専用サービスには、一般専用サービス、高速デジタル伝送サービス、映像伝送サービス、テレビジョン放送中継サービス、無線専用サービス等がある。専用サービスの分野で新たにサービスを開始した新事業者については、5年10月、中国通信ネットワーク(株)が一般専用サービス、高速デジタル伝送サービス、映像伝送サービスについてサービス提供を開始している。また、5年10月、NTTにより新たな超高速品目である 150Mb/s のサービスが提供開始されるなど各事業者によりサービス品目の追加が実施され、サービスの多様化が一層進展している。
 ここでは、近年伸び率が著しい高速伝送が可能な高速デジタル伝送サービスと、国内専用サービスの総回線数の9割以上を占める一般専用サービスについてその動向を概観する。
 (ア) 高速デジタル伝送サービス
 高速デジタル伝送サービスは、[1]データ伝送と電話を統合した利用、[2]LAN相互間の高速データ伝送、[3]広帯域を要するテレビ会議等の企業情報通信ネットワーク等の回線として利用されている。
 高速デジタル伝送サービスの総回線数(NTTと長距離系及び地域系新第一種電気通信事業者の合計10社の総数)は、5年9月末現在、2万 2,867回線(対前年同期比32.6%増)と大きな伸びを示している。このうち新事業者の回線数は 5,860回線(同30.1%増)で、総回線数におけるシェアは25.6%(同 0.5ポイント減)と総回線数の約1/4を占めるまでに成長している(第1-1-13図参照)。
 総回線数は、伸びが鈍化しているものの増加傾向にあり、なかでも回線数が大きく伸びている品目は64kb/s回線で 9,421回線(同60.1%増)であり、また、新事業者のシェアが高い品目は、 1.5Mb/s 回線40.6%(同2.1 ポイント増)、6Mb/s 回線47.0%(同5.8 ポイント増)と、全体として高速の回線品目の方がシェアが高いことがうかがえる。
 経済の低迷の影響等により回線数の伸び率は鈍化しているものの、需要は依然高く、増加傾向にある。
 (イ) 一般専用サービス
 一般専用サービスは、[1]電話、ファクシミリ通信、[2]銀行の預金業務のオンライン処理、[3]航空会社の座席予約業務のリアルタイム処理、[4]流通業のPOSシステム等のデータ伝送、[5]放送業のラジオ放送中継等に利用されている。
 一般専用サービスの総回線数(NTTと長距離系及び地域系新第一種電気通信事業者の合計10社の総数)は、5年9月末現在 101万 8,870回線(対前年同期比 2.9%増)である(第1-1-14図参照)。
 総回線数を帯域品目・符号品目別にみると、帯域品目の総回線数は68万 5,050回線(同 1.2%増)と増加傾向にある。このうち電話網相当の規格を有する3.4kHz回線と音声伝送回線が大部分(帯域品目の回線数の98.5%)を占めており、これらの回線数の合計は67万 4,855回線(同 1.2%増)である。
 一方、符号品目の総回線数は33万 3,820回線(同 6.6%増)と増加傾向にある。このうち50b/s 回線が26万 3,525回線(同 6.6%増)と符号品目の回線数の78.9%を占めており、また、前年同期比で伸びが大きい回線品目は、9,600b/s回線で4万 444回線(同14.4%増)となっている。
 また、新事業者の総回線数は1万 2,044回線であり、一般専用線の総回線数におけるシェアは 1.2%(同 0.3ポイント増)と小さい。
 帯域品目、符号品目ともに回線数の伸びは鈍化しているものの、回線数は増加傾向にある。
 オ デジタルデータ伝送サービス
 NTTの提供するデジタルデータ伝送サービスには、パケット交換サービス及び回線交換サービスがある(第1-1-15図参照)。
 パケット交換サービスの回線数は、5年9月末現在39万 8,741回線、(対前年同期比 9.6%増)である。特に、加入電話網を介してパケット交換網に簡単にアクセスできる第2種パケット交換サービスの回線数は、5年9月末現在35万 6,877回線(同12.4%増)で、伸びは鈍化しているものの増加傾向にある。回線交換サービスは2年度以降減少しており、5年9月末現在 7,058回線(同14.2%減)である。
 一方、新第一種電気通信事業者のうち、唯一デジタルデータ伝送サービスを提供している中部テレコミュニケーション(株)によるパケット交換サービスの回線数は、5年9月末現在 221回線である。
 カ ISDNサービス
 ISDNサービスは、音声による通信、ファクシミリ、データ及び映像等の情報を大量に、高品質かつ経済的に伝送したいという高度化、多様化する情報通信の需要に応えるため、デジタルネットワークにより提供されている公衆サービスである。現在、NTTが提供しているISDNサービスには、基本インタフェースによるINSネット64と、より高速な通信も可能なINSネット1500がある。さらに、通信形態に応じた通信モードの選択が可能であり、通信モードの種類には、通話、デジタル通信(64kb/sのほか、1次群インタフェースは384kb/s及び1.5 Mb/s の選択が可能)、パケット通信がある。また、通話中着信通知、フレックスホン等の電話サービスよりも高度な付加サービスもある。
 INSネットサービスの主な利用用途としては、INSネット64についてはコンビニエンスストアの売上高管理等のデータ通信、高精細なファクシミリ通信等を中心に、またINSネット1500についてはPBXやデータ通信等の企業通信システム、テレビ会議等の映像伝送等を中心に利用されていると考えられる。
 NTTにより提供されているISDNサービスは、5年12月末現在、サービス提供地域数が 2,546地域(対前年同期比 9.7%増)で、契約回線数は、INSネット64が21万 1,436回線(同55.7%増)、INSネット1500が 4,137回線(同49.4%増)である(第1-1-16図参照)。
 ISDNの利用は、専用線のバックアップとしての利用等から上記のような利用分野での形態が増えてきており、今後も契約回線数は増加していくものと考えられる。
 キ 衛星通信サービス
 衛星通信サービスは、衛星通信が有するサービスエリアの広域性、回線設定の柔軟性、伝達の同報性等の特徴を利用して、従来より離島通信、災害対策、臨時回線の設定等に利用されているほか、ケーブルテレビ局向け番組配給、テレビ中継、ニュースの現場取材(サテライト・ニュース・ギャザリング)、企業内映像情報伝送等の多様なサービスに通信衛星の利用が進展している。
 6年3月末現在運用中の通信衛星は、衛星を開発した宇宙開発事業団と現在利用しているNTT等が共同所有している通信衛星3号-a(CS-3a)及び通信衛星3号-b(CS-3b)、(株)日本サテライトシステムズのJCSAT-1及びJCSAT-2、宇宙通信(株)のスーパーバードA及びスーパーバードBの6機であり、トランスポンダ(電波中継器)数は 138本、(CS-3の24本、JCSATの64本、スーパーバードの50本)である。また、通信衛星を利用して情報の送受信を行う地球局として無線局免許を受けている数は、5年12月末現在 4,142局である。
 ク 電報サービス
 NTTにより提供されている電報サービスは、5年度上半期の電報通数が 2,166万通であり、昭和61年度以降総通数の増加傾向は続いていたが、4年度の通数が前年度より減少(対前年度比 0.5%減)し、5年度上半期についても対前年度同期比 0.7%の減少となっている(第1-1-17図参照)。昭和60年度以降にサービスが開始された「メロディ」、「押し花」等の付加価値電報の通数が慶弔電報に占める割合は増加を続けており、5年度上半期の付加価値電報の通数は 1,299万通で同 8.7%増となり、慶弔電報の通数の65.5%(伸び率 5.1ポイント増)を占めている。
 また、従来、漢字は、あらかじめ定められた文例でしか利用できなかったが、6年2月から、受取人の住所・氏名及び通信文について任意の漢字を使用できる漢字電報サービスが提供されている。
 ケ ビデオテックス通信サービス
 キャプテン方式によるビデオテックス通信サービスがNTTにより提供されており、ビデオテックス通信サービスの利用契約数は、6年2月末現在15万 6,253契約で対前年同期比13.4%増である。
 コ オフトーク通信サービス
 オフトーク通信サービスは、加入電話等の利用者に対して、電話等で使用されていない時の回線を利用し、情報提供センターから音声等により情報提供を行うためのサービスである。情報提供センターについては、自治体等が運営して行政情報、防災情報、生活情報等を提供するもの、農協・漁協等の協同組合が運営して農・漁業情報、市況情報等を提供するもの、企業等が運営して趣味・娯楽情報、ニュース等を提供するものなどがあり、地域に密着した情報提供の手段として役立てられている。
 NTTにより提供されているオフトーク通信サービスは、6年1月末現在、センター数が 159センター、契約数が22万 8,210契約である。
 サ 国内電気通信料金
 (ア) 電気通信料金の改定
 (電気通信料金の低廉化)
 近年、加入電話サービスを中心として、電気通信の各分野において料金の低廉化が進んでいる。日本銀行の「企業向けサービス価格指数」によると、全サービス業の総平均では昭和60年を 100とすると、5年の指数(5年1月から12月までの平均値)は 117.0であり17.0ポイント上昇しているのに対して、5年の国内電気通信の指数は88.4であり、11.6ポイント低下している。特に、無線呼出し(5年の指数70.0)、自動車電話(同73.8)、専用回線(同84.6)の指数が大きく低下している(第1-1-18図参照)。
 5年度においては、電話サービス、専用サービスの分野で料金の値下げが実施されている(第1-1-19表参照)。
 電話サービスの料金の値下げについては、5年10月、NTTにより、30kmを超える各距離区分の通話料金について、平年ベースで年 2,700億円規模の値下げ(なお、改定区間のダイヤル通話料収入に対する値下げ率は21.4%)が実施された。今回の値下げ実施により、[1]遠近格差が15年前と比べ、平日昼間3分通話した場合で1対72から1対18へと4分の1に縮小され、[2]距離区分が簡素化され10段階の区分が8段階になり、[3]中距離の遠近格差も縮小された。
 また、長距離系新事業者3社により、5年11月、エンドエンド料金の導入及び料金水準の引き下げが行われた。
 さらに、6年3月、東京通信ネットワーク(株)が電話料金体系の抜本的な改定を行い、施設設置負担金の廃止、基本料と通話料からなる二部料金制への変更、NTTとの接続通話についてエンドエンド料金制の導入、深夜早朝割引料金の新設等が実施され、料金水準も引き下げられた。
 移動通信サービスの料金について、携帯・自動車電話移動機の売切り制導入に伴い、6年4月、携帯・自動車電話、簡易陸上移動無線電話及びマリネット電話の全事業者により基本使用料の値下げが実施された。
 専用線サービスの料金について、6年2月、NTTにより高速デジタル伝送サービスの料金が平均10%値下げされた。また、6年4月、長距離系新事業者3社により一般専用サービス及び高速デジタル伝送サービスの料金が値下げされた。
 (公衆電話料金の改定)
 5年10月、NTTにより提供されている公衆電話サービスの分野で料金改定が実施され、市内通話はこれまで3分10円であった料金を1分10円(ただし、改定後半年間は90秒10円)に値上げし、市外通話は3分間の通話で20円相当額の値上げ(ただし、 160km超の距離区分では20円相当額の値下げ)を行った(第1-1-19表参照)。
 (イ) 電気通信料金の多様化
 電話等の料金の競争は、従来、料金水準面を中心に展開されてきたが、加入者交換機のSPC化の進展により多様な料金を導入できる設備面の環境が整備されてきたことなどから、近年、利用者のニーズ、利用形態の多様化等に対応した多様な料金が設定されるようになりつつある。
 5年度においては、電話サービス、移動通信サービス、専用サービスの各分野で、多様化した料金が各事業者において提供されている(第1-1-20表参照)。
 電話サービスの料金多様化として、5年11月NTTにより、通話料金について利用者の選択により毎月一定額を支払うことで、通話した時間帯・曜日に係わりなく市外通話料金を一定率割引く選択料金が提供された。
 また、5年12月から6年1月に長距離系新事業者3社により、通話料金について利用者の選択により毎月一定額を支払うことで、通話した時間帯・曜日に係わりなく通話料金を一定率割引く選択料金が提供された。
 さらに、6年3月東京通信ネットワーク(株)により、通話料金について利用者の選択により、[1]毎月一定額を支払うことで区域外通話を一定率割引く通話料金の月ぎめ割引制、[2]月単位で一定時間内定額料金とする時間ぎめ定額制の2種類の選択的料金制度が提供された。
 移動通信サービスの料金多様化としては、5年4月日本シティメディア(株)により、テレターミナル通信サービスの通信料金について[1]月間通信量が一定値までは通信料金を定額制とする料金制度、[2]夜間、深夜・早朝及び土曜・日曜・祝日の通信料金を割引く割引制度が提供された。また、6年4月、携帯・自動車電話の全事業者、簡易陸上移動無線電話の(株)テレコム青森及び釧路テレコム(株)により選択二部料金制が提供された。
 専用サービスの料金多様化としては、5年4月、中部テレコミュニケーション(株)により、高速デジタル伝送サービスの高額利用者に対する割引制度と、6年2月NTT、6年4月長距離系新事業者3社により、高速デジタル伝送サービスの長期継続利用に対する料金割引内容が拡充された。

第1-1-2図 事務用・住宅用一般加入電話契約数及び伸び率(前年同期比)の推移

第1-1-2図 長距離系新第一種電気通信事業者の電話サービス提供地域(5年度末現在)

第1-1-4図 NTT,新事業者の県間通話回数におけるシェア(4年度)

第1-1-5図 電話サービス 距離段階別通話回数及び通話時間(4年度)

第1-1-6図 電話サービス 通話時間別通話回数(4年度)

第1-1-7図 電話サービス 時間帯別通話回数の構成比(4年度)

第1-1-8図 ファクシミリ通信網サービス契約数の推移

第1-1-9図 無線呼出し契約数及び新事業者のシェアの推移

第1-1-10図 携帯・自動車電話契約数及び新事業者のシェアの推移

デジタル携帯・自動車電話を利用したデータ通信

第1-1-11図 携帯・自動車電話サービス 距離区分別通話回数及び通話時間

第1-1-12表 携帯・自動車電話と加入電話の相互通話状況(通話回数)

第1-1-13図 高速デジタル伝送サービス回線数及び新事業者のシェアの推移

第1-1-14図 一般専用サービス回線数の推移

第1-1-15図 デジタルデータ伝送サービス回線数の推移

第1-1-16図 ISDNサービス回線数及び提供地域数の推移

衛星通信を利用した移動局(奥尻島)

第1-1-17図 電報通数の推移

第1-1-18図 企業向けサービス価格指数の推移

第1-1-19表 5年度における主な通信料金の改定の状況

第1-1-20表 5年度における主な通信料金の多様化の状況

 

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