平成6年版 通信白書

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第3章 マルチメディアが拓く情報通信の新たな世界

(2) 新世代通信網整備の推進

 ア 電気通信基盤充実臨時措置法による支援措置
 新世代通信網の全国的な整備には、21世紀に向けて長期かつ多額の設備投資を必要とすることから、郵政省では、新世代通信網の整備を全国的に推進するため、国による支援として、3年から「電気通信基盤充実臨時措置法」に基づき、光ファイバ・同期デジタル伝送装置を用いた新しい通信網の整備を図る高度通信施設整備事業を推進している。同法の認定を受けることにより、特別償却、低利融資、地方税の軽減措置等各種の支援を受けることが可能となるもので、認定事業者に対する支援を通じて、新世代通信網の構築が一層推進されることが期待される。
 このうち特別償却については、6年度税制改正において、中継系の光ファイバが特別償却の対象として追加され、光ファイバ網整備に弾みがつくことが期待される。
 イ 超高速通信ネットワークの実用化の推進
 (ア)  超高速通信ネットワーク実験
 マルチメディア化の進展に向けて、大量のデータや画像情報の伝達などに対するニーズが高まっており、情報通信の高速化のための技術開発は次世代の経済力強化のための手段として、国を挙げて取り組む課題となっている。
 米国では、HPCCプログラムの中でNREN計画として超高速通信ネットワーク技術の研究開発が行われており、EUにおいても同様の計画が予定されている。
 我が国においても、将来期待されている超高速通信ネットワークの実現に向けて、5年度第三次補正予算で超高速通信ネットワーク実験施設の構築が認められており、6年度より、郵政省通信総合研究所と他の研究所の間を超高速回線で接続する実験施設を構築し、超高速通信におけるネットワーク運用・利用技術の研究開発等を行う予定である(第3-3-1図参照)。
 (イ)  超高速ネットワーク・コンピュータ統合化技術の研究開発
 通信ネットワーク及びスーパーコンピュータ等の情報処理装置はそれぞれ高速化・広域化・分散化が進んでおり、これらを有機的に連携することにより、遠隔リアルタイムビジュアライゼーション等従来は不可能だった大量のデータや画像等のマルチメディア情報を扱う様々なアプリケーションの提供が可能となる。
 米国においても、超高速通信ネットワーク技術の研究開発が行われており、我が国でも21世紀にはエンドユーザ間でギガビットレベルの通信速度が要求される。
 このため、6年3月に、基盤技術研究促進センターと民間企業の出資により、「(株)超高速ネットワーク・コンピュータ技術研究所」が設立され、約5年間の計画で超高速(ギガビットレベル)のネットワーク・コンピュータ統合化技術に関する研究開発を行うこととしている。
 研究成果は、科学技術・研究分野、企業等における生産活動分野、パーソナルユースを主体としたマルチメディア分野など多くの分野での活用が期待される。
 ウ 広帯域デジタル無線通信システムの実用化の推進
 いつでも、どこにおいてもマルチメディアの利用が可能な環境の実現のためには、光ファイバ等の高速・大容量の固定通信網整備とともに、これと整合性のある広帯域デジタル無線通信システムの開発が不可欠である。
 そこで、郵政省では、5年度第三次補正予算により、通信・放送機構に出資を行い、通信・放送機構では広帯域デジタル無線通信システムの研究開発を6年度から3年程度行うこととしている。
 この研究開発では、画像や高速データ等の大容量情報を伝送できる広帯域デジタル移動通信システムと新世代通信網における家庭、オフィス等のユーザと最寄りの基地局及び中継局とを大容量回線で接続できるデジタル無線アクセスシステムの研究開発を行っている。
 エ 大容量衛星通信の実用化の推進
 立体映像通信・バーチャルリアリティ通信・高品質HDTV等マルチメディアに対するニーズに対応するため、地上系通信においては、大容量通信網が進展していくと考えられるが、このような各地に点在する大容量通信網を接続するためには、多数の地点に回線を効率よく提供できる大容量衛星回線が適している。
 このような観点から郵政省通信総合研究所では、5年度第二次補正予算により、マルチメディア・パイロットモデル事業(新世代通信網パイロットモデル事業)と連携して6年夏に打ち上げられる予定のETS-VI(技術試験衛星VI型)に搭載された帯域幅240MHz広帯域中継器を用いて、同研究所鹿島宇宙通信センターと関西文化学術研究都市を結び、地上系大容量通信網とETS-VIの大容量衛星回線を接続することにより、高品質HDTV放送の地上通信網への伝送実験を行うこととしている。
 オ 広帯域インタラクティブケーブルテレビの実用化の推進
 フルサービス等ケーブルテレビのアプリケーションの実現に必要な双方向機能の開発のためには、光ケーブルテレビ技術、デジタル伝送技術、画像圧縮技術、ケーブルテレビ網電話、双方向ケーブルテレビ技術等の研究開発が必要である。
 そこで郵政省通信総合研究所では、5年度第二次補正予算により1GHz帯の光・同軸ハイブリッド方式の大規模ケーブルテレビ施設を整備し、6年度においては、ケーブルテレビの大規模化、超広帯域化へ必要なガイドライン作りを行うための光・同軸ハイブリッドケーブルテレビモデルシステムの実証実験、ビデオ・オン・デマンド、デジタル電話、ケーブルテレビ網電話、ゲーム伝送等ケーブルテレビ施設の多目的・多機能化の実証実験等を行うこととしている。
 また、ケーブルテレビ網を利用して様々な情報の伝達を行うための技術開発を行ってきた(株)CATV高度利用研究所は、ケーブルテレビ網による双方向デジタル伝送技術の実証的検討に資するため、5年12月から約2年間の計画で、長野県諏訪市にあるケーブルテレビ事業者の伝送路の一部を使用して、デジタル電話等の通信の共同実験を行っている。

第3-3-1図 「超高速通信ネットワーク」の構成図

 

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