平成6年版 通信白書

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第1章 平成5年情報通信の現況

(1) 電気通信サービス

 5年度における国際電気通信サービスの動向としては、国際電話サービスにおいて、多様化・高度化する利用者のニーズにこたえ、選択制電話料金サービスのメニューの充実が図られ、利用者のサービス選択の幅が広がった。また、海事衛星通信サービスにおいて、インマルサットの新たなサービスの導入による船舶設備の小型化・高品質化及び遭難・緊急/安全通信料金の無料化が行われた。
 また、事業者の合理化・効率化等により得られた利益及び円高差益を利用者に還元するため、国際電話サービスの料金値下げが行われたほか、国際テレビジョン伝送サービスにおいても料金値下げが行われた。
 4年度における国際電話サービスの総通信分数(KDD及び新事業者2社の合計)は、対前年度比 8.9%増の21億 7,500万分であり、伸び率は鈍化したものの引き続き増加傾向にある(2年度の伸び率は24.3%、3年度の伸び率は18.6%)。
 国際専用回線サービスの4年度末の総提供回線数(KDD及び新事業者2社の合計)は、対前年度比 0.7%減の 1,646回線であり、僅かながらも初めて減少している。
 ア 国際電話サービス
 我が国における国際電話サービスの取扱地域の数は、5年度末現在で 231地域となっている。このうち、国際ダイヤル通話の取扱地域数は 218地域で、全取扱地域の約94%に達している(第1-1-31表参照)。
 また、企業向け国際電話サービスとして3年度から開始されている国際内線電話サービスの取扱地域数は、5年度末現在で22地域に拡大している。
 我が国から海外への旅行者・出張者等に向けたサービスとして、国際電話が利用できるクレジットカードによって、海外から国内宛の国際ダイヤル通話が利用できる国際電話サービスの取扱地域数は、5年度末現在で27地域に拡大した。また、海外から我が国のオペレータを直接呼び出し、日本語による対応で国内宛の通話を取り扱う国際電話サービスの取扱地域数は、5年度末現在で61地域に拡大した。このように、我が国から海外に出掛ける人々に向けた、国際電話の利用機会の促進や利便性の向上も図られている。
 4年度の国際電話サービスの総通信分数を発着別にみると、我が国からの発信分数は対前年度比10.6%増の12億 8,350万分、また、着信分数は同 6.5%増の8億 9,150万分と、発着ともに伸び率は鈍化したものの、引き続き増加傾向にある(3年度の対2年度伸び率は発信分数23.8%、着信分数12.1%)。
 また、総通信分数に占める発信分数の比率は59.0%(2年度は55.7%、3年度は58.1%) と、元年度以降、発信超過傾向が続いている。
 取扱地域別にみると、前年度に引き続き米国との通話が全体の約28.5%と最も多い(第1-1-32図参照)。また、上位10地域のうち7地域がアジア諸国であり、全体の38%強を占めているなど、我が国とアジア諸国との社会的・経済的関係が強いことがうかがえる。
 イ 国際専用回線サービス
 国際専用回線サービスの取扱地域の数は、5年度末現在で 103地域となっている。このほか、既に取扱いを行っている地域との間で、中・高速符号品目(通信速度1,200b/s〜6Mb/s:ファクシミリ、データ通信、高速ファイル転送、テレビ会議等に利用)の取扱いが拡張している。
 4年度末現在の国際専用回線サービスの提供回線数を品目別にみると、音声級回線(帯域品目:電話等に利用)は対前年度比19%の減少、電信級回線(通信速度 200b/s 以下の低速符号品目:テレタイプ通信等に利用)も同10%の減少であり、音声級回線は昭和62年度をピークに、また、電信級回線は昭和56年度をピークに減少傾向が続いている。
 これに対し、中・高速符号品目については、対前年度比15%増と順調な伸びを示しており、国際専用回線全体に占める割合も、対前年度比 7.9ポイント増の57.3%へ増加している。このように国際専用回線サービスにおいては、音声級回線及び電信級回線から、利用者の高速化及び大容量化への期待にこたえる中・高速符号品目への移行が顕著な状況にある(第1-1-33図参照)。
 取扱地域別にみると、3年度に引き続き音声級回線及び中・高速符号品目ともに米国との回線数が最も多いが、その品目別内訳では、音声級回線は対前年度比24%減となっている反面、中・高速符号品目は同 3.6%増となっている。また、2番目に多い香港との回線数においても、音声級回線は対前年度比22%減となっている反面、中・高速符号品目は同 7.9%増と伸びを示している。
 中・高速符号品目の上位5地域(米国、香港、英国、シンガポール及びオーストラリア)の回線数については、3年度は総数の約85%を占めていたが、4年度は約80%と上位5地域以外の回線数、特に、タイ、韓国、インドネシア等アジア諸国との回線数の伸びが顕著である(第1-1-34図参照)。
 ウ 国際VANサービス
 国際VANサービスは、国際特別第二種電気通信事業者が国際第一種電気通信事業者から電気通信回線を借りて、蓄積パケット交換サービス、電子メール、蓄積交換ファクシミリサービス等の付加価値電気通信サービスを提供するものである。取扱地域数は5年度にデンマーク及びアイルランドが追加され、23地域となっており、サービスの充実や取扱地域の拡張等が進展している。
 エ 国際ISDNサービス
 国際ISDNサービスは、電話やデータをはじめとする多種多様な通信サービスを一つのデジタル回線網で総合的に提供するもので、元年6月にKDDが米国及び英国との間で世界に先駆けて、また、4年12月にITJ、5年7月にIDCが提供を開始した。G4ファクシミリやテレビ会議等の利用に加え、近年では高精細な静止画伝送やコンピュータ間の高速データ伝送、国際間における音楽の生放送を可能とする高品質な音声伝送等、新しいアプリケーションの利用も増加している。取扱地域は、5年度に新たに3地域(ノールウェー、カナダ及び台湾)が加わり、5年度末現在で22地域に拡張している。
 オ 国際テレビジョン伝送サービス
 KDDにより提供されている国際テレビジョン伝送サービスは、放送事業者の「衛星中継」等によって親しまれているもので、世界的なイベントが開催されるときなどにおける需要が高い。
 固定設備からの伝送のほか、移動式の車載型地球局を利用した伝送も提供されており、全国各地からのニュース等の海外向け伝送などに利用できるようになっている。
 これまで放送事業者のみが利用する「放送用」と、それ以外の「一般用」とに分かれていた料金区分が再編され、5年5月から中継伝送路の種別による料金区分と運用の態様による料金区分が新たに設けられ、利用者が用途に応じ選択できるようになった。また、同時に、特定衛星利用による随時/定時伝送サービスの提供等も開始され、需要の多い時期でも確実に衛星のトランスポンダ(中継器)が確保されるなど、利用者の選択の機会の拡充及びサービス提供の安定性が促進された。
 取扱地域数は、5年度にブルキナ・ファソ及びモザンビークが追加され、5年度末現在で 134地域となっている。
 カ 海事衛星通信サービス
 海事衛星通信サービスとは、船舶に船舶地球局設備を搭載し、赤道上に打ち上げられたインマルサット衛星と海岸地球局を通じて、船舶と陸地間又は船舶相互間の通信を行うサービスである。
 本サービスでは、アナログ方式のインマルサットA型無線設備を用いた国際電話、テレックス、ファクシミリ及びデータ通信の提供や、小型・軽量かつデジタル方式のインマルサットC型無線設備を用いた蓄積交換型データ通信等の提供に加えて、5年9月からデジタル方式のインマルサットB型及びインマルサットM型無線設備による国際電話及びファクシミリ等の取扱いが、KDDにより開始されている。これにより、船舶との間の通信が充実し、船舶の航行安全、運航管理等に一層の効率化が図られている。
 また、海上における人命及び船舶の安全に寄与することを目的に、5年8月からインマルサットA型、B型及びM型無線設備による海事衛星通信サービスにおける遭難・緊急/安全通信料金の無料化が図られ、医療活動が困難な海上における人命救助や医療援助に一層の貢献を果たしている。
 キ 航空衛星通信サービス
 航空衛星通信サービスは、航空機に搭載した航空機地球局設備によりインマルサット衛星と航空地球局を通じて地上と通信を行うもので、航空衛星電話サービスと航空衛星データ通信サービスがKDDにより提供されている。
 航空衛星電話サービスは、機内の操縦室と地上の航空会社との間の通話や、機内客室の電話機から地上への公衆通話を利用できるものであり、太平洋空域及びインド洋空域の航空機から、国際ダイヤル通話の取扱いが可能になっている。
 航空衛星データ通信サービスは、航空機が運航情報や気象情報等のデータ伝送を地上の航空会社等と行うもので、太平洋空域及びインド洋空域において取り扱われており、航空機の運航の安全と効率化に寄与している。
 ク 国際テレックスサービス及び国際電報サービス
 4年度における国際テレックスサービスの取扱数は 1,113万回(対前年度比23.2%減)と、依然として減少傾向にある。また、国際電報サービスの取扱数も年々減少しており、4年度は対前年度比25%減の40万通となっている。
 ケ 国際通信回線設備
 5年9月、我が国と台湾、香港、マレイシア及びシンガポールを結ぶアジア・太平洋ケーブル(APC)の運用が開始された。これにより、増大するアジア地域の通信需要に対処するとともに、同地域の光海底ケーブルの2ルート化によって、一層安定した電気通信サービスの提供が可能となった。また、同年12月には、我が国と中国とを結ぶ日中光海底ケーブルの運用が開始され、日中間の国際通信需要の急増に対応できるようになるとともに、我が国を中継した中国と世界各国との間のネットワーク化が促進された(第1-1-35図参照)。
 このほか5年度においては、第1-1-36表にあるとおり、光海底ケーブルの建設保守協定が締結されている。
 また、5年6月に、APC、日中光海底ケーブル及び第5太平洋横断ケーブル(TPC-5:建設中)を陸揚げする、KDD宮崎海底線中継所と同社千倉海底線中継所(千葉県)との間が光海底ケーブルで結ばれるとともに、宮崎〜山口間に独自のデジタルマイクロ波伝送路が開通したことによって、東京〜宮崎間における国際電気通信事業者直営の伝送路のループ化が図られた。このように、安全性・信頼性の向上を目指した国際通信回線設備の増強が、国際電気通信事業者によって積極的に推し進められている。
 コ 国際電気通信料金
 国際電気通信料金は、KDDが昭和54年に国際専用回線サービスの値下げを実施して以来、通信量の増大や技術革新によるコストダウン等により、低廉化が進展している。5年度においては、国際電話サービス及び国際ISDNサービスによる国際通話の料金の値下げが10月にKDDにより(平均 2.4%)、11月にITJ及びIDCにより(平均 0.9〜 1.0 %)行われたほか、5月にKDDの国際テレビジョン伝送サービスにおいて料金区分の再編に伴う値下げが行われた。また、6年4月にはKDDは国際総合ディジタル通信サービス(ISDN)の64kb/sディジタル回線交換について、サービス開始以来初めて、平均 0.8%(3分間の通信の場合)の値下げを行った。
 この状況は、日本銀行による「企業向けサービス価格指数」においても顕著に現れており、昭和60年を 100とした5年10月〜12月平均の国際電気通信全体の料金指数は51.8となっている。サービス業全体の平均値(116.8) が上昇している中で、国際電気通信の価格水準は着実に下降しており、さらには、国内電気通信全体の平均値(84.4)をも大きく下回っている。国際電気通信サービスは、国内電気通信サービスと比較しても低廉化が顕著に進展していることがうかがえる(第1-1-37図参照)。
 また、国際通信料金の支払い方法については、従来からの金融機関や郵便局等に加え、ライフスタイルの多様化や生活時間の深夜化に対応して、全国の主なコンビニエンスストア等への支払い窓口の拡大が図られるとともに、主な商用クレジットカードによる料金決済が可能になるなど、利用者に対する利便性の向上が図られている。

第1-1-31表 主な国際電話サービスの取扱地域拡張状況(5年度)

第1-1-32図 取扱地域別国際電話取扱数比(発着信合計分数)

第1-1-33図 国際専用回線サービスの推移

第1-1-34図 取扱地域別国際専用回線数

インマルサットM可搬型地球局設備

第1-1-35図 世界の国際電気通信網

第1-1-36表 5年度における光海底ケーブルの建設保守協定の締結状況

海底ケーブルの敷設

第1-1-37図 企業向けサービス価格指数の推移

 

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